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症例30:新生児食道閉鎖症

症例:女児

妊娠6ヶ月から羊水過多を指摘された。胎児の先天奇形が考えられるため妊娠7ヶ月で母体搬送、新生児センターへ入院となった。出生前に羊水過多を指摘されていた。出生直後より泡沫状の唾液の排出があり、また呼吸促迫とチアノーゼが見られたため新生児救急車にてNICUへと搬送になった。妊娠8ヶ月にて高位破水のため帝王切開にて女児娩出。アプガーは1分3点、5分5点。出生直後より泡沫状の唾液の吐出と軽度のチアノーゼ、収縮期心雑音を指摘された。新生児は胃管を挿入されたあとレントゲン写真を撮影され、すぐ胃瘻増設手術が行われた。


Q1:考えられる疾患は
Q2:もしこのような新生児が転院搬送になった場合、救急隊が最も気をつけなければならないことは何か。


A1:食道閉鎖症。心雑音はなんらかの心奇形を示唆する。
A2:保温。


解説

 今回の症例も救急隊とは直接接点のないものである。しかし新生児の救急はどんな疾患であっても共通するとことが多いため取り上げることにした。

 新生児や乳児で救急隊が行えることは保温であり、医療行為が行えない以上それが全てと言ってよい。保育器が用意できない場合には児を毛布にくるむだけではなく、車内を30℃以上に設定して児の体温低下を防ぐ。墜落産などの特殊な状態での分娩はまた別の問題を含む。平成16年の10月号で恩田早苗助産師が「基礎講座」で解説しているので、そちらを参照されたい。

 食道閉鎖症は出産4000例に一例見られる先天奇形である。食道と気管はもともと同じものから発生し、胎生の4週から6週で食道と気管に分化する。この分化異常が食道閉鎖の原因である。また食道閉鎖症児の35%には心奇形がみられるし、さらに脊椎の奇形や直腸などの下部消化管の奇形の合併も知られている。

 治療は外科手術しかない。気管と繋がった食道を介して胃が気管に繋がるタイプの場合、胃液により致死的な肺炎を起こすため、胃瘻増設手術や根治手術を速やかに行う必要がある。

 症例は出生前胎児診断にて食道閉鎖症と診断がついていた。帝王切開で出生した直後に胃管を挿入することによって食道が気管分岐部で途切れていることを確認した。また単純レントゲン写真にて胃液が気管に流入するタイプであることが疑われたためすぐ胃瘻増設手術が行われた(図1)。1週間後に気管食道瘻の切離と上下食道の吻合が行われた(図2)。なお、現在このタイプでは胃瘻を置かず一度に根治術を行う方法が主流となっている。


図1
胃瘻増設手術直後のレントゲン写真。気管挿管チューブに重なって胃管が見える。また右鎖骨下静脈に中心静脈栄養カテーテルが挿入されている。

図2
根治術直後の写真。右開胸で手術を行ったため胸腔ドレーンが見える。他のチューブ類は写真1と同じ。

図3
根治術後1ヶ月の食道バリウム検査。通過障害なく胃までバリウムが届いている。

図4
根治術後1年の食道バリウム写真。


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