040505石村幸 女性救急救命士として

石村 幸 (いしむら みゆき)

稚内市出身

2004-5-5 wed 16:00
稚内地区消防事務組合稚内消防署:救急救命士
北海道ハイテクノロジー専門学校7期生
消防士拝命 平成14年4月1日

趣味:寝ること。
勤務から帰ってきてすぐ寝て、夕方起きて、夜また普通に寝ることができる

「髪ですかあ。皆に言われるんですよ。重いって。変にパーマかけたからかなあ。」

救急救命士を選んだ理由は、自分が最初に患者に接することができるためです。将来の職業として看護婦を考えていたのですが、看護婦さんのように病院で患者を待つ立場ではなく、救命士となった自分が率先して現場に行って救命率を向上させることに憧れたからです。

ハイテクは高校生のときに体験入学で行ったのが最初です。そのときには看護学科を見学に行きました。でもそこで救命士学科があるのを知って、それからは救命士学科に何度も足を運びました。体験入学では救命士が現場に行くことにより救命率が上がると教えられて、それで「ああすごいな」と思って。やっぱり人を助ける仕事に就きたいなと思っていたので、救命士を目指すことになったのです。

体験入学では救急処置の説明を受けたり、先輩たちがシミュレーションを見せてくれたり、ダミー人形を使った心肺蘇生法の訓練などをやりました。体験入学も何回も行っていると、やる気があるというので先生たちも私のことを覚えてくれて、「じゃあ、アンビュー使ってみようか」とか、やらせてくれるんです。先生も「できるだけ、来れるだけ来なさい」というので何回も行きました。

ハイテクでの授業は、はじめの1年は解剖や生理の勉強がビッチリで、自分が描いていた救急の勉強とはかけ離れていたので、「こんなことやっていて救命士になれるのかな」と思っていました。面白くなかったです。いったい何の関係があるんだろうって。でも今から考えればとても大切な分野なんですけどね。

2年目になって病態生理や本格的な実技が入ってきて、すごく楽しくなりました。3年目は公務員試験と救命士試験のふたつの試験に通るために勉強の毎日です。毎週模擬試験もありました。

消防に入るためには体力試験もあるんですが、私は少年団のときからバレーボールをやっていましたし、ハイテクの同級生も高校時代クラブに入っていて、それも全国レベルの人たちが多かったので、体力の維持はそんなに大変ではありませんでした。

卒業時に大都市の消防を受けたのですが、みんな落ちてしまいました。私が所属で初めての女性救命士になるのがいやだったので、女性救命士採用の実績があるところばかり受けていたのです。それで卒業しても職がないので、稚内の老人ホームで働かせてもらっていました。

稚内消防に勤めることになったのは本当に偶然で、知り合いのおばあちゃんが目の前でCPAになってしまい、救急車が来る前にバイスタンダーCPRをしていたんです。それで救急車で稚内消防の救命士さんがやってきて、「ああ、救命士持っているの」という話になって、「稚内でも女性を採用する可能性はあるから受けてみなさい」と言われたんです。

9月に一次試験があって、10月に二次試験があって、11月に内定をもらったんですが、正直なところ稚内消防に入るか悩みました。初めての女性救命士だということもあったし、それより「一生稚内かあ」なんて考えたりして。

私が稚内消防に入ったときには市役所から派遣された女性事務員が一人いらっしゃいましたが、純粋な消防職員は私だけでしたし、今も私だけです。稚内消防で初めての女性ということで、いろいろあったことは耳にしています。でも入って私を解ってもらえばいいやというくらいの気持ちでした。

オヤジの臭い、しましたよ。休憩室の枕、臭くて臭くて。オヤジの頭の臭いがしました。枕しないで寝ています。

私専用に仮眠室を作ってもらいました。鍵をつけて。シーツは私だけピンクなんです。洗った後で間違わないようにらしいです。毛布も自分専用のものです。鍵は仮眠室と、脱衣所と、シャワー室に付いています。また2階にある女性トイレは、元々放送がかからなかったものを新たにスピーカーを付けてもらいました。

救急隊の仮眠室は1階で、出場要請があったらピカーッとサーチライトが光って起こされるんです。でも2階は電話だけで、疲れていたりすると起きづらいんですよ。でもまだ寝過ごしたたことはないですよ、さすがに。

消防に入って5日間は日勤で事務仕事の見習いです。そしてすぐ初任教育で6ヶ月間消防学校に行きました。消防学校ではハイテクの後輩の女の子がいました。男性も数えれば初任同期に20人くらいはハイテクの卒業生がいたような気がします。

消防学校から帰ってきて救急車に乗り始めて、12月に病院実習を終えて、ようやく救命士の仕事ができるんですが、救急車に乗ってはじめに感じたことは、ハイテクで学んできたことが一つも生かされないということでした。現場ってこんなものなんだ、何て言うんでしょう、ずっと消防にいて救命士になった人は現場を知っているわけじゃないですか。でもハイテクでは患者に触れず、想像でやっていて、シミュレーションも細かくて、血圧一つでもうるさくて。でも現場に行くと「はい、乗せますよ」とか。でもそれでがっかりしたことはなくて、はじめから、現場はこうなんだよという話は聞いていたので納得しました。

自分の腕力を限界を知るために、救急車に乗る前に、消防のぽっちゃりした人を相手に布担架で運んだりストレッチャーで持ち上げたりしていろいろ試しました。一緒にいた方達にも私の限界を分かってもらえたのでよかったと思います。現場でもスムーズに活動しています。

あと、酔っぱらって興奮した人を抑えるのに、「ああ、幸に当たったらだめだ」といって代わってくれたりして、かわいがられているんだなあと思います。自分としては腕力にも自信があるのでそんなに大切にしてもらわなくてもと思っているのですが。

この前なんか、酔っぱらいのおっちゃんがいて、「おっちゃん救急車で行こうね」で乗ってくれたのはいいのですが、私を見る目がハートになっているんです。頭切れただけなんですけどね。それで隊長さんが私に何かあったらいけないと考えてくれて、「幸離れろ」と。何かされても自分で対処できるのになあと思いつつ、「はい」と素直に離れています。

JPTECミニ勉強会 in FURANO (動画あり)

「女性隊員がいたら来てください」と119番で言われたことがありました。その方は病院についてから私だけに病状を伝えてくれました。女性だから話しやすいこと、女性にしか話せないこともあると思うんです。そういう部分では得していると思うのですが、それを生かせるにはまだまだです。

女性だから優しい、ということはないと思うんですよ。優しさに関しては男の人の方が優しいと思うんです。男性の方が気を使ってくれることいっぱいあるし。見た目ですね。きれいとかきれいじゃないとかじゃなくて。「この人、女の人だから安心するな」とか。でもあんまり気をつけてはいないんです。朝は化粧して出勤しますが、夕方には化粧を落としてしまいます。常にきれいにしているわけじゃないんです。

患者さんを運ぶときに、野次馬から「女だから持てないんじゃないのか」と声が掛かることがあります。そういわれると逆に「手伝って」って言うんです。ストレチャー上げる時に一緒に持ってもらったりとか。使えるものは使いますよ。

女性救命士のホームページは作っていません。メーリングリストは、初めは消防だけでなく民間の企業でも女性が極端に少ない人も参加してもらってと考えていたのですが、結局はハイテクの同期の女の子5人だけでやっています。でもそれも、所属の規模によって悩みは違ってくるんで、結局個人メールでやり取りしちゃうんですよ。それに管理人が新潟の消防の子なのですが、仕事が忙しくて手が回らないみたいです。

それと、この前東京の全消協に参加したときに、女性消防士のセミナーがあって参加してきました。北海道から沖縄まで14人が参加していました。その場所に江別消防の方もいて、このセミナーのように救急に限らず消防全体の悩みを話す会を作れたらいいねという話になったので、もしかしたら女性の会ができるかもしれません。札幌と旭川はよく知りませんが、それ以外では北海道で12人以上の女性消防士がいますのでね。年に1回皆で集まって話ができればと思います。稚内から近い女性救命士なら紋別と遠軽ですが、そのどちらの方とも会ったことがないんですよ。女性だけで集まれる場がないのでそれを作りたいと思っています。

OPS#16

これから女性救命士を目指す人たちには、患者さんを助けたいという気持ち、少しでもよくなってもらいたいという気持ちを持って目指して欲しいと思います。

自分としては、消防が男の世界だという意識はなかったんですよ。だから、何て言うんでしょうね、はじめから男・女という意識がなかったので、それに関しては何とアドバイスしていいのか分かりません。

でも入って分かったことですけど、女性に対して理解がまだ少ない場所では確かにあるので、そこで自分はどうやっていくのかは考えて欲しいです。例えば、「何かつらいことがあったらどうしよう」ではなくて、やる気があったらいろいろ考えていくと思うんですよ。解決だってできるはずです。

私だって解決すべきことはあります。できるかどうか正直分からないんですけど、でも、一人じゃないんです。職場には助けてくれる先輩がいます。大丈夫ですよ。


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