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110410サッチの謎

作)DIYマン


 何年かぶりに大晦日と元旦と家族で過ごし、新年初出勤の日。よし、今年も一年がんばろうと、清々しい気持ちで出勤。朝の勤務引継を終え、資機材の点検を始めた10分後、この年の自分にとっての初出場の指令が流れた。正月気分が吹っ飛んだ。??町??宅急病人、75歳男性、吐血。なんと、私の親類の家だ。3年前の異動でここに着任してから、挨拶に行こうと思っていたのに、忙しさを理由にまだ行っていなかったことを思い出しながらの出動であった。

 現場到着すると、しばらくぶりに見た親類のその人はやせていた。奥様に状況を聞くと、1年前に喉頭がんで手術を受けたとのことであった。日常生活は起きたり寝たりであるが、食事も摂れるし、酸素に頼る生活はしていないという、癌の告知もしているので、何を本人に聞いてもかまわないといってもらえた。

 まずは、自分が誰であるか伝えると、10kg以上太ってしまった私の顔でも見てすぐにわかって喜んでくれた。意識清明。しかし、声が出ないので、のどにマイクのような道具を押し付けて声を発している、GCS

 E4+V5+M6=15点。Vは5で正しいかどうかはわからないが5とした。主訴は前胸部痛。呼吸16回/分、脈拍95回/分。体温36度。血圧108/70mgHg(ちょっと低いな)瞳孔4mm、対光反射あり。SpO2

 97%、心電図洞調律。吐物は暗赤色(チョコレート色)の塊がこぶしくらいの量であった。現場到着までの車内で、状況によってはドクターヘリを要請してくれと隊員に告げていたが、血圧が低いのが気にはなりつつも、天候も悪かったので救急車で搬送することとした。搬送先はかかりつけの医療機関とした。

 到着までおおよそ20分。バイタルも安定したままの搬送であったが、搬送開始からちょうど10分が経過したときSPO2が90%に低下した。(思ったより出血量が多かったか)と思いながら隊員に酸素投与を指示、フェースマスクで5L/分で4分後には99%まで回復。その状態を保ちながら、病院到着できた。病院には電話で状況説明はしていたので、スムーズな対応で受け入れてもらえた。

 少々の安堵感を感じながら、引き上げようとした時であった。看護師さんに呼び止められた。「救急隊長さん、酸素は何リッターで投与してきたの?」電話で伝えたはずなのにと思いながらも、「5リットルです」と答えた。すると「何を使ってどこから?」というのである。私の頭の中は一瞬何のことだかわからなくなり(?????)の文字が流れた。看護師さんの次の言葉は「マスクじゃサッチ*上がらなかったしょ」ますます(????)であった。

 そこで、もう一度患者さんを診ると、上半身の着衣がとられていた、その喉には穴が開いていた。(このことか!)「勉強になりました。今後気をつけます。ありがとうございました。」とお礼を言って引き上げた。

 自分の観察力の甘さを痛感し、ちょっと悔しい思いと、フェースマスクでもSpO2は99%まで回復したのはなぜだろうと不思議に思う出動であった。おじさん、元気になってね。

 

 *サッチ:サチュレーション Saturation(=酸素飽和度)


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11.9.18/8:32 PM