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case34:防ぎ得た外傷死

症例

10歳男子。
主訴:左上腕切断
トラクターのローター横で遊んでいるうち、袖がローターに取られ巻き込まれた。左上肢は上腕骨外科頚で切断。
10分後現場到着。男子は母親に抱きかかえられ泣いていた。傷は父親による圧迫止血にて既に止血済み。意識清明。SpO2 98% 


Q1:観察の要点は
Q2:処置は


A:意識、気道、呼吸、循環。
B:止血の確認。止血されていなければ圧迫止血。酸素投与。ネックカラー装着、バックボード固定。


解説

 JPTECでいうところの「機械器具に巻き込まれた」「高エネルギー事故」であり、この子は救急外来で死亡したため「防ぎ得た外傷死」に該当する。

 救急外来に運ばれて来たときには意識もはっきりしていたが、自分の腕がないことと処置への恐怖で泣き叫んでいる状態であった。上腕の保存、手術室への連絡、輸血の発注と慌ただしく職員が動くうちに泣き声が消え、直後に突然心停止となった。慌てて開胸心マッサージを行ったものの再び心臓が動くことはなかった。

 創部を写真1に示す。左上腕骨が露出しているがあふれるような出血はなく、このまま放置していても何ら問題のない創であった。しかし派手なところにどうしても目が行ってしまい、肝腎の意識ABCの観察がおろそかになってしまった。

 心停止時の胸部レントゲン写真を写真2に示す。右は緊張性気胸であり、左は胸腔内出血が疑われる。縦隔が変位するほどの気胸であり、聴診器で簡単に診断が付いたはずである。救急外来搬入直後に聴診さえしていればこの子は今も元気に遊んでいるに違いない。残念な症例であった。

 気胸の原因は、腕がもぎ取られるほどの外力によって肋骨が骨折したためと考えられた。この症例では腕切断が左で緊張性気胸が右であり、左右が異なることも発見の妨げになった。(左右間違っていました。訂正しました05-12-22)

写真1(月刊消防2005年11月号参照/WEBでの供覧は控えさせていただく)
創部の拡大写真。活動性の出血は見られない

写真2
胸部レントゲン写真。右の緊張性気胸。左も肺挫創と胸腔内出血が疑われる。死因は緊張性気胸である。


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