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130614 不安な動悸

作)みいたん


 心疾患の既往がある80代の独居高齢者がおり、ここ数ヶ月かなりの頻度で救急搬送されるようになってきた。いつも要請は早朝で、深夜の動悸が不安になってのことらしい。

 この女性は一人暮らしの高齢者を見守るシステムに加入しており、急病等の際にはペンダントを押せばシステムを管理しているセンターの人と話をすることができるものだ。また、煙を感知するなど何かの異常があれば自動的にセンターへ通報が届くようになっており、自治体主体の事業ではあるが、高齢者の見守りには非常に役立つシステムである。

 当署では独居老人世帯の毎年査察を実施しており、この女性宅は自分も何度か訪れたことがある。足腰もしっかりしており耳が遠いということもなく、心疾患の既往の他には高血圧症で通院している位で大きな病気もなく、いつも元気な方という印象が強い。子供は遠く離れた都会に住んでいて年に数回程しか帰ってこないそうで、地元には身内と呼べる人は居ないそうだ。ご近所付き合いが活発な人ではないようで、外を出歩いている姿を見かけることが少なく、いつも査察に行くと日頃の寂しさからか長話に付き合わされる。

 センターから救急要請があり傷病者宅へ到着すると、救急車で病院へ向かえるという安心感からなのか、いつも動悸はすでに治まった状態で落ち着いており、バイタルには異常もなく、心電図をモニターしても異常波形は診られない。主訴は動悸とそれによる強い不安感ということで病院へ搬送することとなるのが常である。

 深夜就寝中に突然激しい動悸に襲われ、身近に相談出来る人が居ないとの不安からセンターへ相談するという。相談を受けたセンターでは、動悸が治まらないのであればすぐに救急車を要請しますと救急通報に至るようだ。

 査察時には、「私のような患者を運んでいる間、救急車がなくなるのが申し訳ない。」「私を運んでもらっている間に、重症患者が出たらどうしようと考えてしまう。」等と、救急要請を申し訳なく思っているのか謝られる。たしかに地元の診療所が受入不能な場合は、他市町へ搬送となる為に救急車不在時間が長引いてしまうこともある。「こんな程度で呼んじゃ駄目だと分かってはいるが、不安で呼んでしまってごめんなさい。」と言われ、返答に困ることもある。

 身近に相談出来る人が居ない不安感というのは、まだ自分には想像しかできないが非常に強いものがあるのだと思う。既往を抱え深夜突然動悸に襲われたらなおさらだろう。その不安感が、益々動悸を激しくしているのは容易に想像出来る。

 この女性の家から通報があると、「またか」という思いと共に、我々が到着すると不安だった顔つきが若干安心した様子に変わる姿が思い浮かび、複雑な気持ちで出動する。

 思い起こせば、近所づきあいが少ない高齢者は軽症での要請事案が比較的多い。今後は益々このような出動が増えるのかもしれない。


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13.6.14/6:24 PM