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090509院内救急蘇生チームへの評価

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 院内救急蘇生チーム(チーム)というのが病院内で結成されている。アメリカでは多くの病院でチームが組まれており、日本でもそれを受けて大学病院を中心として病院内にチームを結成しているところが増えてきている。今回はこのチームの有効性を考える。

患者急変対応チームとは

 英語ではRapid Response TeamもしくはMedical Emergency Teamといい、院内の死亡率を下げるのが設立の目的である。文献では1995年からのその名が見えるが、現在の意味で頻回に使われるようになったのは2005年とそんなに歴史はない。このチーム、集中治療室から派生したもので、患者が心停止などの危機的状況になりそうなときに駆けつけ、患者の評価とトリアージ、治療を行うことで患者の生命をサポートする。これにより院内の死亡率を低下させることと、集中治療室ICUへの適正入室を促すことを目的としている。

 このチーム、流行もののようで、確たる有効性も証明されないまま多くの病院に設置されたらしい。2007年、多くの論文を横断的に解析する手法を用いた報告1)では、1996年から2006年までに発表された論文で解析に足る論文は2つしかなく、しかも結論は異なっているとし、筆者らはこのチームの有効性は証明できないこと、厳密な方法論を用いた論文が必要であるとしている。

有効だという報告

 最近、このチームの働きについて重要な論文が3つ出たので紹介する。まずは小児病院からの報告である2)。研究が行われたのはスタンフォード大学にある264床の小児病院で、2001年から2007年に入院した22037人を対象とした。チーム運用開始は2005年8月。ICUで訓練を受けた医師、看護師、呼吸療法士などがチームを組み、患児の状態に応じていつでも病棟に駆けつけるしくみとなっている。検討項目は死亡率と心停止・呼吸停止の数である。結果として、チームが呼ばれたのが143回、チーム運用開始によって病院全体の死亡率は18%減少し、また月間の心肺停止率は実に71%も低下した。チームが呼ばれる原因としては患児の呼吸不全が36%であり、低血圧15%、低酸素13%と続く。チームが行った医療行為は呼吸補助が39%、点滴16%であった。

 この論文は小児病院におけるチームの有効性を初めて示したものである。過去に2つの小児病院から報告された結果では、チームを作っても死亡率などは変化しなかった。今回有意差が出た原因として筆者らは、筆者らの病院では病気の重い患児が多いこと、チームの出動回数が他の2編に比べて格段に多いこと、チーム発足からの研究期間が他より長いことを挙げている。

 オーストラリアからの23病院、741744人を対象とした報告3)でも、入院1万人あたり死亡は2.2人、予期せぬ死亡は0.94人減少したとして、その有効性を認めている。

無効だという報告

 無効だという報告も一般病院から出されている4)。こちらのチーム運用は2006年の1月である。検討期間は2004年1月から2007年の8月末まで、入院患者24193人を対象とした。チーム構成は小児病院とほぼ同じ、やることも同じである。結果として、チームが呼ばれたのが376回、ICU外での心肺停止率は低下したものの病院全体での心肺停止率は変化せず、死亡率も変化しなかった。チームが有効な作用を示さなかったことについて筆者らはいくつかの理由を挙げている。その中で可能性があると思われるのが「蘇生不要」の患者が73名含まれていることである。また二次的な検討では、チームを呼ぶべき病態であったのにチームを呼ばなかったり呼ぶのが遅れていたケースがあり、筆者らはこれも死亡率を低下させなかった原因としている。

スタッフの技術が未熟なだけ

 最初に示した小児病院からの報告2)に対しては、同じ雑誌にイギリス人が痛烈な批判を載せている5)。小児病院の報告でチームが有効とされたのは、ただ単に一般病棟のスタッフの心肺蘇生技術が未熟だったからではないかというものである。データを見ると、チームを呼んだ理由が呼吸不全と気道管理であったものが38%もある。こんなのは蘇生のABCであるAirway・Breathingに過ぎず、自分でバックマスクを使えばいいだけであろう。「この論文でもっとも学ぶべきものは一般病棟のスタッフが蘇生技術を向上させる必要がある、ということだ」とまで言い切っている。読んでいてはらはらするほどの勢いだ。

大切なのは教育

 このチームについて多くの論文を掲載しているのは看護系の雑誌である。チームを呼ぶのは看護師の役割であり、また患者の急変で焦るのも看護師だからである。チームを呼ぶには患者の観察や手続きなど理解しなければならず、そのための教育プログラムが議論の中心となっている。かいつまんで書くと、教育プログラムの施行前は経験が3年以上で学歴の高い看護師ほどチームを呼んでいたものが施行後は均等に呼ぶようになったとか、ビデオを入れた方が知識の吸収がいいとか、整形外科病棟での患者ケアで看護師の満足度が大きかったとか、ほぼすべて肯定的なものである。無効だという報告4)も、もし適切な時期にチームを読んでいれば死亡率は低下したかも知れない。

 こうしてみると、何でも結局は教育に行き着くようだ。またおかしくなったらすぐ手を打つこともそうかも知れない。現場で当てはめれば前者は住民教育であり、後者は迅速なCPR開始に通じる。日本では多くの大学病院ですでにチームが活動しているし、有効に機能しているところも多い。しかしイギリス人の批判のように、短期的に見ればチームは患者を救えるだろうが、長期的に見ればチームの活躍より病院全体のスキルの底上げが有効であろう。どこの看護部門も教育に熱心である。スタッフの垣根を越えてスキルを高め合う努力がこれからますます重要となってくる。

文献

1)Cochrane Database Syst Rev 2007;18:CD005529
2)JAMA 2007;298:2267-74
3)Crit Care Med 2009;37:148-53
4)JAMA 2008;300:2506-13
5)JAMA 2008;299:1423-4


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09.5.9/9:33 AM