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100814救急車の適正利用,本音は?

作)オポジション


 ここ数年,救急車の適正利用が多くの場所で聞かれる。現場に赴く救急隊員としては賛同する意見が大半を占めることであろう。むしろ異論を唱える輩が不思議なぐらいだ。そのようなときだからこそ1つ問題提起してみたい。

 初冬の頃,最近は温暖化の影響だろうか暖かい日が続いていたが,この日に限って朝から冷え込みが厳しかった。数々の出場をこなし,ようやく昼ご飯にあやかっていたとき「55歳男性,右半身麻痺。」との出場指令が無機質な音声で流れた。要請のあった自宅へ到着,家族と接触し状況聴取しながら傷病者と接触した。家族から「起床時に頭痛を訴え,嘔吐した。朝の冷え込みが厳しかったため,風邪をひいたと思い寝かせて様子をみていた。昼食時間になっても起きてこないので様子を見にいったところ,変な口調だし右手足が動かないようなので,申し訳なく救急車を呼んだ。」と聴取した。

 察しの良い救急隊員なら気が付くであろう。この傷病者が何を患っているのか。このあと必要な観察処置を行い,脳外科専門病院へ搬送することとなり,搬送確認書には「脳梗塞」の診断名が記載され戻ってきた。

 日本脳卒中協会はCMなどで「このような症状がある場合は脳卒中の可能性があります。すぐに救急車を呼びましょう!」といった広報がなされている一方,救急車の適正利用が広報されるといった,見方を変えると相反する内容が世の中に発信されている。発信する側は,それぞれ別の意図をもって発信しているのは皆さんが知っていることであろう。しかしながら,受け取る側は,そんな意図は理解し得ない方もいるのが現実である。現に救急車の利用方法は以前よりも改善されている感じも実感としてあるが,依然として変わらない(変えない)方も大勢いる。問題は,救急車の適正利用のため救急車が必要なのにも関わらず呼べないことである。

 今回の症例も後から家族に聞くと「ただの風邪で救急車を呼ぶのは気がひけた。しかしながら,吐いたときには呼びたいと思った。もしや風邪ではないのではと感じたりもした。」など,こちらとしても気がひける内容であった。本音は,どうして呼ばなかったのだろうという悔しささえ覚えるほどであった。

 社会が作り上げた悲しい現実である。元々は救急車を利用する方々のモラルなのかもしれない。しかしながら,現場に赴く救急隊員の1人として適正利用を訴える以前に何か手はなかったのだろうか?と疑問を投げかけたい。多くの学識経験者等が出した結果である。僕の疑問は想定の範囲内であろう。そうであるとしても,僕は社会に提起し続けていきたい。いや,やらなくてはならない。現場で働くものとして。


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10.8.14/9:04 PM