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150702自動胸骨圧迫機ルーカス2の評価

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 自動胸骨圧迫機ルーカス2が売れている。月刊消防の事例解説でも目にするし、今年出版した「外傷アプローチ」にも写真が載っている。本連載でも2013年8月号でルーカスを取り上げている。今回はランセットがルーカス2を取り上げているので紹介したい。


ルーカス2

 ルーカス(LUCAS)2はアメリカシアトルに本社を構えるフィジオコントロール社が販売している自動胸骨圧迫機である。日本でも同社の日本法人が販売している。同社の製品ラインナップを見ると除細動器が4種類、胸骨圧迫機が1種類、それと除細動器からデータを取り出して解析するソフトウエア1種類であり、AEDの会社であることが分かる。

 ルーカス2の特徴は・バッテリーで45分間駆動する・心肺蘇生ガイドライン完全準拠・7.8kgと軽量で持ち運び簡単・レントゲンも撮れる、となっている。人手の足りない現場、特に長時間移送する救助現場にはうってつけだろう。


蘇生率に差はない

 今回の論文1)はランセット電子板に2014年11月16日に掲載された、イギリスの多施設共同研究である。自動胸骨圧迫機は質の高い胸骨圧迫を続けること可能であるが、その効果についてはエビデンスに乏しいのが現実である。今回筆者らはルーカス2を使うことで用手の胸骨圧迫より生存率が上昇するか検討した。

 対象は病院外心停止患者で外傷患者ではないもの。薬剤の検査と異なり、ルーカス2を装着したり手で押したりするのは隠すとこはできないので、救急隊ごとルーカス2を使うか用手でで胸を押すか無作為に割り当てた。ルーカス2と手で押す救急隊の割合は1:2とした。研究が行われたのはイギリス全土の91地区。ルーカス2の場合は救急隊が到着した時点でルーカス2が装着されて病院に運ばれ、手で押す場合はバイスタンダーから胸骨圧迫を引き継いでそのまま病院へ向う。第一の検討項目は30日後の生存率と治療方法とした。データの収集と解析はルーカス2の使用の有無はマスクされている。

 検討期間は2010年4月15日から2013年6月10日まで。検討期間中に病院外心停止になった患者数は4471例、そのうち1652例がルーカス2使用群、2819例が用手群だった。ルーカス2群のうち40%がルーカス2を使わずに用手で胸骨圧迫を行っており、用手群では1%未満(11例)がルーカス2を用いられていた。ルーカス2を用いなかった原因として最も多かったのが「使うのが難しい」であった。結果として、30日後に生存している患者の割合はルーカス2群で6%、用手群で7%と有意差はなかった。その他、心拍再開率はルーカス2群で32%用手群で31%、生存入院率は23%で同じ、3ヶ月後の生存率は6%で同じ、神経学的に良好な生存はルーカス2群で5%、用手群で6%であった。ルーカス2に起因すると思われる副作用が7例(胸の打撲傷3例、胸の切創2例、口腔内の出血2例であった。用手群では副作用は見られなかった。ルーカス2の15台で何らかの不具合が発生した。


今までと同じ結果

 ルーカスについてはバンドで胸を締め付けるオートパルスと異なりピストン型で動作が用手法に近く視覚的にも納得できることから世界で50を越える国で使われている。これら機械を用いた胸骨圧迫の効果については、初期の2つの論文2,3)では心拍再開率を向上させ生存退院率も上昇させるとしていたが、この2つの論文以外は生存率などに差は見られないという結論になっている4-6)。


そんなに難しいのか

 結果自体は今まで言われていた通りなので驚くことは何もないのだが、それよりルーカス2を使わなかった最大の理由が「難しかったから」とは驚いた。次の理由が「理由不明」、「命令違反」と続く7)。

 どれだけ難しいのか添付文書を見てみた。簡単に書くと、背板を敷いてその上にピストンを固定するだけである。初代ルーカスは電気ではなく圧縮空気か圧縮酸素を送ってピストンを動かしていたようなのでもう一つ駆動装置が必要だったようだが、ルーカス2は電動のため駆動装置は不要となっている。ちょっと練習すれば(もしくは誰かが使うのを見ていれば)すぐ使えそうなのだが、そこは日本人とイギリス人の違うところなのだろう。命令違反も同じである。

 生存率が変わらないということは逆に言えばルーカスに全て任せてしまってもいいということになる。最も疲れる胸骨圧迫を代わってくれる機械なのだから、これからますます普及して行くだろう。


文献

1)Perkins GD, Lancet 2014 Nov 16 Epub

2)Prehosp Emerg Care 2005;9:61-7

3)JAMA 2006;295:2629-37

4)JAMA 2006;295:2620-8

5)JAMA 2014;311:53-61

6)Resuscitation 2014;85:741-8

7)Ong ME. Lancet 2014 Nov 16 Epub


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15.7.2/11:12 AM