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自動心臓マッサージシステムを使用した症例

講師 今井良恵 (写真@)
所属 千葉県我孫子市消防本部 西消防署
出身 千葉県我孫子市
消防士拝命 平成12年4月
救急救命士拝命 平成20年
趣味 スノーボード 旅行
写真@

はじめに

我孫子市は、千葉県の北西部、茨城県との境に位置します。面積は43.19kF、市域は東西に約14km、南北に約4kmの横に長く、北側に利根川、南側の手賀沼に挟まれています。また、都心からおおむね40kmであり、国道6号と国道356号が分岐する交通の要衝で、JR常磐線及び成田線などを利用することにより都心から35分程と、ベッドタウンとして栄えています。
 写真A
我孫子駅周辺ではマンションの高層化(写真A高層マンション群)が進み人口の密集化がみられますが、
一方では自然景観の保護にも力を入れており、手賀沼(写真B手賀沼)は関東でも有数の野鳥の飛来地であり、鳥類研究所や博物館が所在しています。
また、利根川周辺(写真C利根川周辺)ではバードウォッチング、キャンプ場を備えた公園や運動場などのレクリエーション活動の場が整備されています。
写真B 写真C

今回紹介する事例は、自動心臓マッサージ器を使用した事例です。現在、心肺蘇生法の中で胸骨圧迫の迅速な開始と、中断の最少化が重要視されるようになりました。そのため、我孫子市消防本部では高規格救急車の更新に伴い、自動心臓マッサージシステムを1器初めて導入し、私が勤務する西消防署に配備されました。(写真D)

写真D
 

事例 


「80歳男性、自宅寝室で腹痛を訴えた後に意識が無くなった」との救急要請。要請内容から、出動車両は救急隊1隊とポンプ車隊1隊で出動しました。救急隊到着時、傷病者は寝室の布団上に仰臥位で倒れており、家族により胸骨圧迫実施中でした。家族から胸骨圧迫を引き継ぎ、心電図を確認すると心室細動のため除細動を実施しました。その後搬送準備を行いポンプ車隊と協力して車内収容し、車内にて自動心臓マッサージシステムを装着しました。特定行為の指示要請及び搬送先病院が決定し現場出発。搬送中に静脈路確保及び薬剤投与を実施、搬送先病院に到着し医師に引き継いだものです。

この事例は発生現場が一般住宅の1階ということと、ポンプ車隊との連携によりマンパワーが充実していたため、早期車内収容を優先し自動心臓マッサージシステムを車内収容後装着しました。当市の救急隊は常時3名乗車のため、搬送中は機関員を除くと処置を行うのは2名のみとなります。そのため、自動心臓マッサージシステムを使用する事によりマンパワー不足を補い、搬送中に良質な胸骨圧迫を継続しながら1名が気道管理、もう1名が静脈路確保及び薬剤投与を実施する事ができました。
 今回の事例は車内収容後に自動心臓マッサージシステムを装着した事例でしたが、当市の地域性をふまえ様々な状況を想定した活用方法をいくつか検証しました。

検証

1 救急車が進入できず現場まで距離がある場合。 

河川敷など車両が進入できず足場が不安定でストレッチャーの進入が困難な場所が考えられます。自動心臓マッサージシステムを使用する事で、バックボード上での良質な胸骨圧迫を搬送中も中断することなく行うことが出来ます。
バックボードで傷病者を搬送する際は、ボードと自動心臓マッサージシステムのバックプレートの間に滑り止めシート(写真E滑り止めシート)を挿入し、ずれ防止を行います。
ベルトを4本使用して傷病者をボードに固定(写真Fベルトを4本使用して傷病者をボードに固定)し、
両サイドに人が付きしっかりと保持しないと安定性にかけるため、PA連携等でポンプ車隊の協力が必要不可欠となります。(写真G搬送にはポンプ車隊の協力が必要不可欠です)

写真E 写真F

写真G
当隊はこれを機にバックボードのベルトを4本積載するようになりました。(写真H現在はバックボードのベルトを4本積載しています)

写真H

2 階段での搬送
 駅や団地での搬送は階段を使用する場合が多く、良質な胸骨圧迫が困難になり、中断時間も長くなる可能性があります。
 検証すると、斜度が急な階段でありボードをかなり立たせないと曲がれないような時には、自動心臓マッサージシステムの圧迫位置のずれや落下の危険もあり傷病者への固定が不安定で安全に使用することができませんでした(写真I階段では使用に不安があります)。圧迫位置がずれてしまうと骨折や内臓を損傷する恐れや、傷病者の血液循環が減少する可能性がでてきてしまうためです。


 写真I
傷病者を移動中、自動心臓マッサージシステムを安全に作動できる条件として以下のふたつがあります。
・自動心臓マッサージシステムと傷病者が搬送用器具上で安全に固定されている。
・傷病者の胸部で自動心臓マッサージシステムが正しい位置と角度に維持されている。

 階段での使用の際も上記の条件が保てるような場合は使用する事も有効ではないかと思います。下になっている足側を高くし頭部側を低くすることで水平を保ち有効な胸骨圧迫が実施できます(写真J下になっている足側を高くし頭部側を低くすると不安は解消します)。ただしこの場合もポンプ車隊の協力が必要不可欠です。
写真J

3 狭隘な通路での搬送
高層マンション等で心肺停止傷病者を搬送する場合、発生場所からエレベーターを使用し搬送する際、通路が狭隘であり良質な胸骨圧迫を継続する事が困難な場合があります。このような際自動心臓マッサージシステムを使用する事で中断することなく胸骨圧迫を行う事が可能となります。(写真K狭隘な通路では協力な武器となります)
      
写真K


装着について

装着方法については、比較的軽量(7.8L)で簡単に装着することが可能なため、時間をかけずに行うことができます。胸骨圧迫を一時中断し、傷病者の背部に黄色のバックプレートを滑り込ませ(写真L黄色のバックプレートを滑り込ませます)、
上から圧迫する上部ユニットをはめ込む(写真M上部ユニットをはめ込みます)だけのため数秒間での装着が可能です。
狭い車内でも簡単に使用する事ができます。
 写真L
写真M

また、心肺停止時には携行資器材が多くなりますが、自動心臓マッサージシステムを背負うことで(写真N背負って持っていきます)他の資器材と同時に携行する事も可能です。
写真N

おわりに

今回実施した訓練の際どのような方法でも自動心臓マッサージシステムと傷病者がしっかりと固定されていれば、質の高い胸骨圧迫を継続する事が可能でした。
導入して間もなく検証できる症例も数少ないですが、今後も、より迅速な救急活動を行なえるよう他の隊とも事例検討会や連携訓練等を実施し、救急隊としてのスキルアップに努めていきたいと思います。


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14.7.26/9:29 AM