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101217ガイドライン2010概略

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「ガイドライン2010徹底解説」近代消防社からイラスト満載で2011年6月発刊

 ガイドライン2010が先月発表された。大きな変更はないのだが、例えば「気道確保-人工呼吸-胸骨圧迫」から「胸骨圧迫-気道確保-人工呼吸」などと実務上で変更がなされたところがいくつかある。

人工呼吸の廃止

 一般市民は人工呼吸しなくても良い。日本版の絵ではするべきかしなくてもいいのかよく分からない記載になっているが、アメリカ心臓学会(AHA)の絵には人工呼吸がない。それに対してヨーロッパ蘇生協議会(ERC)の絵では30:2が書かれており、「訓練された救助者」は人工呼吸を行うべきとしている。

 人工呼吸が廃止される理由はこの連載で過去に述べてきたとおりである。病気が移る、人工呼吸が難しい、CPRの知識不足などが挙げられている。

ABCからCABへ

 ABC(Airway-Breathing-Circulation)からCAB(Circulation-Airway-Breathing)に順番が変わった。G2005までは、意識がなく呼吸がなければまず気道確保をし、それでも呼吸が出なければ胸骨圧迫を行っていた。しかしG2010からは意識と呼吸がない場合は直ちに胸骨圧迫を30回行い、その後気道確保と人工呼吸を行うように変更された。これは日本版もAHAでも同じだが、ERCでは胸骨圧迫の前に「口を開ける」ことが求められている。

 理由は胸骨圧迫を一刻も早く行うためである。気道確保やフェイスシールドなどを用意する時間を切り捨てることによってすぐ胸骨圧迫を始めることができる。また人工呼吸を強制せず胸骨圧迫に着手させることによってバイスタンダーCPRを増加させる狙いがある。ただABCよりCBAが優れているというエビデンスはない。

胸骨圧迫は100回/分以上

 日本版では「少なくとも100回のテンポで行う」としており、AHAの表記もat least 100/minutesで同じである。今までは「およそ100回」としていたので、速くても許されるようになった。この理由については日本版では「1分間あたり100-127回のテンポで胸骨圧迫を行い1分間あたり少なくとも60回の胸骨圧迫が実施された場合に生存退院率の改善が認められた」ことを挙げている。AHAでは車の走行速度に例えている。これは、人工呼吸などで胸骨圧迫が止まっている時間が存在するなら、やっているときは速度を増して遠くまで行こう、ということらしい。

圧迫の深さは5cm以上

 今までは4-5cmとされていた。5cm以上だったら6cmでも7cmでも許されるわけで、文字で表すよりはかなり深く押すようになる。今までの報告で、5cm押した場合は5cm未満の場合より除細動成功率と自脈再開率が向上する可能性が示されていること、4-5cmと上限を決めるとどうしても浅くなってしまうことがその理由である。

 小児では胸郭前後径の1/3の深さを押す。AHAでは1/3以上、ERCでも1/3以上となっている。以前のAHAでは1/3-1/2となっていたのだが、解剖学的に1/2を押すのは不可能という論文が出ているため修正された。

押す場所は胸骨下半分

 日本版では「胸骨下半分」で、左右の乳頭を結んだ線では不正確であるので不可。押す場所は5年ごとに変更されている。ガイドライン2005では「両側乳頭を結ぶ線上の胸骨」であり、ガイドライン2000ではみぞおちをなぞって場所を決める方法であった。

 AHAでは日本版と異なり「on the center (middle) of the victim's chest (which is the lower half of the sternum)」(患者の胸の真ん中(これは胸骨の下半分に当たる))でガイドライン2005と同じである。日本版では押す場所の説明にかなりのスペースを割いて解説しているがAHA では解説すらない。それほど力説する項目なのだろうか。

「見て聞いて感じて」削除

 一般人は「見て聞いて感じて」式の呼吸確認は一般市民では不要になった。呼吸の確認は「胸と腹部の動きの観察」で行うとされたので、見て動いていなければ呼吸停止と判断して胸骨圧迫を行う。また呼吸確認の際の気道確保も不要である。

 医療従事者については、日本語版は呼吸の確認時に気道確保を行って「見て聞いて感じて」呼吸の確認をするとしている。一方AHAでは医療従事者であっても「見て聞いて感じて」は不要である。10秒待つ時間があったらすぐ胸骨圧迫をせよという強い意志を感じる。

日本版はただのワープロ打ち

 アメリカ版AHAのガイドラインは発表時にはすでに出版物としてPDFになっており、変更項目を解説したハイライトには日本語翻訳も用意されている。翻訳は自然な日本語でかなりの努力が払われていることがよく分かる。ヨーロッパ版も同様で、出版物PDFとハイライトがダウンdo-路できるようになっている(日本語翻訳はない)。それに対して日本版は多分MS-Wordで作ったもので、日本語も翻訳調で意味が分からないところがあり、さらに言いたいことがあちこちに分散している。加えて今回の発表は暫定版で正式発表は後日らしい。このガイドライン2010からガイドライン作製の正式メンバーになった新参者としても、アメリカやヨーロッパとの力の差を見せられた発表であった。


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