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印象に残った2例

作)ゆうたん

 数々の現場に出ていると、不思議な現場に出くわす事があります。
 そんな出動から印象に残った2例を紹介したいと思います。

病院からの要請なのに転院搬送ではなく急病?

 ある日の午後の事でした。地元の診療所からの依頼で、「具合が悪くなった人を診療所の本院へ運んで欲しい」との通報がありました。通報内容が何か変だなと感じましたが、転院搬送だと考え出動しました。
 うちの署では、地元診療所からの転院搬送依頼の際には、搬送依頼書を提出してもらい、傷病者の情報や病状を一枚の用紙で簡単に伝達できるようにしています。診療所に到着し、搬送依頼書を下さいとお願いしたところ、そんなものはありませんと無碍な返答。傷病者は待合室の椅子に腰をかけています。診療所からの依頼なので、転院搬送だと思っている私たちは狐に包まれたような気持ちになりました。
 通報したという看護師に話を伺うと、診療所へ診察に来た傷病者は、受付終了後トイレへ行った際にめまいを訴えて倒れたとの事。まだ診察前なので、私たちは関係ありません、ただ傷病者に頼まれて通報しただけですと言うではありませんか。
 確かにその日の午後は整形外科医しか診療所には居ませんでしたが、少なくとも医療機関です。医師も居れば看護師も数人居ましたが、聞けば診療所ではバイタル等も測定していないとの事。看護師は、ただ頼まれて通報しただけの一点張りです。当然医師は傷病者には全く接触していないようです。
 医療機関でありながら、そんな対応はないだろうと思い、その場で看護師と少々押し問答のような状態になりましたが、結局その場では診療所は一切の対応をせず、そのまま依頼先へ搬送となりました。傷病者も、「私は病院で具合が悪くなったのに何故?」と、かなり戸惑った様子でした。
 たしかに診療所では一切の医療行為はありませんでしたので、転院搬送にはならないでしょう。結局、報告書には「発生場所は診療所」で、「救急種別は急病」と、なにやら不思議な書類が出来上がりました。

幻の傷病者

 ある真冬の日の深夜、119通報がありました。家の横に、知らない人が倒れていて動かないとの事で、詳細は不明でした。要請先の近所にはスナックがあるので、私たちは酔客が帰り道、道を間違え寝てしまったのではないかと考えました。真冬の雪深い時期でもあり、最悪CPAを考慮し、出動途上の車内は緊張に包まれました。
 現場到着し、通報者である60代の家人に案内され、人が倒れているという場所へ行きましたが人の姿はありません。また、そこには人が倒れていた形跡もありません。その日は雪が多く積もっていたので、人が倒れていれば跡が残っているはずです。
 真冬の氷点下の中です。万が一その辺にまだ倒れていては大変な事になると考え、あたりを探そうとした時、おかしな事に気がつきました。付近の雪面には、一切足跡等が残っていないのです。振り返ってみても、自分達の足跡しかありません。雪の上には、付近に人が居たという形跡を見つける事は出来ません。
 傷病者が空を飛ぶはずはありませんが、人が確かに倒れていたと通報者は訴えます。私たちは万が一の事を考え、付近の捜索をする事にしましたが、やはり足跡すらありません。
 家の周りを一通り探しましたが、人が倒れていた形跡は全くありませんでした。
 再度、通報者に倒れている人を発見した時の状況を聞きました。台所から何気なく外を見ると人が倒れているのを発見したので、慌てて窓を開けて声をかけたが全く反応がなかったとの事でした。その話を聞いている頃には、私たちも「悪戯かな?」と不信感を抱き始めていましたが、通報者にはそのような素振りは全くありません。
 結局、現場引上前に再度家の周りを探して帰署しましたが、通報者は何を見たのでしょうか。その日私たちは、なんとも言えない気分でなかなか仮眠する事が出来ませんでした。


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06.8.1/12:50 PM