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100516仕事の意味

作)うりぼう


100516仕事の意味 100516先生!大変です!救急車を呼びますか!! 100417わかりやすく<伝える>技術 ブリッジマンの技術 090509不機嫌な職場 090209頭痛の話 090106日常生活の法医学 081205なりたい人、なれなかった人。 081104国家試験"裏"必勝法?!  061205最大の試練 051031看護師と救急隊 


 それは、自分の仕事に意味を見いだすことができた出来事でした。

 日々の業務に、毎日、毎月、毎年繰り返されるたくさんの仕事に、すっかり意味を見いだせなくなっていた私にとって、消防で働くことの真価を改めて強く認識させられる出来事だったのです。

 その日も私はいつものように出勤し、朝から淡々と始業時点検を行い、たくさんの細々しい書類に目を通し、いくつかの決済文書を仕上げ、気がつけば夕食の時間を迎えているといういつもの一日を過ごしていました。

 気がつけば二十年以上、この職場で、変わらぬ景色の中で、働いてきました。高校を卒業してすぐに勤め始めたこの職場。消防の仕事がどういうものなのかも知らず、与えられた業務をただ一生懸命にこなすだけで精一杯。そんな状態で初めの一年はあっという間に過ぎ去って行きました。

 採用後二年目の春に、消防士としての専門性を身につけるため、消防学校の初任教育課程に入りました。まだ学生気分が抜けきらない多くの仲間たちと共に、様々な訓練に日々汗を流し、毎日容赦ない睡魔と戦いながら(ときには戦いを放棄して)幅広い分野の勉強に励みました。そうして初めて、校訓にあった「職責の自覚」ということをようやく理解できたのだと思います。ただ、本当の意味でその職責を知ることとなるのは、再び所属に戻り、命の現場に否応がなく赴くことが日常となってからのことでした。

 その日も、勤務中唯一の楽しみである夕食を食べ終えてから、私はひとり考えていました。今の仕事に、この繰り返される毎日に、どれほどの意味があるのだろうかと。他人が聞けば、「何を今さら、そんなくだらないことを言って」と一蹴されてしまうようなことですが、空一面に広がった灰色の雲のようにそれは私を覆い、光を遮っていたのです。そしてそのまま晴れ間を見ることなく仮眠時間となり、静かに翌朝を迎えました。

 いつもと変わりのない勤務を終えようとしていたその時、不意に出動を告げるベルが鳴り響きました。それは、日常の仕事の一部でしかない一件の救急出動として、特別な印象を残すことなく終えられる筈のものでした。たとえそれが、心肺停止の現場であってもです。しかし、その現場での出来事は、私に強烈な印象を与えただけでなく、自分が二十年以上やってきたこの仕事に大きな意味があることを目に見えるかたちで知らしめてくれたのです。

 現場に到着し、先行して室内に入った私の目の前には、一見して心肺停止を予想させる顔貌で倒れている傷病者の姿がありました。取り囲むようにして佇んでいた同僚たちは為す術を知らず、ただ不安げに事の成り行きを見守っていました。私たち三人は全力を尽くして救命処置を行いました。そしてその結果、私たちにとっては初となる現場での心拍再開を得ることができました。この体験は、言い表せない程の達成感と充実感を私に与えてくれました。

 この出来事が、自嘲気味になっていた私に消防で働くことの価値を、「仕事の意味」を改めて教えてくれたのです。


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10.5.16/5:48 PM