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これで上司も市民も納得! 基礎からの統計教室

第4回
印象操作に負けるな

例題

ワイドショーが大好きな私の妻は、いつもテレビのコメンテーター相手に話をしています。台風が来れば「地球温暖化のせいね」といい、凶悪犯罪が起これば「昔はこんなことなかったのにねえ」と戸締まりをし、芸能人の豪邸が映れば「うちが貧乏なのは格差が広がってためね」とため息をつきます。コメンテーターの話をそのまま受け取っていいものなのでしょうか。

解説

数字は正しい知識の基礎です。コメンテーター相手に話をしているレベルなら印象だけでいいでしょうが、これがちゃんとした会議なら「根拠を上げろ」と叱られます。まずは数字を示すこと、次にその数字を正しく解釈することが必要です。



すぐ忘れる

人は過去のことを忘れます。自分にあまり関係のないことならすぐ忘れてしまいます。去年(2014年)の北海道の夏は暑い日が続いたので「こんなことなかった」と言ったり「温暖化だ」と言う人が多くいました。ですが気象庁からデータを持ってきてグラフにすると、2010年からゆっくり下降していることが分かります(グラフ1)。

つまり、人は、前の年のことですら忘れてしまうのです。2010年は西日本で連日猛暑日記録が更新されたり、京田辺市で39.9℃が記録されたり(計測方法に問題があったため正式なデータではなくなった)した年でした。

では、コメンテーターの話はどれほど本当なのでしょうか。公の統計で確かめてみましょう。

凶悪犯罪の件数は減っている

警察の統計を調べてみます。統計では種別で分かれていますので、ここではいかにも凶悪と思われる、殺人、誘拐、強姦の件数を見てみます。

すると、いずれも項目も減少傾向にあることが分かります。特にマスコミで取り上げられる殺人は、わずかの凹凸はあるにしても、1955年からずっと減少していると言っていいでしょう。凶悪犯罪として有名なところでは1988年女子高生コンクリート詰め殺人事件、1997年神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗事件)、2002年北九州監禁殺人事件、2008年秋葉原通り魔事件、2012年尼崎連続殺人事件があります。これらの大事件が起こるたびに「治安が乱れている」「凶悪犯罪が増加している」とマスコミは不安を煽りますが、全く根拠のない発言です。殺人事件が最も多かった昭和30年代には5歳と6歳の二人が生後8ヶ月の乳児を殺すといった、信じられないような事件が多発しています。

ですので、コメンテーターの話は全くのでたらめです。でたらめ言ってお金を貰えるのだからいい商売です。


格差は広がっていない。広がっているとすれば老人の増加

「格差が広がっている」という文言はコメンテーターだけではなく左寄りの政治家やマスコミによる政権批判の常套句です。この原稿が本に載る頃には労働者派遣法改正が国会を賑わしているでしょうし、ちょっと前には「小泉改革で格差が広がった」と叫んだ民主党が政権を取りました。

所得の格差を調べるために最も使われるのが「ローレンツ曲線」と「ジニ係数」というものです。ローレンツ曲線は横軸にお金を受け取る人の割合、縦軸に所得の累積を書いたものです。

この連載の初回(H27年4月号)で登場したA社とB社に登場してもらいましょう。

A社
社長800万円
部長600万円
課長600万円
係長600万円
平社員400万円

B社
社長2350万円
部長250万円
課長150万円
係長150万円
平社員100万円

このデータを使って書いたローレンツ曲線がグラフ3です。実際は割合で表されるのですが分かりやすいように実数で表記しています。細い黒い線はこれを見ただけでもA社は収入が平均しており、B社は収入に偏りがあることが分かります。

さらに、グラフの左端と右端を線で結びます。この直線と、A社、B社との折れ線が作る三日月の面積の2倍がジニ係数です。三日月の面積はA社が小さい=格差が小さい、B社が大きい=格差が大きい、と判断します。

厚生労働省の報告によれば、平成23年の当初所得(税金や社会保障費などが引かれる前)のジニ係数は0.5536でした。当初所得から所得税や社会保障費などを引いた再配分所得は0.3791です。累進課税や社会保険料徴収が所得の再配分を起こすためです。このジニ係数平成20年は0.3758であり、平成23年は0.0033上昇しています。つまり、数字上は平成20年から23年の3年で格差は拡大したことになります。しかし厚生労働省の報告では、この数値上昇は高齢者世帯の上昇と世帯の小規模化によるものであり、勤労世帯の格差が広がっているのではない、としています。老人は退職により収入が激減しますから、それがジニ係数に表れたものです。

ですので、コメンテーターの話は全くでたらめとはいえないまでも、現役で働いている人に関してはでたらめといってもいいでしょう。奥様が豪邸を見てため息をつくのは人の家の中を見たいだけ、旦那に文句を言いたいだけと理解しましょう。芸能人は見せるものがなくなったら終わりですよ。

地球温暖化は不明点が2つある

最後に地球温暖化の話です。これは結論から言えば「よくわからない」事項です。
1980年代から1990年終わりまでは、マスコミは「もうすぐ氷河期が来る」と騒いでいました。それが一転して温暖化です。

不明点は2つあります。

(1)本当に温暖化しているのか
有名な地球の平均気温グラフ(グラフ4)を掲載します。

当初はもっと雑なグラフでしたが再検討により中世の温暖期とその後の小氷河期が追加されました。ですが、小氷河期は地球規模のものではなく局地的なものだという意見が多くなっています。また1980年からの衛星を使った温度測定とこのグラフが一致しないことも指摘されています。

(2)温暖化は二酸化炭素が原因なのか
私はこちらのほうが疑問です。二酸化炭素、炭酸のことですが、これは水が冷たければ多く溶け、暖かくなると溶けなくなります。コーラをぬるくすると泡がいっぱい出て気が抜けるのはそのためです。気温が上がれば海水温も上がる。そうすると海に溶けていた二酸化炭素が大気中に出てくる。二酸化炭素濃度の上昇は温暖化の原因ではなくて結果の可能性が高いと私は思っています。

解答

コメンテーターの意見は話半分にして聞きましょう。不安を煽るのがあの人たちの役割です。


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15.11.5/5:34 PM