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 ガイドライン2005(G2005)特集の4回目は、住民への救命講習を取り上げる。G2005では一般人が気軽に講習に参加し、躊躇なく蘇生行為を行え、しかも講習から時間が経っても蘇生の仕方を覚えているように色々工夫をしている。

救命講習は短く単純に
 G2000では講習について単純化を提唱し、また座学より体験型学習を提唱していた。さらに家族に心疾患患者がいるなどで蘇生に関心の高い人を重点的に教えることも勧告してきた。G2005では救命講習に対して1)単純化、2)短時間化、3)リフレッシャーコースの開催を求めている。受講者は長く拘束されるほど、教えられる項目が多いほど、そして時間が経つほど必要なことを忘れるからである。またG2005では講習の方法についても検討している。検討されたのは今まで行われてきた形式、つまり講義とデモンストレーションと実習を三つセットで行う形式と、コンピュータを使った形式、それとビデオを見て自習する形式である。しかしこれについては勧告は出ていない。3つの形式にはそれぞれ利点と欠点があり、一つの形式の中でも質が一定していないためである。現在の段階で言えるのは、実際に体を動かさないと覚えないということと、今までの講習の形式にビデオなど新しい形式を組み合わせることが理解に役立つということである。
 さらにG2005では、CPRの裾野を広げる意味で、インストラクターを交えず自分だけでCPRを学習する方法も検討している。その結果、ビデオを見ながらマネキンで真似をする方法がClass IIa(やるべき)とされ、マネキンを使わない方法、例えばビデオを見てパソコンでシュミレーションするなどは効果が薄いと結論付けている。

AED講習も短く
 AEDは講習を受けなくても使える。しかし講習を受けたほうが到着から放電の時間が短くなり、また何よりもAEDに対する抵抗感が少なくなるのでAEDを使う勇気が培われる。そのためAEDの講習の実施はClass IIa(やるべき)となっている。AEDの講習の標準となっているのはアメリカ心臓学会で行っている4時間のコースであり、それに基礎心肺蘇生コースを組み合わせると6時間になる。しかし6時間ではいかにも長いため、現在AEDのコースは2時間から4時間が多い。実際には2時間と4時間とで講習の内容は変わりがないので、さらなる短時間化は可能である。それに、全くAAEDを使ったことのない人にまた簡単なマニュアルを渡してやらせると96%の人がちゃんと放電までたどり着けるし、加えて20分のビデオを見せれば10ヶ月後にもその手技を覚えている。これがビデオだけであってもインストラクションだけであってもコンピュータ学習であっても効果のほどは変わらない。AED講習はさらに短くなっていくだろう。

道具を使う
 G2005では救命講習でメトロノームを使ったりテープでやることを示す方法を取り入れることが勧告(Class IIa、やるべき)される。G2000ではClass IIb(やってもよい)だったが、その有用性はこの5年間でさらに高められている。この道具には心臓マッサージや呼吸の回数を教えてくれたり、手の位置が間違っていたら教えてくれる機器が含まれる。ただそれらの道具を使ったから修得が早まるかについてはClass IIb(やっても良い)とちょっとトーンが下がる。これは救助者が道具に依存してしまう可能性があるからで、講習の間には必ず道具を使わない時間も作るべきだとしている。

一刻も早く心マを
 G2000では一般人が行うCPRでは脈拍のチェックが外された。G2005では医療従事者でも脈拍のチェックが外される見込みなのは前回述べた。さらに心臓マッサージの手の位置も、肋骨に沿わせて剣状突起へという時間のかかる方法ではなく、胸の真ん中に手を置くというズバッとした方法になりそうである(これについては号を改めて述べる)。現在G2005が注目しているのは、あえぎ呼吸や下顎呼吸など、息をしているように見えて実は息をしていない状態である。この状態、心臓が止まっているにもかかわらず呼吸があるように見えるのが心停止患者の実に3割にも及ぶことが最近の研究で明らかになった。これら新鮮な心停止患者に一刻も早くCPRを行えば蘇生する可能性はものすごく高い。しかし今の講習では「いき・せき・うごきなし、CPR開始」と教えており、見せかけであっても動きが少しでもあればCPRはできない。この状態に対してどこで線を引いてCPRを実施させるか、新たな研究が待たれている。

感染症に対して
 救命講習ではCPRを勧めていても、いざ自分がやるとなると躊躇してしまう。その最も大きな原因は感染症であろう。SARSや鳥インフルエンザの出現で、感染症の恐怖は増えることはあっても減ることはない。読者諸兄なら感染症の懸念を示す受講者に対してどう説得するだろうか。CPRで亡くなった人もSARSやエイズにかかった人も今まで一人もいないと説得するか。しかし感染の可能性はゼロではないし、エイズの感染の危険は統計的には100万回のCPRに一回はあるとされるので、今までたまたまいなかっただけかも知れない。それならばフェイスシールドやポケットマスクなどの携帯を勧めたくなるのがだが、ポケットマスクはまだしも、フェイスマスクの感染防御能力は非常に怪しいことがG2005で述べられている。もし突然嘔吐したらあのぺらぺらのビニールでは吐物の跳ね上がりを防ぐことはできない。そのためフェイスマスクはG2005から消える可能性があるし、もし残ったとしても「心理的に有効」程度の記載になるかも知れない。ポケットマスクもフェイスマスクよりはいいが感染の可能性がある。本当に安心なのはバックマスクだけらしい。

参考文献
C2005 evidence evaluation worksheets
日本蘇生協議会ガイドライン2005ダラス会議



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