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力を貸して

作)みかん

 ある日の夜、私はいつ終わるとも知れない外来患者をさばいていました。インフルエンザが猛威を振るっている時期で、みな症状は同じ、鼻の奥に綿棒を突っ込んで、検査キットでインフルエンザを確認して、カロナールとタミフルを出して。あまりに患者が切れないので、午後9時くらいに無理矢理外来を止めて夕食を摂ってきたほどでした。

 そこへ救急車が入るとの連絡です。
(おいこの患者の列見えるだろう、勘弁してよ)
と言いたかったのですけどそんなことも言えず、連絡では軽症のようなので診察を続けていたところ救急車が到着しました。バタバタと大きな足音がしてストレッチャーが到着。あれ、心臓マッサージしている。

「ちょっと、話が全然違うじゃない」
病院実習で教えた救急救命士がたまたまいたので問いつめると、
「病院には連絡したんですよ。でも電話を回されている途中で病院に着いたんです」
(ここの病院、どんな電話でも守衛が取るから時間がかかって困るんだよ)
と考えている暇なく患者を診察。モニター付けてちょっとだけ心マを中断、フラットを確認して心マ再開。私はバックバルブマスクを持ちつつ
「看護婦さん、点滴とって。カルディオバージョン持ってきて。挿管するよ」
こっちは言うだけですからすらすらと物品が出てきますが、ここは救命センターでもなく、ましてや看護婦たちはたまたま当番に当たっただけ。二人組になってあちこちを掘り始める始末。

「先生、手伝いますか」
猫の手がありました。自分より救急隊の方が救急外来のもののありかを理解しているのです。
「助かる。今言ったの用意できるかい」
「わかりました」
あっという間に挿管準備完了。スタイレットも好みの角度に曲げてあります。
喉頭展開。ちょっと見えづらい。
「喉押して。入った。スタイレット抜いてくれるか」
完璧なアシストです。
「めんどくさい病院実習もいいことがあるんだな」
と言うと救命士も嬉しそうに笑いました。

 換気を確認して、バックバルブマスクをその救命士に持ってもらい、小さな人工呼吸器を接続してふうと一息。看護婦が3回穿刺して確保に成功した静脈路からボスミンを投与したところ幸運にも自脈が出現したためICUへ移動となりました。

 私たち医者が救急隊に求めることはいろいろあります。正確な情報提供、的確な処置、患者への愛護的な対応など。でも一番嬉しいのは力を貸してくれることです。救急外来では看護婦は多いところで3人、普通は2人しかいません。大変な症例でチューブ類をいっぱい入れてモニターもいっぱい付けて他の部署にも連絡して、となると手が足りません。その時には救急隊員が物をちょこちょこっと用意してくれるととてもありがたい。また症例によっては救急外来から病室に移る時にも患者の移動が必要になります。他件での出動や署での報告書作りが待っているのは分かりますが、できれば少しだけ救急外来にいる時間を延ばして、非力な私たちを助けて下さい。


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06.12.9/8:29 PM