OPSホーム>救急隊員日誌目次>130815残念な社会見学

130815残念な社会見学

作)みいたん




 消防署の見学は、園児や小学生などの子供にとってワクワクする行事の一つだろう。

 小学校も高学年に入ると、社会科の防災の授業の一環として消防署の見学がある。訪れる小学生は皆目を輝かせており、こちらも元気をもらえる気がする。

 当署では、見学に対応するのは係に拘らず、当番員の中から出動態勢に影響の少ない人から任意に抽出し、皆に万弁なく当たるようにしていた。

 ある年は、署内では「固くて真面目」としてちょっと有名なMさんが指名された。

 社会見学では、事前に子供たちからの質問事項を提出してもらい、当日それに回答しながら署内や車両の見学をしてもらったり、実際に防火衣を着せてみたりと、子供たちが喜んで楽しめる授業となるよう工夫している。Mさんは、事前に渡された質問事項を見ながら用紙にぎっちりと回答を書き込んでいた。


 さて、見学当日。

 Mさんは署長に会議室を使って良いか伺っていた。例年の見学では、雨天でない限り署の前や車庫で質疑応答などもする。車両を間近に見ながらの方が子供たちにも良いだろという配慮からである。その時は「おや?」と思う程度であった。

 私たちは、小学生の到着に備えて車両を車庫の前に並べ、防火衣や呼吸器などもいつでも体験させることが出来るよう準備万端で待っていた。小学生が到着すると、皆一様に嬉しそうな声をあげている。普段間近で見る機会が少ない消防車に、興味津津の様子だ。皆これからのことを色々と想像しているのだろう、先生が静止しても収まらないくらい、皆大騒ぎしている。そんな姿を見て、こちらもちょっと嬉しくなる。

 署前に整列した小学生を前に、まずMさんの最初の挨拶が始まった。「今日はしっかりと消防や防災について勉強して下さい。」そう締めくくると、小学生を連れて会議室へと消えていった。

 「固くて真面目」と言えば聞こえはよいのだが、臨機応変さに欠け冗談も余り通じない。話をするのは好きらしく、普段会議などでも持論を長々と話すのが常で、「つまらない話」に我々が陰口を言うことも多かった。

 会議室へ消えた一行だが、一時間を過ぎても出てこない。社会見学の時間は通常2時間程度なので、すでに半分を過ぎている。心配になって会議室を覗くと、質問事項について授業を教えているかのようなMさんの姿が見える。小学生はと言えば、椅子に座りなんとなくつまらなさそうに見える。

 そして、なんと丸々二時間みっちりと授業形式で見学は終わってしまった。会議室から出てきた子供たちの顔に来た時のような元気が無い。

 せっかくですからと並んだ消防車の前で記念撮影を勧めたが、がっかりした様子の子供も多い。準備万端整えて子供たちを待っていた我々もガッカリである。帰りの小学生たちの背中が可哀相に見えてしまった。

 Mさんは担当を指名された時に言っていた。「授業の一環で来るのだから、しっかり勉強して帰れるようにしないとな。」

 翌年から、見学の依頼書には「消防車両を見学させて頂ければ幸いです。」という一文が加わっていた。


OPSホーム>救急隊員日誌目次>130815残念な社会見学


http://ops.umin.ac.jp/

13.8.15/9:24 AM