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医療従事者として大切なこと

作:サボテン

 私は、北海道のとある救急外来に勤務する看護師です。
 JPTECやICLSのインストとしても参加し、救急隊の方々と勉強させていただいています。
 いつも「笑顔がいいね」と言われます。普段、自分で意識していないのですが、そう言われると嬉しいものです。笑顔で対人関係が和むって嬉しいですよね。
 でも、そんな私も笑顔でいられない時も多々あります。そう、それは忙しい時・・・

 救急搬送される患者さんは、軽症から重症まで様々で、救急隊の方々は出動要請がかかった以上は搬送しなければならないのですから本当に大変だなと思います。それなのに病院スタッフは冷たい態度・・・特に重症患者が絶え間なく搬送され、医師も看護師も手が回らない時は「また来たのか」・・・そんな感じではないでしょうか。
患者さんにとってはたった一度の搬送であっても「こんな事で救急車呼んで・・・」とか「また酔っ払いか」とつい思いながら対応してしまうこともよくあります。
 そういう時って必ずと言っていいほど「忙しい時」です。余裕のある時と対応が違う自分がわかります。
 「忙しい」とは字のごとく「心を亡くす」状態のことです。心をなくしている自分を客観的に見ると恥ずかしい姿です。わかっていながら、なかなか変わっていかない自分がいます。

 「人と出逢う、その一瞬の笑顔を忘れずに」と教えてくださった方がいます。
 その人は、医療関係者ではありません。自動車整備工場の社長さんです。年は50代後半。北海道の小さな町で経営しています。会うとなぜかホッとする、仏のような方です。
 仕事柄、レッカー移動の依頼の電話がよくあるそうです。特に北海道ですから、冬の大雪の中で車が雪に埋まって出られなくなったリ、冷凍庫より低温の状態でバッテリーがあがってしまったり、事故にあったり・・・24時間、いつでも電話が来ます。
 その社長さん、どんな時間でも社員さんにまかせっきりにせず、自らレッカー移動に出向くそうです。
 「自分にとっては色々な仕事の中のひとつのレッカー移動であっても、お客様にとっては大変な出来事なんです。そんな時、笑顔で対応することで、お客様の心が少しでも和らいでもらえることは、幸せなことです。」
 私の心に響いた言葉です。
 そういうお仕事ですから、当然なのかもしれません。でも、自分の立場に置き換えると、看護師として、医療従事者として、当たり前のことがきちんとできているでしょうか。
 自分にとっては色々搬送される中のひとりの患者さんであっても、患者さんにとっては具合が悪く、助けて欲しいと思う大きな出来事なのかもしれません。その思いを心に留めて、対応できることが当たり前でありながら、本当は難しいことなのかもしれません。

 私は看護師になって10年以上のキャリアを持ち、ベテランといわれる立場になりました。でも技術的なキャリアは勿論ですが、人として、看護師として、医療従事者として、当たり前のことがしっかりできてこそ、本当のベテランといえるのではいかと思うのです。
 患者さんと接するその一瞬を笑顔で対応すること・・・勿論、患者さんの死の場面に接するときは状況に応じての対応ですが、その一瞬に接するだけの患者さんでも、当たり前のことがしっかりできる看護師でありたいと思うのです。
 社長さんの暖かな後姿にすぐにはなれなくても、少しでも近付けるようになりたいです。


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