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060303トリアージは誰がやっても同じ


書籍

消防職員のための「トリアージ」 アトラス 救助隊員のための外傷アプローチ

概念+手技+訓練

手技23:トリアージ の概念と意義 手技24:STARTトリアージ 手技59:スタート法を学ぶ 手技82:初めてのトリアージ(トリアージ訓練法):大島基靖(札幌)

トピックス

最新事情:トリアージは誰がやっても同じ 070205オーバートリアージが人々を救う 病院でのトリアージ(スライド) 手技62:トリアージとAED:最新のトピックス

災害/交通事故でのトリアージの経験

佐呂間竜巻災害(消防本部 佐竹信敏(遠軽)) 佐呂間竜巻災害(佐呂間消防先遣隊 野村林太郎(佐呂間)) 隊員の手の届かない重症外傷 応援出動を要した交通事故

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 今回はトリアージの話である。トリアージは知識としては前から知られていたものの、長く戦争のない日本でその重要性が認識されたのは阪神淡路大震災の発生によってであった。大震災では軽傷者も死亡者もいっぺんに病院に送られて来て、本来助かるべき患者も助からなかったという反省から、神戸を中心とした地域では早くからトリアージ教育を積極的に進めて来た。その甲斐あって、去年の尼崎列車事故の際にはトリアージが有効に機能して傷病者の有効な救助に役立ったとされている。

トリアージ=START?

 今やどんな教科書にもトリアージの項目がある。しかし具体的方法と言えばSTARTしか載っていない。他の方法はないのだろうか。
 START法は正式名称をSimple Triage And Rapid Treatmentといい、1983年にカリフォルニアのニューポート海岸消防署とホー病院の合同チームが考案したもので、アメリカ同時多発テロでも活用されたトリアージ方法である。START原法ではまず歩ける人間を安全な場所に出してから、取り残された人たちを呼吸状態、爪床圧迫法による循環状態、従命反応による神経学的症状の順で60秒以内で判断して治療の緊急度を決める。現在では循環を爪床圧迫法から橈骨動脈触知に変更したSTART変法が主として用いられている。
 アメリカ、それに日本ではSTART一色だが、別の地域には別の方法がある。
 イギリスでトリアージと言えばTriage Sieveしかない。これは「Triage Sieve and Sort」の現場編で、Sieveとは「ふるい」のことである。歩ける人を外へ出し、残った人の下顎を挙上して呼吸がないものを死亡とする。次に呼吸回数が1分間に10回未満もしくは30回以上で緊急治療群、また爪床圧迫法で再還流時間が2秒以上もしくは脈が120回以上ならこれも緊急治療群とする。最大の特徴は従命反応がないことである。Sortは「Triage Sieve and Sort」の救護所編で「並び替え」を意味する。ここで意識を含めた外傷スコアで患者を評価する。現場で意識の意識の評価を行わないことから、小児のトリアージに有用であるという報告もある。Triage Sieveはイギリス周辺の国々に輸出されており、今やNATOでの標準トリアージ方法となっている。
 オーストラリアではCareflight Triageが用いられている。初めに歩ける人を外へ出すのは他と同じであるが、次に従命がくる。従命できれば橈骨動脈を触れ、触知できれば準緊急、触知できなければ緊急とする。従命に従えないものには呼吸を見て、呼吸があれば緊急、なければ死亡とする。

優劣はあるのか

 上に挙げたトリアージでは、観察項目はほとんど変わらない。Triage Sieveで従命反応がないくらいである。アメリカとカナダの報告ではSTARTが一番いいと書いてあるし、イギリス連邦からの報告ではTriage Sieveが一番いいとしている。ではどれが一番使えるのか。
 トリアージ方法を比較した論文は探したところ一つしかない1)。1144人の患者の記録を各トリアージ方法に当てはめてみて、どのトリアージが一番優れているかをみたものである。方法はTriage Sieve, START原法、, START変法、CareFlight Triageの4法である。患者のグラスゴーコーマスケールと血圧などの測定項目から患者の重症度を割り出し、4つのトリアージ法での緊急度と実際の重症度を比較したものである。評価は感度(ある患者が振り分けられる割合)と特異性(振り分けられた結果が正しかったか)にわけて行われた。その結果、Triage Sieveを除く3法は感度が82から85%、特異性が86%から91%と大して変わらなかったのに対して、Triage Sieveは重症外傷に対して感度45%、特異性88%とともに劣っていた。詳細に見てみると、START原法は感度に優れ、CareFlight Triageは特異性に優れていた。
 一見説得力がありそうだが、この論文には嘘がある。Triage Sieveはもともと従命項目がない。つまり意識は問題としていないのだから、グラスゴーコーマスケールでトリアージ方法を評価するのは最初から間違っている。
 このように、トリアージの方法はいろいろあって、それらに優劣をつけるのはまず不可能である。STARTでもTriage Sieveでも、自分もしくは所属の方法を身につけることが大切なのだろう。

良いトリアージをするためには

 もう一つの問題は、誰がトリアージするかである。
 元来、トリアージは医師が行うのが望ましいとされて来た。それは死亡の診断は医師しかできないことと、救急隊員がトリアージを行うのは責任が大きすぎるからというのがその理由であった。しかし尼崎では医師が到着したのは救助隊が到着してからかなり時間が経ってからであったし、医師がいたとしても立ち入ることのできない場所もある。救助隊や救急隊が患者を選別しなければならない場面が数多く存在するのである。
 では、救急隊員はトリアージがうまくできるのか。これについても報告が出ている2)。過去に発表された論文12編をまとめて評価したものである。救急隊員がトリアージして外傷センターに運んだ症例1例1例を外傷スコアなどで点数化し、救急隊員の判断が正しかったか検討した。それによると、全12編のうち、救急隊員によるトリアージが適切であったと結論づけたもの4編、トリアージが不適切だと結論づけたもの4編であった。そのうちある1編では隊員のトリアージの判断自体は適切であり手術を必要とする患者も適切に区別していると誉めているものもあれば、逆に2つの論文では救命士はトリアージミスが非常に多かったとけなしているものもある。
 次に、経験や自己学習は適切なトリアージに役立つか。ある論文では二次蘇生(ACLS)を勉強した救急隊員は他の技術職職員に比べ重症患者の評価が適切であったとしている。しかし、二次蘇生を学んだ隊員と学んでいない隊員で外傷評価の正確さには差がなかったという報告もあるし、さらには二次蘇生を学んだ救急隊員と一次蘇生しか学んでいない看護師、おまけに病院で2年以上勤務した事務職員でもトリアージの正確さには差がなかったという報告まである。加えて、二次蘇生を学んだ救急隊員は一次蘇生しか学んでいない看護師に比べ、腹部外傷を重くし、ICU入室を増やし、外科手術を増やし、死亡予測まで増やすという報告まである。
 基本さえ理解すれば、トリアージにはそれ以上の知識も経験も役立たない。あとは修羅場に耐えられる精神鍛錬か。

引用文献
1)Ann Emerg Med 2001;38:541-8
2)Injury 2005;36:1298-1305


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