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居酒屋酔談

作)溶けた雪だるま

 ちょうどさ、挿管課程で学校に入るんだというやつがいたんだ。して、飲んでる時の話で、
「挿管は本当に必要なんだべか」
という話になったんだ。一緒に飲んでた一人が
「換気できればいらねえんでねえの?バッグバルブマスクで換気できねえから挿管やりたがるんでないの?」
って。消防隊と乗り換えしてる救急隊員が、救命士を前にして管巻いてたんだわ。
「俺は今まで換気できなかったことはない!」
って豪語していたんさ。
 俺もね,
「おお、そうだそうだ!」
って心の中でこぶしを突き上げてたわ。

 俺は全身麻酔で手術した時挿管された経験あっけど、抜いた後あんなに喉痛くなるものとは知らんかった。あれならしないほうがいいって。手術の後しばらく痛かったも。

 挿管ってさ、出来るのはそれ以外の方法がない場合だけでしょ?挿管以外に気道確保の方法がない場合。それって、実際どのくらいの確率であるもんなんだべね?たしか新しいガイドラインでも推奨はされていないんだべさ?それなのに高い金かけてまで資格者養成しなきゃならないんだべか?
 それに、技術維持の再教育の問題。まだ、始まったばかりで、どこもやってないっしょ?30症例だけで終わっちゃう人がいっぱいいるんでょ?何百という症例に挿管してるっていうベテランの麻酔科医ですら難しいんでしょ〜挿管ってのはさあ〜最初の30症例だけで技術が維持できるもんなの?ありえねえよなあ〜。

 そして薬。薬は確かに効くなあ。喘息でヒューヒューゼイゼイ苦しんでる人も、薬で症状収まるもんね!
 前にCPAでERまで運んだあと院内協力で残っていたら、平らな心電図モニターの波形が薬を使ったら、なんだか波形に変化が出てきて、そら来た!ってドッカ−ンと電気ショックやったら洞調律波形が出てくる。
 でもそれって心臓が動いただけでしょ?ERだとすぐに色々な機械や次の第2第3の薬を使って継続処置ができっけど、現場だと助かったとは言えない場合のほうが多いんじゃないのかな。救急隊の場合はそのままの状態で、そこからさらにERまで搬送するわけで、搬送途上にまた止まってしまったら、第二第三の薬は使えないわけでしょ?
 期待しちゃうよね、家族は、心臓動いたら。でも、期待した分、余計につらい思いをするんじゃないの。

 現場滞在時間が延びることが逆に致命傷になっちゃうことだって、あると思うんだけど。
 薬を入れるにはルートを取らなきゃならない。虚脱した血管を探してルートをとるのは難しくて時間もかかる。額に汗しながら一生懸命やってやっとルートの確保ができる。そんな時間があれば、救急車は病院に到着できたかもしんない。
 今までだって車内収容して発車前にいろいろやっていたら、救急車のドアを開けられて
「何やってんだ!早くいけ!」
って怒鳴られたことが何回もある。
 いつだっかかは俺は機関員で、後ろの救命士たちに
「早く行くべ」
って言ってるのに
「まだだ」
って何回も止められた。
 これがさ、CPAの傷病者の家族だったら、う〜ん、インフォームドコンセント取れるんだべか。点滴とか薬剤とか、その行為の正当性は分かってもらえないんじゃないべか?
 現場では家族も気が動転してっから
「なんでもやって」
と言うと思うけど、たとえば残念な結果になった場合、通夜の席なんかで
「救急隊にもっと早く運んでもらってたら、点滴やら薬やらしないですぐ病院に行っていれば助かったかもしれないのに」
と思われるんじゃないか?

 挿管だ、薬剤だって、なんか盛り上がってっけど、そんなことより先にやれる事まだまだあるんでないの?
 いつだったか、事後検証で同じような症例があって思い出したんだけど、俺らは永久気管瘻から気管カニューラが外れかけてたって戻すわけにいかないっしょ。外すのもだめでしょ?現状維持しかないっしょ。家族の手を使うって奥の手もあっけどさ。挿管ができる救命士がいてもどうにもならんだべな。挿管救命士だって、カニューラをちょせるのは心肺停止の時だけでしょ、俺らは気管内の吸引もできねえし、喉頭蓋を越えちゃったら俺らはアウトなんでしょ。医学的にはやった方が良いんだろうけど、実際にはできないっしょ。
 管入れなくても吸引だけで気道が開通することだってあり得るっしょ?

 だから、言いたいのは,挿管前にやることはいっぱいあるんだってことなんだわ。
 挿管救命士養成も必要かも知んない。でも気管を塞いでいるカニューラをちょせるとか、痰詰まりの人の気管内吸引ができるとか、そういう小さいけどお金もかかんなくて、今苦しんでいる人を助ける方法がいっぱいあると思うんだ。

 気管口といえば、口にマスクを当てて一生懸命換気している人もいた。本当だよ。そこにマスクを当てても換気できないと思うんだけどなあ。そんな救急隊員もいるんだってことさ。

 小さな事でも助ける方法だよ。挿管できて薬も入れれる救急隊員もいれば、BLSすら満足にできない救急隊員もいるってこと。頭部後屈による気道確保だけだって、なかには助かる人もいるかも知れないべさ。

 まずはすべての救急隊員が確実にBLSが出来る事。当たり前の事が出来ていない以上、これが一番大事なんでないの?この養成はお金もかかんないですぐに出来る事でしょ。


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06.12.29/10:26 PM