2000/11/17(Vol.32)号「便秘の話」

みなさんこんにちは。旭川や名寄はたいそう雪が積もっていましたが、ここは雪が少ないですね。今日もまた国保病院の事務室で原稿を書いています。来月になれば新しい医師室ができてそこで原稿書きが出来ると事務次長がおっしゃってましたが、誰も見ていない個室では呆けてしまって仕事が進まないのではないかと危惧しています。

今回の症例は5歳の男の子で、夕食を食べたあと急にへその左横が痛くなったといって来院しました。お母さんは盲腸を疑っているらしく、「足もつるんです」と心配顔ですが、当の本人は「今は痛くないよ」と元気です。子供を寝かしておなかを触ると、痛いところに一致して硬いものが触れます。おなかを触っても痛がりません。「ぎゅっと痛くなったのかい」「うん」「痛くなったり治ったりするかい」「うん」5歳とは思えないほどしっかりしています。母親に「今日ウンチは出ましたか」「いえ。普段は毎日するんですけど」みなさんも分かりましたか。これは単なる便秘です。

便秘で急激に腹痛が起こるのは子供に多いのですが、50歳の女性の症例を1年前に経験しました。この女性ではてっきり卵巣の茎捻転かと思って婦人科の先生を呼んで超音波までしてしまいました。便秘の急性腹痛は通常左側で、強くなったり治ったりします。熱はなく、痛くないときに腹を押しても痛がりません。これに対して盲腸(急性虫垂炎)は虫垂が化膿するので熱が出ますし、化膿しているところに一致して押すと必ず痛がります。痛みは通常胃から右足付け根に移動してきます。足がつるのは足の付け根が化膿しているためです。小児ではまず浣腸をかけて痛みが止まるか、血便は出ていないか見ます。成人では採血し、レントゲン写真を撮って診断を確定します。高齢者では盲腸と思ってもガンが隠れていることがあるので要注意です。この子の場合には大したことはなさそうなので、母親に説明して「また痛くなったら浣腸するから来院するように」と言って帰しました。

前回の原稿を書いたあと、興部消防の今井睦が病院に来て、入院患者さん相手に血圧計のデータを取っていきました(協力してくれた方々、ありがとうございました)。ここの消防はやる気のある若者が多く、今井も雑誌に臨床研究論文を載せるべく休日を割いて病院に現れた次第です。もっとも、データを取り終えたあとは看護婦さんたちと記念写真を撮っていきましたが...

私は旭川で救急隊員の臨床指導を受け持っていましが、興部ではその人たちとは違った熱意を感じます。旭川消防本部は大きな組織で救急隊員はいっぱいいますし、救急隊員でない人はもっといっぱいいます。自分のできる範囲が決まっているため、彼らの研修は個人の努力に重点が置かれています。彼らと話していると、どうせ意見なんか通らないんだというあきらめが感じられます(札幌ほどではないですが)。これに対しここの消防の若者たちには、自分たちの力で住民サービスを向上させるんだという使命感が感じられます。2年前までは単なる運び屋・担架係だったのが、現在は患者宅で血圧を測り、瞳孔を見、意識状態を観察するようになりました。病院に患者を置いたらそそくさと帰っていたのが、今は看護婦と一緒に心臓マッサージをし、人工呼吸をするようになりました。ここ国保病院で阿部院長に心電図の講義も受けています。

確かに勤務条件はきついですし、資器材も旭川に比べれば20年近く遅れているでしょう。でも、最後は結局ヒトに行き着くのではないかと思います。私も興部消防の若者の熱意に打たれて、来月か年明けから、興部消防に出向いて救急医学の講義をすることにしました。できれば近郊の救急隊員も参加してほしいと思っています。

→お問い合わせはビッグマウス(mkma72@d2.dion.ne.jp)まで

2000-11-11

玉川 進(たまかわ すすむ)

旭川医科大学第一病理学講座


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