OPSホーム>救急隊員日誌目次>060903きっかけ

きっかけ

作)ヘラクレスパパ

 僕は小さな田舎町の消防署に勤めている。職員数は十数名、わが町の救急件数は年間に百数十件程度しかなく、救急車に乗るようになって数年の間は救急出動の度に必要以上に緊張して、普段訓練でできることが現場ではなかなかスムーズにできなかったように思う。そんな僕も標準課程を修了し気が付けば後輩も増えていた。僕はいつしか救急隊長として出動する機会も増え落ち着いて救急活動をこなせる様になっていた。

 そんなある日上司から救急救命東京研修所へ入校の打診をうけた。救急救命士の資格取得は目標としていたので学力的な不安もあったが入校が決まったときは嬉しかった。職場の皆や家族の協力のお陰で事前勉強・研修所での生活も無事に乗り切り救急救命士の資格を取得した。

 しかし、救急救命士の資格を取得した直後は達成感と満足感で自分の成長は一時止まったように思う。最新の知識と技術を学んで来たという気持ちと精一杯努力したという自負が、職場の方々や家族の協力があって初めて取得できた資格であり、周囲に対して研修所で学んで来たことを還元したいという気持ちと重なって、救急訓練の時に周囲に広めようと努力したが、職場の中では各自の役割があり、なかなか上手くはいかなかった。それでも後輩や同僚に対して地道に還元を続け、職場の中の雰囲気では救急訓練に関しては僕に一定の裁量を与えてくれていると思えるようになった。でもそれも、時間が経つにつれ救急救命士の資格を取得したという満足感だけを残し、自分の成長はいつしか止まっていたように思う。

 自分を変えるきっかけとなったのは、ある救急勉強会だった。JPTECは何度か申し込んだが選に漏れていた。その勉強会は以前から誘われていたが勤務の都合も合わず参加していなかったのだが、あるとき参加の機会を得たので行ってみると何よりもモチベーションの高さに驚いた。体験型の勉強会であったこともまだJPTECを受講していなかった僕には新鮮だった。しかし、それ以上に自分達の休みを利用して全て自腹で200Km以上も離れた地まで教えに来てくれるそのモチベーションと活力に驚いた。また、スタッフの半数が標準課程の方々だったことに感動した。

 救急隊はチームであり、どれだけ優秀な救急救命士がいても一人では何もできない。標準課程修了者の知識・技術の底上げこそが救急隊活動の質を上げる。我が職場では標準課程修了者にも除細動などの特定行為の訓練をさせ、一緒に行った隊員達も特定行為の手技を覚えていることにより救急救命士の現場活動にミスがないように二重のチェックができる体制、そして救急救命士が指示しなくても隊員から○○しますか?と救急救命士の活動を先読みして準備がなされる体制を目指してきた。その勉強会に参加していたスタッフの姿は『標準課程修了者でも特定行為以外では救急救命士と変わらず救急活動ができる』と言っているようにみえた。

 その勉強会がきっかけとなり、僕はJPTECを始め勉強会に無理してでも参加するようになった。参加していくうちに人との繋がりができ、人との繋がりにより触発されさらに自分を磨くことができた。自分もその勉強会で出会った方々のように常に成長を心掛ける人間でありたい。僕は気を緩めると楽な方に向かってしまう精神的に弱い人間である。だからこそ、このきっかけを大切にしたい。あの頃の僕のようにきっかけが掴めずにいる方もいらっしゃるかもしれません。今度は僕自身がそういう方々のきっかけになりたい。


OPSホーム>救急隊員日誌目次>060903きっかけ


http://ops.umin.ac.jp/

06.9.3/10:55 AM