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130408冬の事故(雪道による交通事故)


講師

名前:高濱 翔太
 所属:留萌消防組合消防署小平支署
 出身地:留萌市
 消防士拝命:平成17年4月1日
 趣味:サーフィン、焼き肉


1 はじめに
 

冬の季節になりますと、北海道では雪に関連した事故が発生します。

北海道は全域が豪雪地帯であり、当消防本部の管轄区域である小平町は特別豪雪地帯の指定を受けております。降雪による交通事故をはじめ、落雪事故、屋根の雪下ろし中の転落事故、除雪車(機)による巻き込み事故など、その内容は様々です。その中でも今回は、雪道による交通事故の事例を紹介いたします。


2 雪道とは

 一言で「雪道」と言ってもいろいろな路面状況があります。(表1)

冬になるといろいろな種類の路面がめまぐるしく登場し、運転手は1日の間に何種類もの路面とお付き合いしなければならない場合があります。

また、意外に見落としがちなのが、冬の冷たい風が吹きつける橋やトンネルの出入口付近です。橋は地熱がなく、水蒸気が付着しやすいため一般道路が凍結していない時でも、凍る場合があります。「今日は路面が出ていて走行しやすい」と油断してある程度スピードを出している時に、このような橋にでくわした場合はとても危険です。

以上のような事を踏まえ、私も消防車両、救急自動車の機関員を担当する場合は夏場以上に神経を使いながらの走行になります。 
3 事例1

11月中旬、覚知20時55分。

要請内容は「大型トレーラー車が横転し、男性1名が下敷きの模様です。他の詳細は不明です。」とのことでした。

救急車の出動とともに救助工作車も出動しました。

現場到着時の状況は、大型トレーラー車がジャックナイフ現象状態 ※1で道路を塞ぎ停車しており(写真1)、

傷病者は、車両の前輪付近に仰臥位の状態でした。(写真2)

事故概要は関係者の話と現場の状況から、大型トレーラー車がやや下り坂のアイスバーン状態の路面でスリップし、ジャックナイフ現象状態で道路を塞ぎ停車した。そのためトレーラー車の運転手は車両から降りて、タイヤに滑り止めのチェーンを巻きつける付ける作業を行っていた。その作業中に後方から走行してきた別の大型タンクローリー車が衝突、反動でトレーラーの車体が動き、タイヤ若しくは車体の一部が作業中の運転手を打ち当てたのではないかとのものでした。

また、この地域は携帯電話が圏外のため、通報者は電波がある地点まで徒歩で移動してからの通報となったため、事故発生から通報までかなりの時間を要したのことでした。

観察すると、意識レベルJCS300、心肺停止状態、瞳孔散大、対光反射なし。

外傷は右目まぶたの腫脹を確認するも、ほかに目立った外傷は無し。又車両(タイヤ)の下敷きにはなっておらず、ネックカラー及びバックボード固定を実施し車内収容する。

車内収容後、鼓膜体温18℃低体温状態、毛布にて保温、CPR継続、特定行為を実施し病院へ収容しました。

車内の観察では両側まぶたの腫脹(ブラックアイ)※2(写真3)、左下腿部打僕が認められた。

傷病名は交通外傷による脳挫傷。


事例1解説
※1 ジャックナイフ現象
   トラクタとトレーラーが、連結部のところで折れ曲がり「くの字」になる現象を「ジャックナイフ現象」といいます。
   名前の由来はその時のトレーラーの状態がジャックナイフ(折りたたみナイフ)のような見た目になることからそのように呼ばれています。
   降雪時や降雨時などで急ブレーキや急ハンドルなどの運転操作をしてしまうことで車輪がロックし、タイヤが滑ることでこの現象が起きます。
   ドライバーは車両をコントロールすることができなくなるので、大きな事故につながるケースが多いです。



※2 ブラックアイ
ブラックアイ(パンダ目)や鼻孔からの髄液漏は前頭蓋底骨折、バトル徴候や耳からの髄液漏は中頭蓋底骨折で認められることが多いです。ブラックアイは両眼にみられるもので、片眼の場合は眼周囲の骨折や打撲などを疑います。
通常、受傷直後には観察されないのですが、今回の事例では時間が経っていたためかブラックアイと思われる症状が観察されました。



4 事例2

2月中旬、覚知14時07分。

要請内容は「トンネル内でトラックと小型4輪車の接触がありました。けが人は1名だけわかっている状況で会話はできます。他の詳細は不明です。」とのことでした。

救急車の出動とともに救助工作車も出動しました。

現場到着時の状況は、トンネル内にてセンターライン上に停車する事故車両を確認する。(写真4)
(写真5)

路面はブラックアイスバーン状態で、活動する隊員も注意して歩かなければ滑って転倒してしまうほどでした ※1。

傷病者については軽自動車の運転手1名のみで、ほかの傷病者はおらず、事故車両より脱出済みであり独歩可能な状態であった ※2。(写真6)

ドクターヘリ及び後続隊応援出動必要ない旨を連絡する。

そのまま車内へ収容し観察を行う。右手の裂創、左手拇指切創、右下顎骨打撲腫脹あり、右大腿部の痛みを訴えていた。他の損傷はなく特になく既往歴もないとの事であった。バイタル測定の結果、脈拍93回、血圧168/92mmHg、SpO297%。四肢の運動知覚は良好、創傷部からの出血はすでに止まっている状態、継続観察に努め病院へ収容しました。

傷病者は凍結する路面により滑り、反対車線へ進入し対向する大型貨物トラックと衝突(両車両共に運転席側のドア部分)したもので、衝突時の速度は60km/h前後でしたとのことでした。

傷病名は右手部裂創、左拇指裂創、右大腿部打撲、右耳下切傷。



事例2解説
※1 現場到着前に、路面状況に応じ車内で隊員同士注意を促しておきましょう。私も「今日は滑るから気を付けよう」と思っていたのにもかかわらず、下車と同時に転倒した経験があります。このように、時には自分の予想以上にツルツルな路面もありますので注意してください。


※2 歩行できるからといって油断してはいけません。中心性脊髄損傷の可能性があります。
脊髄の外側の「白質」ではなく、中心部の「灰白質」が損傷されることで、脊髄症状が発生する場合のことです。通常の脊髄損傷では、上肢と下肢のしびれの程度を比べると、下肢の方がしびれの程度が大きくなることが多くなりますが、中心性脊髄損傷の場合、上肢の方がしびれの程度が大きくなります。歩行できる例が多いため、見逃さないようにしましょう。



5 おわりに

  今回は雪道による交通事故を紹介しました。
車を運転するすべてのドライバーが事故に遭う可能性があります。この機会に再度雪道の危険性を感じ、路面状況に合わせた走行に心掛けてもらえると幸いです。 

 


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13.4.8/10:11 PM