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症例48:バックボード固定が不可能だった2症例

松本直樹

留萌(るもい)消防組合消防署

救急救命士

協力:網谷早翔(留萌消防)


 救急現場において高所からの落下、交通事故等の高エネルギー事故に対しては、バックボードによる全身固定が有効とされている。今回は傷病者の状況により全身固定が困難であった2症例を紹介する。


図1 梯子転落・現着時の様子


図2 このあたりに手をかざすだけでかなり痛がる


図3 インフォームドコンセント後固定にとりかかるも・・・・


図4 痛さのため暴れ出す


図5 結局現着時の体勢のまま搬送することに


図6 上記反対写真

1.高所からの転落(墜落)

 20代後半の男性が、梯子を使用し2階建ての屋根で作業をするために登はん中、突然、梯子が傾き約8メートルの高さから梯子と共に地面へ落下(地面は土)し、関係者から救急要請を受ける。

 現場到着時、傷病者は左側臥位で落下した地点付近にいた。

 意識清明、外傷なし、主訴は後頭部付近の激痛であった。特に、傷病者の頭髪に触れるか触れないかの位置に手を持っていくことだけで、痛さに対し過剰に反応する姿は尋常ではない。119番通報の受信時において、高所からの落下を確認していたため、隊員に対し全身固定の準備を指示、また、傷病者に対しても全身固定の必要性を説明と同意を得た後に固定を開始した。

 まず、頸部固定を行いバックボードに仰臥位で固定した。しかし、痛さのために傷病者が暴れだしたため固定ベルトをゆるめ全身固定を断念した(図1ー6)。

 安静とバイタル観察に留意し病院搬送した。

 診断名:外傷性くも膜下出血


図7 交通事故・現着時の体勢


図8 インフォームドコンセント後固定するも暴れ出す1


図9 暴れる2


図10 暴れる3


図11 頸部固定も取り外そうと・・・・


図12 取り外す

2.交通外傷

 20代前半の男性が、車輌運転中に無理な追い越しが原因で正面衝突事故が発生し、事故関係者から救急要請を受ける。

 傷病者の詳細は不明であるが車外に出ていることを確認し出動する。

 現場到着時、傷病者は道路中央の事故車両付近に座っていた。

 観察するも、顔面より大量の出血あり、また、極度の興奮状態であり、隊員の問い掛けに対しても返答がなく、状況聴取が難しい状態であった。

 まず固定の必要性を説明しながら頸部固定を施した後、全身固定を始めると急に暴れ出し、興奮状態も治まらず、結局、頸部固定も自力で外したため、全身固定を断念した(図7ー13)。

 安静とバイタル観察に留意し病院搬送した。

 診断名:頸部捻挫、顔面裂創

まとめ

 上記2症例とも全身固定が必要と判断したが、傷病者の精神状態によっては、特に難しいことを感じた。

 傷病者に対しては、固定の必要性を説明し同意を得るが、実際に全身固定を施されると苦痛と感じるため、固定を外すために暴れたり、パニックに陥る場合もある。傷病者に対し無理に固定を施す上で2次災害の危険性が懸念されるよりも、現場の状況や搬送時関等を十分把握し、安静とバイタル観察に留意して医療機関へ搬送することも必要と感じた。

 本症例では、固定の必要性を説明後に傷病者の気持ちを和らげるため、常に会話をしながら実施したが全く効果もなく聞き入れてもらえなかった。

 また、この2名の傷病者は医療機関へ搬入後の各処置においても、時折、暴れており医療従事者もかなり苦労していた。


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07.1.8/10:17 PM