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040905JCSの物差し

作:ひまわりパパ


JCSの物差し 正義の味方 職人消防士への道 夢なき者


 事の始まりはもう3年ほど前の話になるでしょうか。私を納得させる説明を受けていないので、いまだに心にひっかかることがあります。

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 その日、二次当番病院であった○○病院へ交通事故の傷者を搬送しました。現れたのは脳外科のA医師。

 横断歩道を歩行中、右折してきた車にはねられ足の痛みを訴える傷者。酒気を帯びており時折、目を閉じたまま返答することがある。閉眼の理由は車内の光が眩しいという説明。

 ひき逃げ事故であったことから、警察官に事故の状況を細かく説明しているし、意識障害を疑うこともみられないことからJCSI‐0と判定して医師に申し送りました。

「酒気を帯びているなら意識正常ではない。目を閉じるのならII桁でいい。」

 医師の言葉なので、私の勉強不足と思い教育的指導と受け取って帰りましたが、なんとなく納得できるような、できないようなひっかかりを感じました。

 半歩譲って目を閉じる行為を[刺激して覚醒する]と判断したとしても、酒気が意識正常ではないとする理由はなんだろう。はっきり返答できていたし、主訴を説明できています。覚醒の判断を目で計るのは解らないでもない。しかし、臭いで計るのは先入観でしかないとしか思えません。

 A看護士は、夜勤明けの頭はレベル1と言う。またB救命士は、発熱のときは正常な訳がないと言う。この勢いだと傷病者に意識正常はありえないという話に発展しそうです。

 意識をみるのに複合要素を掛け合わさなくてもよさそうに思うのですが。

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 それからしばらくして50歳台の女性で眩暈が激しくて動けないと訴える病者の出動。

 眩暈が激しくなるので目を開けたくないと言う。はっきり開眼拒否するし、苦悶の表情に覚醒がないとは判断できないのでJCSI桁[覚醒している]と判断しました。

 たまたまその日にも当番であった○○病院へ搬送したらA医師が現れました。

 前回のこともあるので多めに見積もってJCSII‐10と申し送ったら今度はとんでもない言葉が返ってきました。

「目を開けないのならIII桁だろう。」

 患者の前で反論するのをはばかり、のどまで出かかった言葉を飲み込みましたが、意思を持って開眼を拒否する病者にIII桁[刺激しても覚醒しない]は間違っている。JCSは意識レベルを計る物差しであって、開眼運動レベルを計るものではないはず。

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 いつか、機会をみはからってこの話題をA医師にぶつけようと思ったら、程なくしてアメリカに渡ってしまいました。

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 これで、この話は落ち着いたように思えましたが、『救急隊員標準課程テキスト』を見ると、I(I桁の障害ともいう、目を開いている)と書かれているではありませんか。

 かたや『救急救命士標準テキスト』を開いてJCSの表を見ると(*何らかの理由で開眼しない場合)というのも書かれているので“開眼”は覚醒の一応の目安であり別の判定も可とも受け取れます。

 なんだか訳がわからなくなりそうなので△□病院の症例検討会で医師の意見を話してもらいました。ところが、それは私の期待していた答えではなく、A医師と同じ判定方法。しかも、こんな言葉まで堂々と唱えたではありませんか。

「開眼昏睡症例ならI桁…。」

 覚醒>開眼であって覚醒=開眼ではないはず。重傷度と一致させられないほどJCSを読むのは難しいものなのでしょうか。JCSはどうでもいいってことなのでしょうかね。

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 かくして私の△□病院への申し送りはこうなりました。

「意識レベル100、開眼拒否、会話は可能です。」

 訳がわからん。


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08.8.7/11:59 AM