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除細動直後心マだけで蘇生率アップ

 ガイドライン2005(G2005)が出てから約1年半が過ぎようとしている。もうそろそろ救命率の速報が出てもいい頃だとは思うがまだ出ていないようだ。今回はG2005の除細動の部分だけの論文を紹介する。

G2005以前からショック1回のみ

 今回紹介する論文1)は、除細動放電直後から心マを再開するだけで蘇生率が上昇するというものである。

 G2000ではAEDで除細動をする時には心マを挟まずに3回連続して放電することにしていた。しかしシアトルでは過去の経験と多くの文献から、G2005の出る以前の2005年1月からAED関連の手技をG2005同様に変更していた。つまり除細動は1回で直後の心電図解析や脈の触知を行わずにすぐ心マを再開すること、次の心電図確認-除細動まで2分心マを続けることである。その他の部分、たとえば心マと人工呼吸の回数は15:2のまま活動していた。

 著者らは除細動の手技がG2000で行っていた2002年1月から2004年12月までのデータ(G2000群)と、除細動手技をG2005と同様のものとした2005年1月から2006年1月までデータ(G2005群)とを比較した。対象は病院外の心房細動による卒倒で目撃者のあるものとした。

生存退院率1.4倍

 全心停止患者の中で今回の研究対象になったのはG2000が374人、G2005群が134人であり、この人数は同時期の全心停止患者のともに約15%で同じであった。両群で年齢、性別、、現着時間、処置開始時間、挿管件数の割合に差はなかった。

 個々の手技の検討では、初回除細動で放電から心マに着手する時間がG2000群では27秒、G2005群では7秒であった。これはG2000では自脈が回復しなければ3回まで連続して心マなしで除細動するのに対して、G2005では一回ごとに心マを再開するのでこれだけの差がついている。次に除細動後に心マを再開してから次の除細動で手を離すまでの時間について検討すると、G2000群では54秒、G2005群では91秒と、G2005群で倍近い長さの心マを行っている。さらにもう一度心マを行う時に手を離してから放電までの時間を検討しているが、これはともに20秒と差がない。

 転帰を見てみると、現場で自脈が再開したのがG2000群で60%、G2005群で74%。生存退院率がG2000群33%でG2005群46%、退院先が自宅であった割合がG2000群26%でG2005群37%であった。

除細動手技を変えるだけで

 過去に試算された結果では、目撃のある心室細動患者ではAEDを持った救急隊が3分早く現着することによって生存率は10%上昇するとされていた2)。しかしながらいくらシステムを見直して現着時間を早くしても生存率の上昇は5%未満であった3)。筆者らはこの低い達成率の原因は心マ中断時間が長過ぎるためと考え、連続除細動を放棄することによって蘇生率の向上を目指したのである。自分たちの考えでプロトコールをどんどん変えていくのはさすがアメリカと感心させられる。

 この研究の段階ではガイドライン2000から逸脱しているのは除細動3回連続が一回ごとにCPRを挟むことになっただけで、患者に取り付いてすぐにAEDを付ける「ショックファースト」も15:2もG2000そのままである。対象患者が目撃のある心室細動患者でデータが除細動に最も良く反応する患者群であり、全ての心停止患者でそのまま改善が反映されるわけではないものの、集学的な検討を経て発表されたG2005の一連の効果も期待できるだろう。

除細動器そのものがネック

 「絶え間ない心マ」でボトルネックとなるのがAEDである。その中でも心電図の解析時間と充電時間が心マ中断時間の多くを占め、しかも現場の人間の努力では短縮不可能な部分である。

 では、心電図解析を器械に任せずに自分でやったら時間は短縮できるのか。マネキンを用いて半自動除細動器と昔ながらの手動除細動器で比較した論文4)が出ている。それによると、心マ中止から放電まで半自動式で17秒、手動で11秒、放電後心マ再開までの時間が半自動式で25秒、手動で8秒だった。しかしながら半自動式が心室細動全例に放電しているのに対して手動では心室細動例の89%の放電であり、11%は心室細動なのに放電を行わなかった。早いけど見落としがあるか、遅いけど確実か。難しいところだ。

 また電極の貼り方や種類によっても放電までの時間が異なることも示されている5)。ヨーロッパ方式よりAHA方式が、さらにAHA方式でもパドルを持つ方法より電極を貼る方法のほうが心マの中断が少ないとされている。簡単が売り物のAEDでも訓練が必要ということだろう。

お役所仕事から脱却を

 2007年3月現在、北海道ではほぼ全ての消防でガイドライン2005(G2005)への移行が完了したようである。それでもAHAやヨーロッパからガイドラインが出てから1年以上も経過している。これは日本独自のガイドライン設定が遅れたこと、ところによっては地域のMCに丸投げしていたため対応がバラバラだったことが採用の遅れの原因にもなっていると聞く。中にはMC(と聞いたが県レベルかもしれない)の対応が遅れに遅れていまだにG2000から移行できないところもあるらしい。除細動の順番を変えるだけで蘇生率がアップするのだ。良いことをすぐ実行に移すのも行政の役割だと思うのだが。

引用文献

1)Circulation 2006;114:2760-5
2)Circulation 1997;96:3308-13
3)Circulation 2003;107:2780-5
4)Resuscitation 2007;Jan 29;Epub
5)Resuscitation 2007;Jan 12; Epub


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07.3.10/10:13 PM