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130525モンスター

作)ゆうたん

 モンスターと称される患者さんが増えていると報道されて久しいが、先日そんな傷病者の搬送先選定に苦慮する事案があった。

 既往症をいくつも持っており心疾患や内臓疾患の持病もある、我々が言う常連さんの一人でもある70代の男性で、家族が言うには「頑固で気性が荒い」とのことだが、我々からみるとただの「わがまま」な傷病者である。過去にも搬入時に医師や看護師と口論のようなことになったり、搬送先について無理なお願いをされたりと、要注意な常連さんであった。

 ある日の夕刻、その傷病者が下血をしているという通報があり出動。過去にも同様の症状で搬送していたこともあり、「そのかかりつけに搬送しよう。」と安易な気持ちで現場へ向かった。幸い下血の量も少なくバイタルサインも落ち着いてはいたが、痛みが酷いと訴えており、搬送先選定に着手した。

 「先日搬送した○○病院でいいですか?」と傷病者と家族に伺ったが、何かを我々に言おうとして口ごもった。それに違和感を感じたが異論は出なかったので同意したものと判断し収容依頼の電話をしたが、その返事は「事情があってその傷病者は受け入れることが出来ない」というものだった。

 仕方なく他を当たろうと「この●●病院ではどうですか?」と尋ねると、「その病院は以前トラブルになったことがあるので行けない。」と家族。そこで我々は初めて、この傷病者はあちこちの病院でトラブルを起こし、いくつかの病院を受診するのが難しいということを知りました。

 困ったのは選定病院が無いことです。症状から外科でオペ対応可能な病院は過疎地域なので限られています。しかも近場のそのような医療機関は全て収容依頼を断られたり、家族が望まなかったりと全滅です。

 現場滞在時間が長くなってしまうので、近場の医療機関が全滅状態であったので、三次機関を複数要する街へ向かうこととしました。結局、夕方ということもありオペ対応も可能な三次機関で受け入れてもらうことが出来ましたが、なんとも言えない後味の悪い活動になりました。

 この傷病者がわがままなことは我々も把握はしていましたが、こんなに搬送先に苦慮するほどのトラブルをあちこちで起こしていたとは考えず、収容依頼の電話をする度に嫌な大粒の汗が流れ落ちました。過去に搬送した際等にも、こちらが恐縮するほど家族が私たちに「いつもご迷惑をかけ申し訳ありません。」と深々と頭を下げていた理由が少し分かったような気がしました。

 「もうここの病院ではトラブルを起こさないで欲しいな。ここが最後の砦だね。」そんな話をしながら帰署しました。


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13.5.25/1:15 PM