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熱中症

講師
川人瑛史
かわひとえいじ
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所属:鳴門市消防本部消防署
出身:ゲラで書きます
消防士拝命:平成17年
救命士合格年:平成24年
趣味:水泳



1.はじめに

写真1
鳴門の渦。鳴門市から転載許可済(以下全て許可済)

渦潮(写真1)で有名な鳴門市は、徳島県の東北端に位置し、

写真2
吉野川

南は吉野川(写真2)、北は阿讃山脈、東は紀伊水道に面し、

図1
鳴門市の位置(鳴門市)

東西約19.25H、南北13.52H、面積135.46kF、人口約62,000の市です(図1)。

全面積の約60%が山地、約40%が平地です。市域の北部は、阿讃山脈の東端にあたり山地が多く、南部は吉野川の北岸下流域に位置しており、吉野川流域に開けた沖積平野となっています。

図2
徳島県の気温分布(鳴門市)

鳴門市を含む県北部は瀬戸内気候に属し、温暖で年間雨量約1300mmと少雨地域にあたります。鳴門市における年平均気温は、図2(に示すように、市東部の沿岸地方では約16℃で、市西部では約14℃と温暖な気候となっています。







2.管轄内における熱中症の発生数

鳴門市消防署管内において熱中症(疑い含む)で医療機関へ救急搬送された件数は、6月28日の年初発から9月5日の最終発生までの約2ヶ月間に32件(32名)でした(図3,図4、表1)。なお、鳴門管内の平成24年の救急出場件数は2,360件です。

図3
時間別重症度

図4
年齢別重症度

表1
H24年の熱中症搬送

3.熱中症について

『熱中症』は夏になるとメディアでよく取り上げられるようになりました。熱中症の予防方法、熱中症になった時の対応などは、広く社会で知られるようになったのではないでしょうか。しかしながら、熱中症で救急搬送される傷病者は毎年増加傾向にあります。

図2にも示したとおり、徳島県は比較的温暖な気候で、その中でも当消防本部が管轄する鳴門市は県内では最も雨量が少ない地域です。熱中症について、近年鳴門市では特殊な事例は発生していませんが、これから気候や環境の変化により、増加していくであろう『熱中症』について色々な視点から考えてみましたので紹介したいと思います。

(1)現場での初期対応

表2
熱中症の重症度分類と症状・治療

暑熱環境下で発生した体調不良はまず「熱中症」を疑う、というのは救急隊にとって基本的なことだと思います(表2)。しかし、最初から熱中症に的を絞ってしまうと、他の疾患を見落としてしまう可能性があるため、救急隊員には高い知識、傷病者や現場の環境等の観察能力が求められます。たとえ軽症を疑っても、医師に引き継ぐまで継続観察を怠らずに搬送することが重症化を防ぐキーポイントになります。これは熱中症だけではなく、全ての搬送において言え、私たちが常に持っていなければならないことだと思います。


(2)自分の熱中症体験

私の熱中症体験を紹介したいと思います。

私が消防士を拝命し、消防学校に約6か月間の初任科教育課程で入校していた時の事です。その日は6月の末で、気温が30℃を超えていました。また梅雨により湿度もかなり高かったことを覚えています。

写真3
両前腕の筋肉の硬直が起きると同時に激しいめまいに襲われました

防火衣完全着装しての火災想定訓練も終盤に差し掛かった頃、まず口唇及び手指のしびれが出現しました。周囲に迷惑は掛けられず、訓練をそのまま続行していたら、両前腕の筋肉の硬直が起きると同時に激しいめまいに襲われ、その場に座り込みました(写真3)。私は教官と仲間に体を支えてもらいながら風通しのよい日陰に移動し、防火衣を脱ぎ水分補給をしました。すると約30分後には体調も回復し訓練に戻ることができました。

振り返ってみると、症状からして沒xの熱中症だったと思います。しかし、私自身熱中症になったのは初めてだったため、かなり焦り、入院まで想像しました。

図5
私が「熱中症」になった原因

私が「熱中症」になった原因を考えると、(a)気候(高温・多湿)、(b)服装(熱を遮断する素材のため放熱できない)、(c)高度な発汗(Naの喪失)などの条件が重なり合っていました(図5)。この苦く貴重な体験と、勉強して身に付けた知識を、現在の救急現場で活かし、傷病者にとって少しでも良い活動と搬送を行うことが大切であると考えます。


4.鳴門消防での熱中症に対する取り組み

写真4
スポーツ飲料を携行

職員の熱中症予防対策として、
・訓練時には時間を決め水分補給(スポーツ飲料)を行う。
・訓練時以外の準備・撤収作業時には上着を脱ぎ、無駄な体温上昇や発汗を防ぐ。
・現場出場時には各個人でスポーツ飲料を携行する(写真4)。
などがあります。

一般市民に対しての取り組みとして、市内のイベントで熱中症予防に関するパンフレットの配布(図6)、ポスターの貼りだしなど、直接市民の方々に接して、熱中症に対する興味と注意の意識をもってもらいます。日中の地水利点検などの時には、車両から熱中症予防の広報をしています。また、夏季が近づくと、普通救命講習などでも、熱中症の予防や傷病者への対応方法などの指導もカリキュラムに取り入れています。

このような取り組みは、全国的には当たり前のことかもしれませんが、この小さな対策や広報が、熱中症傷病者を1人でも減らすきっかけになると思います。世間の熱中症のほとんどが対策次第で防げるものだと思うので、これからも積極的に市民の方々に広報活動していくことが大切だと思います。




5.統計からみえる課題と現状

当管内の24年中の熱中症搬送統計(前掲 図3、図4)を見てみると、年齢別では、11?20歳および71?80歳のグラフが、他の年齢層より多いことが分かります。また時間帯別では、午前11時から午後8時くらいまでの搬送が、他の時間と比較すると多くなっています。このことから、年齢と時間帯の間には何か関連性があるようにも思えます。キーポイントは、『日中の活動中(学校・仕事場・屋外)』です。

これからの課題として、今以上に積極的に学校(保育施設から大学まで)などの教育機関に足を運び、教育する側と学ぶ側の人たちに熱中症の知識をしっかり持ってもらう、特に部活動などの体育に携わるすべての人には積極的に学び、理解してもらう必要があると思います。

高齢者の熱中症の傾向として、独居のため近隣とのコミュニケーションが低下していることや、我慢や節約意識によるエアコンなどの不使用が熱中症を引き起こす要因になっているそうです。よって消防という枠を超え、市役所の福祉関係の各課と連携し、様々な場で広報活動していくことが、私たち消防のこれからの課題だと思います。


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13.6.15/1:05 PM