痛み外来の話

皆さんこんばんは。興部国保病院を追い出された玉川進です。くじけない私は、いま留辺蘂町の隣町・置戸赤十字病院で原稿を書いています。前回の見聞録に国保病院の救急玄関のことを取り上げたところ、町ではさっそく段差解消に動き出したとの話を聞きました。どうもありがとうございます。また、メルマガアンケートでも私の文章を読んでくれている人がいることを知りました。これからはあんまり興部とは関係ない内容になってしまいますが、また暇なときでも読んでください。

興部国保病院の出張がなくなった時点で、私は病理医局の先輩にアルバイト先を相談しました。大学の給料は日雇い(休めば無給)1日1万円でボーナスもなく、それでは生活していけないからです。その先輩は置戸日赤の院長先生と同期で親しく、すぐさま置戸日赤に電話をかけてくれ、その日のうちに置戸への出張が決定しました。翌週には置戸日赤の院長と事務長が私の講座の教授に挨拶に来て下さり、円満に出張が開始したのです。

置戸日赤はベッド数90床と興部国保病院の1.5倍の規模を持っています。さらに正看護婦が足らず稼働率を60%程度(入院患者は30名強)に落としている興部とは異なり、稼働率は常に95%を保っています。これは日赤看護学校が地方に効率的に正看護婦を就職させるシステムを持っていることと置戸に就職したら奨学金返済が免除になる育英資金を置戸町が運用していることによります。また、北見に近いことも若い人がとどまる理由の一つでしょう。

置戸町の育英資金について言えば、有資格者は置戸町民に限らず将来的に置戸に就職する可能性のある者となっているようで、外来看護婦の一人は隣の留辺蘂町出身です。初めて病院を訪ねたときに驚いたのは職員がとても若いことで、看護婦も事務職員も20代が大勢います。病院は最近増築したばかりで新しく、事務室はコンピュータがずらりと並んでいます。高い稼働率のおかげで町からの財政支援も殆ど不要です。

興部町から見れば本当にうらやましい話でしょう。興部町の平成13年度予算を見たところ、病院特別会計は一般会計の20%を超えています。単純に考えて、皆さんの税金の1/6以上が国保病院を維持するために使われているのです。

置戸日赤の外来患者数は年々減少していました。置戸町とその周辺(医療圏は留辺蘂・訓子府・留辺蘂など)の人口が減少しているためです。でも現在の院長先生はとても評判がいいので昨年度には患者の減少傾向にも歯止めがかかったようです。「患者は病院に付くのではなく医者に付く」とは私たちがたびたび口にする言葉です。で、私には付いてくれる人はいるのでしょうか。

出張は月一回日曜日夕方から水曜日夕方まで。ここの病院に当直室はありません。病院に隣接して職員住宅があり、そこで寝泊まりしています。住宅にはガスレンジ以外はすべてそろっており、家族が何時来ても泊まることができます。

私はここで医者らしく診察をしています。メインは「ペインクリニック」。あっちが痛い、こっちが痛いと言っている人を診察して、注射したり、薬を出したり、リハビリを勧めたりしています。診療開始早々膝の痛いご婦人が何人か見えられ、レントゲンを撮り関節軟骨を強くする薬を注射しリハビリに送り出しました。腰が痛い、頭が痛い、肩が痛い...まだ2日目ですが、癌の痛み以外は一通り診察した気がします。

年をとって出てきた痛みはいわば老化の結果ですから完全に取り去ることはできません。また薬を使っても手術をしても全く良くならない痛みもあります。良くならないと分かっていてもどこかに希望を抱いて患者は病院にやって来ます。私にできるのは、少しでも痛みをよくする方法があればそれを紹介し実践すること、もし方法がなければ患者さんの話を聞いてその部分に手を当てることです。

若い頃、ペインクリニックを勉強し始めた頃には、技を駆使すれば消えない痛みはないと考えていました。でも多くの患者と接するうちに、殆どの痛みは消えることはないし、消えたとしてもそれは患者自身が自分で治したものだということが分かってきました。また、ただ話を聞くだけで楽になる痛みが多いことにも気づきました。時間の許す限り患者の話を聞くことが、痛みを取るうえでも、これからの治療を進めていく上でも一番大切なことのようです。たまには話も聞きたくないと思わせる患者さんもいますが、そこは我慢してつきあうようにしています。

OPSのメンバーが書いた論文が救急隊向けの学術誌に載ります。今井睦、硲智幸、土屋正幸の3氏です。この雑誌「プレホスピタル・ケア」は救急隊というより救急救命士向けで、内容もかなり高度です。OPSもついに全国区になるときがやってきました。矢野政一OPS会長もさぞお慶びでしょう。

OPSが載った興部町広報の記事を書いてくれた田村さんが旭川まで送ってくれました。次回OPSは5月の開催で、いやがる遠山かおる保健婦長を再び講師に招くことに成功しましました。年齢不詳の美声(特に色っぽい「うん」という相づち)が聞けると思うと今から楽しみです。また症例検討では初めて興部消防以外の症例も検討します。回数が減った分、中身の濃いOPSにしようと考えています。

2001-4-10 21:07

玉川 進

置戸赤十字病院


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