OPSホーム>救急隊員日誌目次>061005二日酔い注意

二日酔い注意

作)サケトバ

 普段救急活動を行う中で、みなさんは「匂い」に気を使っていますか。二日酔いで余程口臭がきつくない限り、さほど気にはしないでしょう。

 私の所属には、にんにくの大好きな隊長が居ます。いつもほんのりとにんにくの香ばしい香りを漂わせている人だが、ある朝彼が事務所に入ってきた途端、皆息を呑みました。かなり離れていても、はっきりと分かるにんにくの香りが漂ってくるではありませんか。彼はちょっと変わった人でもあり、人の言うことを全く聞かないので、いつもは誰も注意しませんが、流石にこの日は皆で注意します。しかし本人は「そんなに匂うか?」などと意に介しません。そんな時に限って朝一番で救急要請が入ります。工事現場で40代の男性が指を切断したとの事。にんにくの匂いを気にしつつ出動しました。

 間もなく現場到着。傷病者は移動中の鉄筋に指を挟めたそうで、幸い他には外傷はなくバイタルも安定。切断した指も綺麗な状態であったので再接着の可能な病院を選定。「いやー参った参った。この指くっつくかなぁ。」等と元気な傷病者。

 しかし現場出発してからしばらくすると、傷病者の元気が急になくなってくるではありませんか。モニターを確認しますがバイタルに変化はみられません。指を切断した精神的なショックが現れてきたのか、どんどん静かになります。受傷時にどこかぶつけたのだろうかと、観察もより密に行います。そのうち私たちの問いかけにも口ごもるようになってきました。

 傷病者が時折、痛みに耐えるのとは異なる顔をしかめるような仕草をするようになって、はたと気づきました。私たち隊員はにんにく臭プンプンの隊長と一緒に居たので、すでにほとんど匂いを臭いと感じる事なく活動していましたが、広い事務所でもはっきり分かる匂いです。車内にどれほど匂いがこもっていた事か・・・。

 「ちょっと窓を開けますか?」と傷病者に問いかけると、救われたという表情をするではありませんか。窓を開けて外の新鮮な空気が多少入ってくるようになっても、強烈なにんにくの香りは私たちを苦しめます。病院に到着する頃には、隊長以外は皆青い顔をしておりました。帰署中も窓を開けていたのですが、車内には匂いがしみついていたようでした。

 さすがにこの日は署長にも厳重な注意を受け、この出動以後乗務を外されました。後日、傷病者の関係者から苦情を言われたのは言うまでもありません。

 この一件がきっかけで、救急搬送された事がある顔見知りの人に、車内で気になった匂いを聞いてみることにしました。このにんにくの事例は極端ではありますが、「お酒の匂い」「煙草の匂い」が上位でした。中には車内消毒後すぐの搬送だった為か「消毒液っぽい匂いがして不快だった」との意見もありました。小さな消防に勤務していますので、救助訓練の途中などに救急要請があれば汗も拭かずに出動する事がありますが、「汗の匂いが凄く気になった。」という人も居ました。

 消防という職業柄(?)呑みすぎる事も多く、朝の交代時に「昨日飲み過ぎたんじゃない?匂ってるよ。」等という会話が交わされる事も目にしますが、具合の悪い傷病者にとっては不快極まりないものなのでしょう。煙草の匂いもそうですが、呼吸の確認や瞳孔を診る際等には、顔を近づける事も多いので、具合の悪い傷病者にとってはちょっとした匂いも、健康な人以上に気になるものなんだと改めて認識させられました。

 「接遇」等と称して、相手に対する言葉遣いや態度を学びますが、ちょっとした口臭の気遣い等も態度以上に重要な事だと考えさせられました。煙草の吸いすぎとお酒の飲みすぎにはお互い注意しましょう。


OPSホーム>救急隊員日誌目次>061005二日酔い注意


http://ops.umin.ac.jp/

06.10.5/3:52 PM