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これで上司も市民も納得! 基礎からの統計教室9


参加者が楽しめる救命講習をしよう

例題

あなたは救急係に配置されて2ヶ月が経ちました。当務の日は救急車にずっと乗っていますが、たまに町の寄り合い所で救命講習の手伝いをすることもあります。

何回か手伝っていると、回によって盛り上がる日とつまらない日があることに嫌でも気が付きます。今は手伝っているだけですが、近い将来は皆の前で話すことになるでしょう。できれば自分の話を聞いて、みんな楽しい気分で帰ってもらいたいとあなたは思っています。

では、参加者を楽しい気分にさせるにはどうしたらいいでしょうか。

解説

テレビで芸人を見ると、うまい・下手がはっきり分かります。救命講習でも同じです。他人が見ればすぐ分かります。うまい人が講習を担当すると、聞いている人たちはとても楽しそうですし、下手な人が担当すると受講生は下をむいているか、寝ているか、時計を見ているかのいずれかになります。

消防さんの多くは「仕事だから」「周り番だから」「たまたま当たったから」救命講習の講師をしているのでしょう。ですが、受講生は時間を調整してその道の「プロ」に講義を受けることを楽しみに集合しています。その期待を裏切ってはいけません。

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今まで何度か救急隊の行う救命講習を見たことがあります。また私が頼まれた救命講習会のお手伝いとして救急隊に来て頂いたことは数知れません。私と一緒に講習をやるような隊員は全員がベテランで安心して見ていられる方が多いのですが、たまには「これはちょっと」という方がいます。そういう人はだいたい人形を前にして演説をしています。人形ごとにグループに分かれて指導しているのを見ると、うまいなあと思えるのは半分以下になります。

だいたい、口では「救命講習を受けましょう」「バイスタンダーCPRは大切ですよ」と触れ込みながら、消防さんたちは受講生を楽しませる努力をどれほどしているのでしょう。

講習会もプレゼンテーションの一種です。プレゼンテーションの技法はもう確立していて、それらをちょっと取り入れるだけで受講生の顔つきが全く変わります。

あなたが覚えるべき項目はこれだけです(表1)

表1
-------プレゼンの鉄則---------------
1)受講生を巻き込む
2)小道具を使う
3)3つにまとめる
-------プレゼンの鉄則---------------


1.プレゼンの鉄則

1)受講生を巻き込むこと

学校の授業を思い出して下さい。ただただ聞いているだけの授業のつまらなさ(001)。でも学校の授業ならまだ毎日のことですし学生にとっては授業は仕事ですからいいでしょう。これが、せっかく予定を組んで参加した救命講習なら、もう二度と参加しないでしょう。

001
ただ聞いているだけほどつまらないことはありません。

このつまらなさは一瞬で解消できます。誰かに当てることです(002)。学校の授業でも、先生が誰かに当て始めたとたん、空気が引き締まったはずです。

002
誰かに当ててみましょう。空気が一変します。

この、誰でも経験していることを自分でもやってみましょう。ただ注意すべきは、相手は善意の素人さんですので、恥をかかせるような質問は避けること。お薦めは体験談を聞くことですが、だらだら話すお姉様方をあしらう別の技術(003)が必要になる可能性もありますので注しましょう。

003
町内会ではお姉様攻撃があります。それをかわすことも大切な技術です。

体験談を聞く時には、その前に自分の体験談を語る(004)と、皆さん素直に喋ってくれます。

004
体験談は感情移入ができるので興味を引かせるのにいい方法です。


2)小道具を使う

自分の発表。スライドやプリントに凝る人はいっぱいいます。スライドやプリントに力を入れるなとは言いません。ですが、平面の図を100回見るより、実物を1回見た方がずっと理解できます(005)。

005
小道具を使えば興味を引けますし理解しやすくなります

実物がない時にはどうするか。落語家が高座でやるように、あたかもそれがあるように演じます(006)。そうすれば、聞いている人はそのものが見えてきます。

006
手に持っているマイクスタンドは消火器のつもり。「老人会で消火器の使い方を教える」というお題の一コマ


3)3つにまとめる

あれもこれも、と覚えてもらいたい気持ちは分かります。しかし、人間は一度に3つのことしか覚えられないと思って下さい。

マジックナンバー7という言葉を聞いたことがあると思います。これは、人は数字を覚える時、7桁を越えると急激に覚えられなくなることを言います。ですから固定電話や病院での患者番号など、7桁になっているものが多くあります。しかしこれはその場で覚えようとした結果(短期記憶)です。長期に記憶を保持する場合は、7桁はとても無理です。

あなたが救命講習の講師なら、会場で何を覚えて帰って欲しいですか。最大で3つに絞りましょう。例えば
・娘・息子よりまず119番
・勇気を持って心臓マッサージ
・心臓マッサージは思いっきりやる

胸骨圧迫を「強く・早く・絶え間なく」なんて覚えさせてはいけません(007)。なぜなら、胸骨圧迫だけで3つ覚えることがあるからです。

007
「強く・早く・絶え間なく」を教えているところ。そんなにたくさんは覚えられません。



2.おもてなしの心を持つ

プレゼンの鉄則は単なるテクニックです。プレゼンの根本はこちらです。

町内会の救命講習では、役員さんが会員に動員をかけて人数を集めています。せっかく消防さんが来てくれるのに、全然参加者がいないのでは申し訳ないからです。努力してくれる役員さんと、それに応えて自分たちの時間を割いてきてくれる受講者が目の前にいます。そう考えると、「面倒くさい」「30分くらいテキトーに喋れば」なんて思えないはずです。

3.真似する

周りでうまい人がいればマネをしましょう(008)。見ていて「うまいなあ」「受けてるなあ」と思うところを覚えておき、そのネタを頂きます。

008
2組いればうまい下手が必ずあります。そして、盗む技術も必ずあります。

真似はその場の思いつきではできません。あらかじめどの場面でどんなネタを披露するか、計画を練っておかなければ忘れてしまいます。私の場合は、スライドを使う場合にはスライドそのものに小さく書いておきます(010)。スライドにネタが書いてあっても受講生は何のことか分かりませんので大丈夫です。

009
私はスライドの右下に言うべきことや次のスライドの内容を書いています。



4.解答

参加者を楽しい気分にさせるためには、まず自分が楽しい気分になることです。自分が楽しい気分になるためには、不安なく講習をこなせること。そのためにはしっかりした下準備が必要です。

話の内容が決まっている救命講習なら、内容に不安はないはずです。次は、どこで質問して、どこで小道具を使うか考えて下さい。そうして、最後に覚えて帰ってもらう3項目を決めたら準備は完了です。

5.まとめ
・プレゼンテーションには3つの鉄則がある
・おもてなしの心で講義をする
・うまい人の真似をする



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15.12.27/10:36 AM