心拍再開後除脳硬直を認めた事例について』

三上勝弘

留萌消防本部:救急救命士


はじめに


除脳硬直は、脳疾患患者に見られる所見であり予後不良といわれている。今回、救急隊の目の前で心肺停止になった患者に、早期除細動を行ったところ、心拍再開直後除脳硬直を観察したが社会復帰した事例を経験した
ので報告する。

事例

18時52分
○○クリニック院長
○○クリニックですが、○○さん(63歳女性)血圧が下がり、眩暈もあり動けないので救急車お願いします。

自家用車で自力歩行にて来院(時間不明)
覚  知 18:52 院長自ら119通報(落ち着いていた)
出  動 18:53 隊員3名にて高規格車で出動する。
現  着 18:56

携帯酸素携行処置室に至る。(医師・夫2人)

患者は、呼びかけに開眼・発語あり(頭が痛い)

血圧:90/40聴取(診断名不明)顔面蒼白、四肢の運動障害なし、酸素3L切り替え投与、医師の指示(転院依頼書を渡される)

院内搬送中、いびぎ様呼吸(2回)呼吸・脈拍感 ぜず。院内狭隘のため車内収容を優先と医師同乗 を依頼する。

車内収容 19:05

呼吸管理、心マ、モニター(除細動器)

容体変化ありを無線にて連絡。

19:10:30

vf確認 医師の指示で1回目の除細動実施

vf継続

19:10:50

2回目の除細動実施

心静止→心マ実施

19:13:04 vf確認3回目の除細動実施。
病院収容 19:14

留萌市立病院に到着する。

処置室搬入時、脈拍確認のメッセージあり

19:16

心拍再開 20回 自発呼吸戻らず

(除脳硬直を観察する)

その後のバイタル BP 140/86

BT 34.9℃

帰  署 19:53 診断名:心筋梗塞による蘇生後脳症

転帰

ICU入室後も数回、除脳硬直を確認する。(以上カルテから)意識回復経過については、未調査

発症日から56病日後、後遺症なく社会復帰する。

考察

今回の事例は、早期除細動による社会復帰を果たした例である。

早期除細動を可能にした要因として、転移搬送依頼医師から早期除細動の指示が得られたことがあげられる。

市内の転移搬送であるため搬送時間が掛からないなどの理由から、医師が同乗しないことがある。転移搬送業務は、依頼先で処置困難のため搬送必要があるから、搬送途上容体悪化が十分考えられる。このため市内の場合であっても医師の同乗は不可欠である。

結語

心停止の虚血状態から、心拍再開で早期脳幹反射出現の場合は社会復帰の可能性が極めて高い。

文献

プレホスピタル・ケア2002年8月1日発行第15巻第4号(通巻50号)

金沢市消防本部広坂消防署小孫氏らの事例報告に早期除細動により心拍再開後除脳硬直が出現し意識レベルに変動がみられた報告がある。

注意事項

・二次医療から三次医療への転移搬送業務は、処置済みで重症性はあっても数分後に心肺停止になる場合は希であるし、前もって医師から指示があるので準備が出来るが、一次医療では処置は十分とは言えず、まして夜間では人手不足のため未処置の可能性であることを念頭にいれ活動する。

・転移搬送や往診先など、医師立会の場合わずかな情報の引継しかなく、救急隊としては現場でバイタル観察を実施したいが、なかなかその場では出来ない状況である。(酸素・心電図などの必要性の指示を仰ぎ、車内収容後バイタル観察するのが現状)

・今回の業務では、救急隊として胸痛の訴えもなく会話可能であったため,安心感が先行してしまった。

※過去にも、担架搬送中に突然心肺停止に陥った患者に遭遇し社会復帰に成功しているが、急性心筋梗塞での心肺停止は秒単位で起こることを再度実感した症例であった。

除脳硬直について

(脳疾患に)中脳ないし橋をしきゅうたい四丘体の上丘と下丘の間で離断すると、一定筋群の緊張が異常に高まる状態をいう。上肢の伸展、内転、内旋、下肢の伸展、足底部の屈曲。この症状は、脳出血・脳底動脈の血栓症・脳腫瘍などで起こり、予後不良を意味する。

※四丘体(しきゅうたい)中脳蓋中脳に間脳がある。中脳の内部の四丘体と大脳脚の間を中脳被蓋といって動眼神経核や滑車神経核がある。

質疑

Q1:転院搬送時には必ず医師が同乗するのか

ケースによる。今回は心停止になったため同乗した。

Q2:心停止の予想をして出動したのか

全く予測していなかった。今回の社会復帰の要因は迅速な除細動によるものである。

Q3:除脳硬直とは

実演してみた。


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