唇のじんましん

(AEML投稿より 投稿者 versus 玉川)

サッカー練習中3分位ランニングをしたところ急に口唇部の腫れが起こりその後顔面の腫れと赤黒色に顔色が変化し、腹部のかゆみがあり、悪心により2回の嘔吐があったとの事案がありました。私の知能では何だかのアレルギー反応(アナフィラキシー)、また急性の喉頭炎、熱射病等々の症例を考え対処しましたが、よくわからない症例でした。意識レベルはクリア・PR84・BP84-68・SPO2は96%・BT36.5度で嚥下時の軽い喉の痛みを訴えていました。薬の服用なく、食物アレルギーもなしとのことでした。酸素3リットル投与で直近の内科で手配しましたが直近内科医より2次医療機関搬送との指示により病院搬入となりました。

この事例は、運動中に唇が腫れてきて喉も変になったものです。私の勤めている病院に運ばれましたが診察に当たった研修医もよくわからず、脱水を考えて点滴をしています。症状は2時間後にはやや良くなったようなので帰宅させています。本事例は血管神経性浮腫(もしくは発見者の名前を取ってクインケ浮腫)といい、家族性、特発性があります。家族性は血液中の補体の産生異常が原因です。重症例では、家系図を書くと、何人かは原因不明で頓死しています。
特発性は家族歴がなく、運動、寒冷、心理的、感染、等が引き金となって発症します。初発は唇が多く、唇から鼻へ、首へと広がっていきます。体表だけでなく咽頭、喉頭も浮腫になるため、舌が飛び出し口は開かなくなり、唾も飲めなくなります。さらに、声がかれてきて息が苦しくなり、ついには窒息して死んでしまいます。私が以前「プレホスピタル・ケア」で報告した急性喉頭蓋炎と同様、急に喉が変になった(声がかれた)患者を運ぶときには、窒息の可能性を考えながら搬送しましょう。

17歳男性。入浴後、全身の発赤・蕁麻疹・かゆみが出現〜救急車要請*以前に、体育の授業中に同様の症状あった(直ぐに治まった)。当日は、特に生物などは食していない*現着時所見〜全身のかゆみを主訴、全身発赤・膨疹を見分。観察中に嘔気(+)呼吸(活動内容)苦を訴える。JCS0、BP139/84、PR86、R30、SPO296。この段階では何らかのアレルギーと判断しましたがいまいちピンときていませんでした。口腔内を観察したところ「まっ赤っか」でした。酸素投与と補助呼吸実施。途上BP90台に低下、足側高位としました。病院到着直前に全身の発赤、かゆみは軽減し、呼吸状態も回復しました。*診断名〜「運動性アナフィラキシー」(運動性蕁麻疹)*この男子は以前にも同様の症状を訴えていますが、大事には至っていません。Drの話によるとこのような患者は、たまーに見かけるが重篤になることは少ないそうです。救急時に重篤になるような場合は、補助呼吸や血圧維持に主眼をおくよう指導を受けました。
「運動性のアナフィラキシー」は、発汗を伴うような運動や、精神的ストレスによっても発症するそうです。今回は「入浴」による刺激がアレルギー反応を引き起こしたのではないかとのことでした。

本事例は運動血管性蕁麻疹もしくはコリン作動性蕁麻疹といい、汗腺に神経から「汗を出せ」と伝える物質であるアセチルコリンが何らかの原因で皮膚の痒みと発赤をもたらすものです。梅澤事例はこれの重症例です。若年者に多く、歳を取るとともに症状は軽減します。実は私もこれでだいぶ苦労しました。汗のかき始めに全身がかゆくなるのです。高校生から大学の初めまで続きました。これは命に別状はないので安心して運びましょう。

アレルギーには古典的に4つの型があります。1型は即時型と呼ばれるもので、アナフィラキシーショックや蕁麻疹があります。4型は遅延型と呼ばれるもので、ツベルクリン反応のように48時間経って漸く出現する反応です。1型アレルギーは抗原が体内に進入することにより抗原抗体反応が起こり、それがきっかけとなって血管中のある細胞(mastcellなど)から大量のヒスタミンやインターロイキン6等の、痒み・皮疹・血圧低下をきたす物質が放出され症状が出現します。物質の放出はちょうど原子爆弾の核分裂のように連鎖的かつ末広がりに広がっていくため、アナフィラキシーショックでは急激な症状の悪化をきたします。蕁麻疹のサブタイプとして血管浮腫があります。蕁麻疹は皮膚に限局した症状ですが、血管浮腫は粘膜や粘膜下層に浮腫が及ぶため、咽頭喉頭に出現した場合には窒息の可能性が出てきます。

<救急の周辺 目次へ戻る

<OPSホームへ戻る