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170820あなたが助けた3人に1人は1年後には死んでいる

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救急隊ならば誰でも、自分が助けた人が来年にはどうなっているか気になるだろう。「助けられた命」を大切にできる限り長生きして欲しいと願っているはずである。今日紹介する論文2つは、その期待を裏切る結果を出している。

病院外心肺停止患者の予後

多くの論文は、病院外心肺停止患者の短期予後、つまり生存退院率や神経学的後遺症の程度などを調べている。それに対してアメリカの論文1)では3年後までの生存曲線を描いて、長期予後に焦点を当てている。

対象になるのは65歳以上で2005年から2010年までに病院外心肺停止を起こした1万6206名である。そのうち1127名は生存退院している。この1127名について1年後の生存率を調べるとともに、人種、性別、心停止時の心電図波形、バイスタンダーCPRの有無などと生存率が関係するか調査した。

死亡率は、退院後30日で12.7%、1年後で31.8%、3年後で47.2%であった。1年後生存者については、性別、人種、心停止時の心電図波形との関連は見られなかったが、入院時より退院時に身体機能の低下が見られたり神経学的に強い障害が出たりした患者では死亡率が高かった。心肺停止の場所では、自宅が最も死亡率が高く、最も良かった看護施設の4倍であった。これは看護施設では迅速にバイスタンダーCPRを受けられるためである。この傾向は3年後の死亡率でも同じであった。

この死亡率を、対象を合致させるコホートスタディとして入院患者(入院理由は問わない)と比較すると、入院患者では1年後の死亡率が20.4%で病院外心肺停止患者の2/3であり、3年後でも8割程度と、病院外心肺停止患者の死亡率が高かった。さらにこの死亡率は入院しないで生活している老人の2倍であった。

生存退院患者1127名のうち57%の患者は1年以内に再入院していた。1年間に生存退院患者にかかる医療費は2万4000ドル(264万円)であった。年齢が若い、黒人、退院時に神経学的後遺症が重い、看護施設やリパビリ施設に入所する患者は1年間の医療費が有意に高かった。

死亡率が30%という別の論文

フランスからの論文2)も紹介しよう。病院外心肺停止患者のうち、集中治療室から生存退院した患者の追跡調査の結果である。2000年から2009年の間に生存退院した患者は225名。25.3%の57名が神経学的に良好な状態で退院した。短期的予後に関係するのは卒倒から3分以内にCPRを開始することと血中乳酸濃度であったが、79.5歳を境とした年齢の上下と低体温療法の有無は短期生存に関係はなかった。死亡率は年齢などをマッチさせたコホートと比較した。生存退院患者の1年後の死亡率は30.7%、対照群では4.7%と大幅な差を認めた。1年後に生存できる要因として、卒倒時に除細動可能な心電図であること、アドレナリン使用量が3mg以下であること、血中乳酸濃度が5.1mmol/L以下であることが分かった。24ヶ月後の追跡期間終了時には、生存者の91%が神経学的後遺症がなく、74%が日常生活も正常であった。

バイスタンダーCPRの大切さ

1年後には3割が死んでいる、という数字は衝撃的だが、内容についてはそれほど違和感はない。アメリカでもフランスでも示している内容は2点である。つまり

(1)生き残るのは神経学的後遺症がないかごく軽い患者であること、
(2)後遺症を少なくするためにはバイスタンダーCPRが重要であること

アメリカの論文で自宅の死亡率が高く看護施設で死亡率が低いのは、看護施設では熟練した看護師がバイスタンダーCPRを行えるからだと書いてある。またフランスの論文では直接書かれてはいないが、24ヶ月後に生き残った9割が神経学的後遺症のない人であったことも、バイスタンダーCPRが適切になされたことを示している。

救急隊の皆様には、救命講習で是非この2点を数字とともに強調してもらいたい。あなたの身近な人が死亡する3割に入るか生き残る7割に入るかは、あなたの勇気にかかっているのだと。

文献
1)J Am Heart Assoc 2016;5:e002924
2)Crit Care Med 2014;42:2350-7


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17.8.20/8:03 AM