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111105公衆AEDの現状

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公衆AEDの現状

 一般人のAED使用が認められ、AEDが空港などに配備されるようになったのは2004年7月1日。7年経って学校へのAED配備は終了し、市町村の公共施設への配備もほぼ完了したと言っていいだろう。だがそれらは有効に使われているのだろうか。今回は一般人が除細動を行う「公衆AED」について考える。

順調な増加

 京都大学の石見拓先生による、2004年7月1日から2008年12月31日までの大阪市における院外心停止患者についての統計を紹介する1)。これら心停止患者のうち公衆AEDが行われた症例を抽出して検討した。第1の評価項目は1ヶ月後に神経学的に良好に生存しているかどうかである。この研究期間中、10375例の院外心停止があり、このうち心室細動であった症例は908例、これら908例のうち公衆AEDが行われたのは53例(心室細動の6%)であった。公衆AEDが行われる割合は年々増加しており、2004年にはAED実施例がなかったのに対し2008年では11%にAEDが使用された。

 場所は駅18例、介護施設6例、医療施設5例、フィットネスクラブ4例、と続き、路上4例、会社内4例、学校2例となっている。AED施行者は以前にAED講習を受けたことのある人が47%で半数に満たず、医療関係者以外が57%と過半数を占めた。施行した人は半数以上が医療とは関係のない人たちで、駅員が13%、学校の先生が6%、フィットネスクラブの関係者が6%、警備員が6%であった。転帰である1ヶ月後の生存と神経学的良好の症例数については2006年までは公衆AEDを受けた2割にも満たない数だったが、2007年からは55%の患者が神経学的に良好な生存となっている。

 院外心停止が1万例で公衆AEDが行われたのは53例。率にして0.5%、200人に1回である。2008年は公衆AEDの実施率が心室細動による卒倒患者の11%となっているが、いったい2008年に何人の病院外心停止があったのかこの論文には記載していない。さらにこの論文に記載されている割合(%)は分母が心室細動による卒倒患者数に対する割合であるため、分母を院外心停止患者とすると割合は激減する。これだけAEDがあちこちにあっても実際使われる数は微々たるものである。

自宅でAEDは皆無

 ではAEDを受けた症例の詳細を見ていこう。患者の平均年齢は60歳、7割が男性である。心原性の卒倒が98%で、74%の症例で卒倒が目撃されている。前記の通り、公衆AEDが始まった2004年には一般人によるAED使用は0、2005年に1例、2006年に5例となり、2007年では22例、2008年では24例で公衆AEDが行われている。この間院外心停止患者の中で心室細動患者数はほぼ横倍なので、AEDの使用割合は施行数に比例して2005年の1%から2008年の11%へと増加している。
心室細動であった患者のうち公衆AEDを受けた割合を場所別に見ると、もっとも割合が高かったのがフィットネスクラブの50%でありもっとも割合が低かったが自宅での0%である。自宅では401例の心室細動卒倒患者に対して一例も公衆AEDが行われていない。

アメリカでも同じ程度

 救急先進地域のアメリカ・シアトルからも同じような報告2)が出ている。2007年1月1日から2009年12月31日までの院外心停止患者は763例、その中で救急隊員以外から除細動を実施されたのが32例(4.2%)であった。警察官が10例(1.3%)でそれ以外の居合わせた人が行ったのが22例(2.9%)であった。使われたAEDは全部で59台、そのうち18台はその場所にあったもの、41台は0.1マイル(=160m)四方にあったものである。

 実施率は大阪よりシアトルが高い。また日本では警察官のAED実施が全くないのは警察官の職務のちがいによるものだろう。

いつでも使えるか

 これだけ普及したAEDだが、万が一の時にちゃんと使えないと置いている意味がない。これについてはイギリス・スコットランドから興味深い報告3)が出ている。グラスゴー周辺のAED保有施設にアンケートを採ったものである。アンケートを送った施設数は183で、153施設(84%)から回答があった。この中には空港や商業施設も含まれている。施設のスタッフにAEDの訓練をしているところは97%と100%に満たない。また18%の施設では新入のスタッフには訓練を行っていない。AEDの定期的な保守点検の契約を結んでいるところは18%しかなく、不具合があったときに交換できる契約をしているは24%であった。アンケートで回答した153施設のうち、施設外に持ち出してAEDを使ってもよいとしているのはわずか1施設しかなかった。過去に放電(除細動)を行ったことのある施設は10施設(30%)あって、患者は32名、そのうち23名(72%)は救急隊が到着するまで生存した。

 AEDは電気機械である。メインテナンスが欠かせない。使う人のメンテナンスも欠かせない。今や工事現場でもAEDを見ることがある。いざというときに使えるように、心配蘇生法だけでなくAEDの啓蒙も必要だろう。

文献
1)Sasaki M, et al. Circ J. 2011 Sep 29
2)Resusucitation 2011;82:995-8
3)Scott Med J 2010;55:8-10


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12.2.17/10:31 PM