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070704病院実習

作)自転車小僧


自主勉強会開催秘話 何事も経験 病院実習 頼まれ事は引き受けよう


 4年前、自分の住む小さな田舎町の話。

 救急救命士の資格を取得後、地元病院で病院実習をお願いすることになった。消防職員が地元の病院で実習を行うのは今回が初めてで、どのような内容で実習をすすめたら良いか、病院、消防お互いが手探り状態で打ち合わせを始めた。実習を受け入れる病院も、救命士の実習をどう受け入れて良いか悩んでいた。また、救命士という資格の認識が低く、どういう処置が可能であるかも知られていない状態であった。

 救命士の病院実習関係の書類を読み直し、近隣町村で実際に病院実習を行っている消防の実習方法を参考に話をすすめた。打ち合わせの中で「実習の細目にある全ての項目を実施するのは難しいね」と病院からの回答。実習の細目を全てクリアすることだけが実習の目的ではなく、お互いの職場の「顔の見える関係」の構築も実習の目標であるという事も伝えた。実際に実習をさせてもらい、問題点等を洗い出そうということで合意し受け入れてもらうこととなった。

 実習初日、朝のカンファレンスから参加させてもらった。そのカンファレンスの中で、看護師さん同士が話す言葉が、結構わからない。わからない言葉は、メモして後で聞くようにした。聞いてみると、知っている内容の事を別な言葉を使っていることが多かった。これは、そこそこの病院によって呼び方が違ったりするとのことであった。「郷に入れば「ひろみ」に従えですね」と、おやじギャグを飛ばしながら実習させてもらった。

 病棟を廻って入院患者さんのバイタルチェック。さすがに小さな町だけあって、顔の知っている方が多かった。「あら、病院に異動したのかい?」と聞かれたり、「消防の人が実習するんだね」と励まされた。一番驚いたのが「あら、新しい先生かい?よろしくお願いします。」と頭を下げられた時だった。実習中は白衣を着ているので、ぱっと見た感じ医者に見えたのだろう。知っている方だったので「いやいや消防の○○ですよ、△□さん」と話したら、「あらま本当だ。消防の○○さんかい、全然わからんかった」と話してくた。白衣の威力は恐ろしい。

 寝たきりの患者さんの血圧測定では、長期臥床のため痩せていて、血圧計のマンシェットを巻くものかわいそうなくらいの患者さんも結構いた。なかでも手こずったのが、血圧が低く、なおかつ不整脈を持った患者さんの血圧測定であった。2~3回測って結果がばらばら。変な癖がついててどんな患者さんにも一定の速さで減圧したためであった。教科書に載っている血圧測定の方法で「一拍毎に2~3mmHg減圧する」というのが正確な血圧を測る基本だと痛感させられた。

 入院患者さんに感謝されたこともあった。それは女性の患者さんで、自分が病棟に行くといつもニコニコ笑顔で迎えてくれた。得意の営業スマイルで「調子はどうですか?」なんて声をかけると、その患者さんも笑顔で応えてくれた。残念ながらその患者さんは、脳に障害があり話すことができず、顔の表情で何かを読み取らなければならなかった。自分が病室を出て廊下を歩いていると、付き添っていたお母さんが俺を呼び止めて、「実はうちの娘、好きだった彼氏にあなたがそっくりで、あなたに会うのを毎日楽しみにしているのよ。あなたが実習に来てから、すごく元気になったんだよ」と話してくれた。俺の笑顔で元気になってくれるなら、実習に来たとき病室にお邪魔しますよと伝えた。俺ってそんなに、いい男?

 一般外来の処置の補助もさせてもらった。こちらでも、知っている方がたくさん受診しており、会う患者さんに「消防の人も病院で実習するんだね」と声をかけられた。「救命士という資格を取ったので実習させてもらってるんですよ」と答えると「救命士って前にテレビで聞いたことがあるね。うちの町にも救命士がいるんだね」と話してくれた。実習当時、町民にはまだまだ知名度の低かった救命士、実習を通じて町民に救命士の存在を広めることにも一役かうことになった。

 無事実習も終わり、病院職員と消防職員で懇親会を兼ねた反省会を行った。その席では「今回の実習を通じて職員間の距離は確実に近いものになった」「救急患者さんを病院に搬入したあとの院内協力してもらうのに、どこに何があるか場所を知ってもらいたい」「共通の言葉で話しができるようにすべき」「もっとこういう機会を増やして「顔の見える関係」を作ったほうがいい」など建設的な意見がたくさん出た。この意見は、病院からの期待の裏返しでもあった。この事を踏まえて、救急救命士以外の一般救急隊員も実習を受け入れてくれることになった。

 固定観念で、小さな田舎町の病院で実習しても「たいした事ができない」と決めつけるところがあったが、そんなことはなく「小さいな田舎町の病院」だからこそ出来ることもたくさんあるんだなあと実感した。実習をお願いする前は、病院と消防の職場間の繋がりがほとんどない状態だった、実習を機に繋がりができ、救急患者搬入等がスムーズになった。病院、消防とも少人数の活動は同じである。少ない人数でも協力することで活動を効率化し、一人でも多くの患者さんを救命できればと思う。


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08.10.12/10:23 AM