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120610 真っ白な車

作)みいたん


 職業柄、「白い車は?」と問われればすぐに救急車が思い浮かびます。

 私の住む地方は北海道の中でも雪の多い地域ですが、ここ数年は雪害とも言われるような異常なドカ雪が年に数度は降るようになってきました。

爆弾低気圧と呼ばれるものが近づいていたその日も明け方前から風雪が強く、出勤する頃にはかなり荒れた天気になっていました。こんな日は必ずと言ってよい程何かがあり朝から憂鬱な気分でしたが、その予感は不幸にも的中してしまうのです。

お昼前に隣町の応援に出動する事になりましたが、降り続く雪で除雪が追いつかず、道路はあちこちで寸断されており現場到着まで普段の3倍近い時間を要しました。幸い傷病者は一般負傷の軽症でしたが、搬送先は通常でも1時間はかかる距離にあります。国道までもが通行止めになっているという情報を得ており、収容までどれ位の時間がかかるのか想像もつかない状態でした。

道路上に立ち往生している車が多数ある中、除雪が終わったという情報を基にルートを選定し、なんとか時間はかかったものの国道に無事辿り着き病院へ向かう事になりましたが、国道は大渋滞中。

吹雪模様で視界は良くありませんし、渋滞に巻き込まれている車は全く救急車に道を譲ろうとしてくれません。ライトでパッシングしマイクで何度も叫んでようやく道が開けますが、その先はまた同じことの繰り返し。雪で狭くなっている道路で退避スペースもあまりないものですが、救急車に全く気付いていない様子の車両が多数ありました。雪は音を吸収するようなのでサイレン音が小さく聞こえ、窓を閉めきってヒーターを大き目にかけているから救急車に気付くのが遅いのだろうと想像していました。

辺りは薄暗くなってきましたが、なんとか病院にたどり着き引継を終え救急車に戻り、眼を疑いました。なんと赤色灯に雪が尋常でない位こびりついていたのです。雪の降る地方の人には経験があると思いますが、走行しているとフロント部分に雪が貼りついてしまいます。吹雪の中長時間走行していたことで、救急車のフロントや赤色灯に驚くほど貼りついていたのでした。

当然、赤色灯は回っているのですが正面から見ると赤い光は見えません。スピーカー部にも雪が厚く貼りついていたのでサイレン音も小さくなっていたでしょうし、マイクでいくら叫んでも他の車には聞こえにくかったはずです。ライトの灯りもかろうじて見える程でした。

こんな状態で走行していても、渋滞に巻き込まれている車には、後ろから近づいてくるライトに気付いたとしても救急車だとはすぐに分からず「マナーの悪い車が近づいてきたぞ」位にしか感じられなかったと思います。道を譲ってくれなかった理由がようやく分かりました。文字通り「真っ白な車」になっていたのです。吹雪の中では気づかれなくて当然だったでしょう。

雪国の機関員さんは、なかなか道を譲ってもらえない経験があるでしょうが、もしかしたらその救急車は正面から見ると「真っ白な車」に見えているのかもしれません。


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12.6.10/8:46 PM