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151105 救命講習で使えるネタ3本

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先月の「救急隊員日誌」では、救命講習の苦労話が書かれていた。私は救命講習が暗いとはあまり思えないが、話す内容によっては暗くなるのだろう。それよりも私ならずっと同じことを変化なく続ける方がずっとつらい。聞いている方も講師がつらいと感じているなら楽しいことは全くないはずである。「救急隊員日誌」の筆者「田舎者」氏は個人的な話をしたり具体的な事例を入れたりして受講者の集中力を高めようと試み成功を収めている。この項では救命講習の講話で使えるネタを3つ紹介したい。

救急隊到着のバイスタンダーCPRで30日後生存率2.5倍

昔からドリンカーやカーラーの生存曲線が教科書に載っていた。放っておくと時間とともに生存率が悪くなるからバイスタンダーは早く蘇生を始めよう、というのが救命講習での決まり文句である。では、言われたとおり救急隊が来る前に蘇生を始めたらこの先ずっと長く生き続けてくれるのだろうか。ちょっと心臓が動いただけで結局死んでしまうのでは苦しい思いをさせるだけだ。この根本的な疑問に答える論文がスウエーデンから出た1)。筆者らは1990年1月から2011年末までの病院外心停止30381例を検討した。このうち、救急隊が到着する前から心肺蘇生を始めていたのは51%、全く手をつけていないのは49%である。30日後の生存率はバイスタンダーCPRが行われていた例では10.5%、行われていなかった例では4%であり、2.5倍の差であった。AEDが一般に使われるようになったあとからの、心電図解析時心室細動であった症例に限っても結果は同じであった。

救命講習では「あなたが蘇生を行うことで30日後の生存率は2.5倍になります」と伝えよう。AEDがあってもなくても、誰がやっても2.5倍である。


AEDは日本光電がお薦め

救命講習ではAEDトレーナーが使われる。多くの人は物珍しそうに眺めているだけだが、中には自宅に置きたいという人もいて、講習のあとで質問されることがある。今まで私は「買い取りでなくてレンタルにしなさい」と教えていたが、「買うなら日本光電にしなさい」と言える論文が出た。

筆者らはドイツで入手できる7社8種類の製品を用い、AEDが話すガイドに従った場合の時間的な比較を行っている2)。用意したシナリオは2つ。心室細動を感知して放電するものと、心静止で放電しないもの。蘇生に当たるのはBLSインストラクターの資格を持つ人1名で、全部同じ人がAEDのおしゃべりに従いBLSを3回行っている。ここでAEDはシナリオ開始直後に電源を入れることに注意して欲しい。状況確認や意識の確認の時にはすでにAEDは起動している。

論文では7社8種類の結果一覧が載っているが、かなりの時間差があるので驚いてしまう。例として心室細動で放電するシナリオを見てみると、取り付きからパッド装着までの時間について、短い機種では50秒で完了するのに対し、長いものでは147秒も必要である。AEDと使わない場合はこの部分、意識確認や呼吸確認は25秒で終わると書いてあるので、袋を破ったりプラグを付けたりする時間が製品によって4倍近く差があることになる。次にパッド装着から心電図解析が始まるまで速いもので41秒、遅いもので93秒。心電図解析に要する時間は短くて7秒、長くて15秒。「ショックが必要です」から放電までの時間は短いもので48秒だが、長いものでは101秒もある。心電図解析スタートから放電までの時間は胸骨圧迫ができないのだから、性能の悪い機種を付けられたらたまったものではない。ちなみにほぼ全ての項目で1位であり、胸骨圧迫停止比率(全体の時間の中で胸骨圧迫していない時間の割合)が37%とダントツに優れていたのは日本光電のCardiolife AED 2100であり、多くの項目で最下位かつ胸骨圧迫の停止比率がワーストーンの71%であったのはアメリカ・Cardiac science社のPowerHeart G5であった。これは心静止のシナリオでも同じであった。ちなみに、日本でもよく使われているフィリップス社製ハートスタートはトップの日本光電と最下位のCardiac science社の中間である。

買うなら日本光電にしよう。筆者らはAEDにドイツ語を喋らせているが、これが日本語であっても順位が入れ替わることはないだろう。


11歳からは口頭指導に従って動ける

「何歳になっても心肺蘇生は重要です」と救命講習の講師は言う。現状を考えると、自動車免許取得時の心肺蘇生実習により若い人たちの多くは心肺蘇生の訓練を一度は受けている。定年を迎えるような年代は町内会等で講習があるだろうし、もっと年齢が上がれば心肺蘇生を受ける側になるから、訓練が必要なのは18歳以下だろう。高校や中学で実習を行うことも多いようだ。では全く蘇生実習を受けたことのない人が電話越しの口頭指導で蘇生術を行えるようになるのは何歳からなのだろうか。筆者ら3)は一度も講習を受けていない7歳から15歳の87人を相手に、電話による口頭指導でちゃんとした手技が行えるかどうか確認した。口頭指導は筆者らの住むニュージーランドのプロトコールに従い、マネキンを相手に蘇生術をやってもらうものである。1分間に100回押すことは10歳以上なら可能であったが時間と共に疲労感を訴え、これは2回の人工呼吸の後に改善した。11歳以上では30mmから50mmを押すことができた。マネキン相手に口対口呼吸ができたのは87人中1人だけであった。

胸骨圧迫の深さから、筆者らは11歳以上なら口頭指導によって蘇生が可能と考えているが、ちゃんとした手技は訓練が必要とも述べている。講習会では「今は口頭指導が充実していて、やったことのない人でも11歳以上なら蘇生はできますが、大事な人を助けたいなら今日この場で正しい方法を身につけて帰って下さい」と言おう。



文献
1)N Eng J Med 2015;372:2307-15
2)Scand J Trauma Resusc Emerg Med 2015;23:48
3)Resuscitation 2015;90:138-42


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15.11.5/3:52 PM