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110410ハプニングが成長の元

作)DIYマン


 指令が流れた。現場は到着まで15分以上かかる、山間部にある農家の一軒家だ。

 農家の家は敷地が広い。道路からしばらく入ったところに家があった。玄関は高さ90センチくらいのラティスで広く囲まれていた。そのうちのラティス1枚だけが開閉できる状態であった。玄関は風除室付で棚が組んであり狭い。玄関は引き戸、左側しか開かない。はずせそうにもない。そこを入ったその右は鉄製の柵が広く組んである、この時点で犬か猫を飼っていることは想像できた。患者はさらに奥の部屋にいるということで廊下を進むと、布団を敷いた上で寝ている人が見えた。近づくと向かい合わせで2人が寝ているではないか。歩きながら家族に「患者さんは一人ですよね」と確認すると「はい」というのである。不思議に思いながらさらに近づくと、なんと壁一面鏡張りでその前に寝ていたのを、遠くから双子が向かい合って寝ているように見えたのである。

 患者が一人であったことに一安心し観察を始めると、今度は小型の犬が3匹まとわりつくのである。私は犬好きであるのだが、なんとも観察が進まない。犬も家主の身体を心配しているかのようにも思えたが、ここは犬にもその患者さんにもかわいそうだが家族にお願いして犬を別の部屋に移動させてもらった。患者は60歳代男性。意識清明。主訴は発熱、喉の痛み。既往、現病なし。バイタルサインも異常なし。搬送先も決定し、屋外に用意したストレッチャーまでの移動のためスクープに乗せ屋内を移動し玄関から出ようとしたときのことであった。

 「あっ!!!」

 という隊員の声に私はいったんスクープごと床に降ろさせ、

 「どうした?」

 と尋ねると、

 「踏みました」

 とちょっと悔しそうな顔。そのそばにはペット用のおしっこシートがあった。そう。隊員の靴下は濡れていたのである。現場で替わりの靴下を携帯しているわけもなく、その場でその靴下を脱ぎ、足をぬぐいポケットに入れた。

 狭い玄関を何とか抜けると、心配していたラティスの柵。どう交わすか考えたが、壊すわけにもいかず、入り口からは復員が狭く出すことができない。患者さんは大柄の人であったがやむを終えずラティスの上を越えることとした。細心の注意を払い何とかそこを越えたとき私の腰が悲鳴を上げた。しかし、まだ病院に着いたわけではないので何もなかったように繕うも身体が自由にはならず、隊員に負担をかけながらもなんとか搬送開始できた。

 帰りの救急車に乗り込むと片方だけ靴下を履いた隊員にほかの隊員がかけた言葉が

 「??さん石田?一みたいだね」

 その言葉を聴いた隊員は、ちょっと悔しそうでムッていた。

 

 救急出動は予想不可能なハプニングにたくさん出くわす。片足だけの靴下。いつも気をつけているのにまたやってしまった腰痛。

 いちいち腹を立てていては勤まらない。こうやって私も人として成長させてもらったんだなと、若い二人を見て懐かしく思う。


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11.9.18/8:45 PM