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081004胸骨圧迫の質は資格じゃない

作)ユーフォニアム

 つい最近の事ですが、とある町のとある病院で「確実かつ有効なCPRの習得」を目的とした研修会にスタッフとして参加し、その中の「胸骨圧迫コンテスト」というブースを担当することになりました。コンテストの実施方法は、最初に練習で90秒間CPRを行い、次に順位評価用のCPRを90秒間測定するというものです。コンテストには病棟勤務の看護師、訪問看護業務の保健師など様々な職種の方に参加していただきました。

 採点を終え順位を集計していた時、『ん?何か面白いな、この結果!』と声を上げてしまいました。訪問看護の保健師さんたちはダントツの高得点で、かなり下がって病棟勤務の看護師さんたちの順だったのです。この順位は何を意味しているのか考えてみました。

 多くの病棟看護師は「急変は滅多にない」「急変時は医師が対応するので」と言います。これは自分が救命士の生涯研修での病棟実習やCPA搬送時の経験や、BLS研修で受講看護師に実際聞いた話で、あくまで自分の周りの限られた人たちのことなので、「いや、そうではない」というケースもあるかもしれません。

 訪問看護には、過去に1度だけ救急救命士の就業前研修で同行した事があります。僕にとって訪問看護とは、医師と同行する往診とは違い、独居老人や自力通院できない患者さんに対し「看護師のみで処置などを行う」という認識です。いつでも医師に連絡を取れる体制があるとはいえ、医師不在という緊張感の中で勤務している訪問看護師にとって「CPR」とは習得しなければならない手技なのでしょう。

 保健師さんたちの高得点に驚いた僕は、研修会が終わったあと同僚と同じコンテストをやってみました。日常では予防業務や警防業務に追われる『兼任救急隊』たちの腕が鈍っていることを恐れていましたが、嬉しい裏切られ方をされほっとしました。

 資格ごとに詳しく結果を見てみると人によってバラツキつきがあり、なおかつその幅が大きいのはなぜでしょう?もちろん個人の「センス」も要因の一つだと思います。しかしそれより大きな理由は『モチベーション』だと思います。

 僕は最近、近隣で行われているICLSにスタッフとしての参加や病院主催の講習会を聴講する機会が増え、そこに参加する他地域の消防職員や医師・看護師などと顔を合わせる事が多くなりました。今回も会場で参加者を見ていると、そこが知らない病院で救急搬送など皆無であるにもかかわらず、「前にも会ったことあるな」と思う参加者が何人もいました。そういう人たちの点数は一様に高いのです。これは一般市民でも同じで、胸骨圧迫が100点、換気も100点という方も中にはいらっしゃいます。その方々の多くは、自発的・積極的に学ぼうとする方々です。救急隊員だからCPRが上手、看護師だからCPRが苦手、保健師はCPRなんて素人、と言う考えは間違っているという事が証明されたと思います。

 救急隊や病棟では異なる資格者がチームとして活動します。その時、患者を目の前にしたメンバーが目指すところ同じです。皆さんも意識を高く持ち、時間が許す限り体を使い、救命率向上のためのトレーニングを頑張っていただきたいと思います。


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08.10.4/2:20 PM