case16:老人性肺炎

94歳男性。

主訴:呼吸困難

現病歴:特別養護老人ホーム入所中。1週間前から風邪を引き、医師の指示にて点滴を受けていた。咳はあるが、発熱はなかった。前日の夕方から37℃程度の発熱があり、当日朝から意識が混濁してきたので医師の往診を求めた。医師は病院での入院加療が必要と判断し、救急車の出場を依頼した。

観察結果:意識はJCS100, 顔色不良、口唇と四肢にチアノーゼ。四肢末端に浮腫をわずかに認める。血圧70/50、心拍数90回/分。呼吸は荒く浅い、20回/分。SpO2 90%(O2 3L投与中)。体温37℃。静脈確保され点滴中である。咳とともに黄色端を喀出。呼吸音は荒くぶつぶつと水泡様の音がする。

Q1 病態は
Q2 搬送中注意すべき点は

A1 肺炎。高齢者の肺炎は体温が上がらずぐったりしていることが多い。この症例は94歳であり、平熱は35℃程度だったと想像できる。また末梢の浮腫やレントゲン写真から心不全も合併しており、非常に危険な状態である。

A2 一般的な注意で特に上げるべきものはない。私は目を離した隙に心肺停止になっていたことを経験しているので気をつける。また医師が同乗した際には、医師にどこまで処置をすべきか指示を求めること。年齢から考えて、積極的な蘇生は行わないと考えられる。

解説
超高齢者の肺炎症例である。患者は94歳という高齢のため、家族は積極的な治療を求めていない。万が一の場合にもそのまま看取ってほしいとの希望であった。この患者はたびたび肺炎を起こしては重篤となり、そのつど復活して老人ホームに戻っているという強者で、今回も危篤のムンテラをあざ笑うかのように復活して現在は元気にご飯を食べている。この繰り返す肺炎の原因は誤嚥によるものと考えられているが、年齢から考えて積極的な医療的アプローチは行っていない。
写真1は入院時のものである。肺野、特に左肺野は真っ白で、大葉性肺炎の像である。

写真2は同じ時期のCT像で、葉間に水が溜まり、胸水も貯留している。肺野は汚く、分泌物が多いことを窺わせる。また心臓を見てみると大きくなっており、さらに心嚢内にも水が溜まっていることが分かる。

写真3は加療後2週間目の胸部レントゲン写真である。写真1に比べて肺野の透過性が増し、黒くなってきているのが分かる。


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