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110605G2005は有効かもしれない

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最新事情

 G2005は有効かもしれない

 

 ガイドライン(G)2010はG2005を下敷きに作られており、実質的にはG2005とほぼ同じである。これは今までの連載でも述べているとおりだ。ではG2000からG2005に変更したことによって救命率や生存退院率は上昇したのか。去年の連載でも取り上げたテーマだが、また新しい論文が出たので紹介したい。

 

 心拍再開率が上がったという報告

 

 まずは心拍再開率が上がったというアメリカからの報告1)。G2005運用の前後での成績を比較した。検討項目は生存退院率、次に心拍再開率であり、取り付き時の心電図波形と生存退院時の脳機能分類も検討項目とした。G2000適用のCPA患者数は1641名、G2005適用の患者数は1605名であり、両群の患者背景、バイスタンダーCPR実施率、発症から119番通報までの時間、現着時間に差は見られなかった。生存退院率はG2000で10.1%だったものがG2005では13.1%へ上昇した(P=0.007)。生存退院患者のうち、心室細動もしくは心室頻拍だった割合はG2000で20%,G2005で32.3%(P<0.001)。生存退院者のうち脳機能が良好(介助なしに生活できるレベル)なのはG2000で33.3%、G2005で59.6%だがこの項目では有意差は見られなかった。これら良好な結果は、CPR、特に胸骨圧迫が早期に開始されることによって体内循環が保たれたことが要因と筆者らは結論づけている。

 

 

 良い結果を報告している論文をもう一つ。同じくアメリカからの報告2)。G2005前後で成績がどう変わったかという人口84万人の全住民対象のコフォート研究である。期間中の心停止患者数は1365名。これらを受けた処置、高度救命処置ACLS、救命用の新資器材、低体温療法を含む高度治療によって分類し、それぞれについて1ヶ月後の生存率を求めている。これによると、心停止患者全てを対象とした比較で、G2000では1ヶ月後の生存率が4.2%であったものがG2005では13.8%で上昇した。処置による内訳ではACLSを受けた患者では7.3%から23.9%へ、新資器材を使用された患者では8.1%から34.6%へ、脳低体温療法を受けた患者では11.5%から40.8%へといずれも1ヶ月後の生存率が上昇している。これらすべての処置で1ヶ月後の生存率が上昇したのは即ちG2005の導入によって生存率が上昇したと考えられる。

 

 

 変わらないという報告

 

 G2005を導入しても救命率は変わらないという報告もある。

 一つ目はニュージーランドからの報告3)。ウエリントンと周囲の心肺停止患者を対象にG2005導入の前後で生存退院率、除細動成功率、自脈再開率、生存入院率(救急外来で自脈があった患者)を検討した。期間中の心肺停止患者数はG2000で162名、G2005で170名。生存退院率はG2000で11%、G2005で12%と変化なし。1回目の通電で除細動が成功した率は68%から62%へ、自脈再開率は34%から42%へ変化したがいずれも有意差は認めなかった。生存入院率は22%から36%へ上昇した。筆者らはG2005は生存入院率は向上させたが生存退院率は向上させなかったと結論している。

 

 二つ目はニュージーランドの隣、オーストラリアからの報告4)。G2000の2003年から2005年での心肺停止患者3115名とG2005の2007年から2009年の患者3248名での比較である。検討項目は生存入院率と生存退院率である。G2005適用の前後で心静止の割合は33%から44%へ上昇、現着時間も7.1分から7.8分へ上昇、心室細動もしくは心室頻拍の割合は40%から35.5%へ低下した。バイスタンダーCPRの割合も63%から59%へ低下している。生存退院率は9.4%から11.8%へ上昇した(P=0.002)が、これは心室細動もしくは心室頻拍患者の生存退院率が19%から28%へ上昇したもので、これらの項目を合致させた解析では生存退院率全は改善されていない。

 

 

 本当に改善されたのか

 一番最初の論文はただ単にガイドラインの差だけを比較しているが、この間に低体温療法の普及があることを結果に含めていない。二番目の論文は低体温療法を別枠として計算しており信ぴょう性が高い。ただガイドラインの変更だけで4%の生存退院率が14%まで変化するとは考えづらいからである。

 三番目の変わらないという報告は他の報告より患者数が一桁小さい。この報告で患者数が10倍になるともしかしたら有意差をもってG2005が有利、という結果になるかもしれない。4番目はG2000よりG2005の方がどう見ても条件が悪いのに結果が向上したのだから、G2005はもしかしたら有効なのかもしれない。

 これらの論文、特によくなったという2編は、実際に日本で活躍している救急隊や救急外来で受ける印象とは異なっている。日本からの報告を待ちたい。

 

 文献

 1)Heart Rhythm 2010;7:1357-62

 2)Ann Emerg Med 2010;56:348-57

 3)Resuscitation 2010;81:1648-51

 4)Deasy: Resuscitation 2011;Apr 16, Epub


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11.9.18/3:39 PM