破傷風

毒素
破傷風毒素はボツリヌスに次ぎ地球上の存在する最強の毒素で、1gで成人600万人を殺すことができる。

死亡数
死亡数は16人であった。致死率は0.226なので、患者数は70人と推定される。

破傷風菌
土壌内の常在菌で、どこから集めた土からも50%の確率で発見される。

原因
わずかな擦り傷が原因となる。菌は酸素を嫌う嫌気性菌のため、ぱっかりひらいた傷よりも釘を踏んだときのような狭くて深い傷が原因となることが多い。これは創洗浄を行いづらいことも関係していると思う。他には、ピアス、虫歯、へそのごまで密閉されたへその報告がある。外傷がない症例も6%認められる。
私が報告した3例は、木の枝、コンバイン、犬であった。

症状
肩こり、口が開きづらいことが初発症状となる。小児の場合には転びやすくなる(自験例)。排尿・排便障害も早期に出現する。翌日には全身の硬直、痙攣、腱反射亢進が見られる。中枢神経系の緊張・興奮。自律神経症状も現れる。よだれを流し、汗をかき、頻脈となる。さらに血圧が乱高下する。
重傷度は時間で判断する。外傷から初発症状の出る期間・もしくは開口障害から痙攣が起こるまでの時間が短いほど重傷で、その中の何人かは死亡する。

破傷風を疑ったら
目の前で死ぬ疾患であることを覚悟すること。開口障害と胸郭の硬直のためバッグマスク・ツーウエイは困難である。LMに至ってはまず挿入不能である。さらに全身の痙攣が突然起こるため、そのまま呼吸停止で死亡する。運良くICUに送り込み気管切開したとして、その後は頻脈・徐脈発作(20から200まで突然変化する)血圧変化(40から220まで経験した)に振り回されて息つく暇もない活動が要求される。死因は10日以内なら窒息と誤嚥性肺炎、それ以降なら無気肺などの長期人工呼吸による合併症・消化管出血が報告されている。

裁判
新聞報道では、旭川日赤の整形外科に対して初期治療(トキソイド投与)が不適切であったとして患者が訴えを起こしている。昔も今もトキソイド投与なしでは裁判の負けははっきりしている。

印象
もっとも印象に残っているのは60歳女性で、枝に前腕を引っかけただけで破傷風になった例。循環変動を示すモニターを前にして、何度も「だめだ」と思った。毎日蒼白になってやってくる家族をさらに不安にさせて帰していた。人工呼吸30日で抜管できた。小児の経験例では、退行を起こしてしまい、今まで読めた文字が読めなくなり言葉も発しなくなったのを経験している。

海老沢功:破傷風。最新医学 1999;54(3)s:644-651
玉川 進、他:自治医科大学ICUで経験した破傷風4例の検討。ICUとCCU 1995;19:435-9

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