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ガス壊疽

概念
ガス産生菌Clostridium属(代表的には C. perfringens)の感染より皮下内にガスがたまる進行性の感染症で、激痛とともに皮膚の水疱や血行障害を起こし、筋肉組織が壊死となる。進行は急激で、頻脈、血圧低下、発汗、不穏、無関心などの中毒症状を呈し、ついにはショックとなり死亡する。

原因
本症の40〜80%はClostridium属ウェルシュ菌( Clostridiumperfringens
)によるが、そのほか C. novyi 、 C. sporogenes 、 C. septicum 、 C.
bifermentans によるものがある。これらは、偏性嫌気性で、芽胞を持つグラム陽性桿菌でガス壊疽菌群と一括して呼ばれ、土壌、ヒトや動物の腸管内に生息する常在菌である(以前解説した破傷風菌も同じClostridium属である)。皮下などの嫌気的条件下で増殖し、毒素を産生することにより発症する。また糖尿病患者の増加に伴い非Clostridium属の感染が増えている。
菌が創内に侵入しても実際に発症することは極めて少なく、発症に至るには、(1)創内に挫滅された筋組織や開放骨折、あるいは異物が存在すること、(2)創およびその周辺組織に循環障害があり、組織への酸素の供給が不十分になっていること、(3)何らかの免疫不全状態になっていること(糖尿病など)が必要である。

症状
受傷後もしくは手術後8時間〜20日目(平均4日)ころに創部に疼痛が出現し、捻髪音を伴い、浮腫や腫脹を伴って急速に病巣が拡大する。皮膚は初め蒼白、次いで赤紫色になり、しばしば出血性の水疱を伴う。滲出液が出現し、不快な甘酸っぱい臭いがする。皮下にガスを触知(ガスによる捻髪音)することもある。創部局所は高度の壊死性変化をきたし、悪臭のあるガスを発生する。急激に全身症状が出現し、頻脈・循環不全がみられ、ショック、DIC、腎不全、肝不全が出現し、ついには死亡する。

治療
・高圧酸素療法:できるだけ早期に行う。嫌気性菌であり、酸素にはすこぶる弱い。2.8 絶対気圧(ATA)下で純酸素吸入1時間、症状に応じて1日1〜2回、7回を1クールとしてガス像の消滅するまで継統する。
・抗生物質:ペニシリンGを1,000〜4,000万単位投与する。非 Clostridum 例ではセファロスポリン系などの広域抗生物質を投与する。
・傷を大きく解放し、オキシドール(過酸化水素水)でよく洗浄する。壊死組織は切除する。
・四肢の切断を行う。通常は進行が止まった時点で切断するが、糖尿病が合併した場合には予後が期待できないので早急に切断する。

予後
致死率は15〜30%である。白血球や血小板が減少する例、肝・腎の機能不全の所見が現れた例は予後不良である。

予防
・受傷部の十分な洗浄と異物の除去。発症には広範囲の挫滅組織、異物の存在が大きく関与しているので、土、糞便、汚物などが混入した広範囲の挫滅傷は受傷後できるだけ早い時期に壊死組織の完全な切除と異物の徹底的な除去・洗浄が必要である。傷は直ちに縫合せず開放性とする。
・抗生物質投与。嫌気性菌感染が疑われる場合は、ペニシリン系の大量投与、ガス壊疽抗毒素の注射を行う。破傷風の混合感染の危険が高いので、破傷風ワクチンを予防的に投与する。

経験
留萌市立病院。糖尿病合併の50歳男性。背部皮膚膿栓(ニキビ)からガス壊疽を発症。ウエルシュ菌は証明できなかった。背部の広範囲の解放(皮膚を大きく切開、皮下ポケットを何個も作りしてそのままにしておく)、オキシドール注入にて治癒。


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06.7.24/8:06 PM