症例10

提示:佐藤和幸

紋別地区消防組合消防署雄武支署


概要


48歳男性。主訴は胸腹部痛・呼吸困難・意識障害。乗用車運転中ガードロープに衝突し。ハンドルに胸腹部をぶつけた。シートベルトは着装していなかった。

15時13分覚知。事故内容と傷病者数は確認できないまま出場。12分後現場到着。

乗用車は前部及び運転席側ドアが大破、傷病者はバイスタンダーにより車外に出されており路側帯に仰臥位でいた。外傷は前頭部及び右手背部に出血のみ。JCS 100, 血圧収縮期121mmHg, SpO2 80%。搬送途中胸部痛と腹部痛を訴えた。

13分後病院到着。

病院到着90分後、搬送途中に死亡。


Q1:考えられる病態は
Q2:処置は
Q3:死因は


A1:考えられる病態は
問題となるのはSpO2が低いことと腹部痛である。
SpO2が低いことは、現場の状況から肺損傷が最も考えやすい。広範囲の肋骨骨折から血気胸を併発したと思われる。腹部痛では内臓破裂を思い浮かべるべき。腹部大血管の損傷では即死するが、肝・脾損傷や腸間破裂では症状は出づらい。

A2:処置は
A1を踏まえて処置を考える。まず全身の観察。問題となる胸部と腹部は丹念にかつ迅速に観察する。これほどの事故なら胸部の変形や皮下気腫は観察されるだろうし、腹部の圧痛や膨満もあるだろう。処置は頸椎保護、酸素投与、胸郭の変形に対してはバストバンドなどによる固定、ショックに対してはショック体位、CPAになればCPRである。患者は酸素投与によってSpO2 90%となった。

A3:死因は
事故発生から2時間後の死亡である。肝破裂が死因と考えられる。緊張性気胸を含む肺損傷では2時間も持たないだろう。


解説


本症例では右頸部から腹部にわたる皮下気腫が見られ、右胸壁の動揺も観察された。胸部レントゲン写真では7本の肋骨骨折、frail chestが認められた。胸腔ドレーン挿入により700mLの出血を認めた。
腹部は膨満しており、腹部エコーにより腹腔内出血を認めた。この間に血圧は来院時96/40mmHgであったものが60mmHgへと低下、開腹手術のできる病院へ搬送途中にCPAとなったものである。


胸部レントゲン写真では7本の複数箇所にわたる肋骨骨折と皮下気腫を認める。


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