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140809クリスマスの思い出

作)ゆうたん

 一年のうち「イベント」と呼ばれる日に勤務だったりすると、何故か少しだけ損したような気分になることもある。そして、そんな日に忘れられないような出動があると、次の年からも「この日はこんなことがあったな」と思い出したりする。

 大都会であれば一日の総出動件数に一年でようやく追いつけるような田舎で、CPA事案もそんなに数は多くは無い。しかし、何故か自分はクリスマスの勤務になるとCPA事案にかなりの確率で遭遇する。しかもかなりのインパクトを残して・・・。

 ある年のクリスマスの午前中、70代独居男性宅からCPAの通報があった。「死んでいる」という近所の人からの通報である。

 現場へ到着して観察したが、硬直がかなり進んでおり搬送不可能な状態で警察を手配することになった。

 男性は台所で倒れており、水道の蛇口は開いたままで水が出ている状態であった。通報した近所の住人によると、最後に目撃したのは前日の夕方で、毎日朝に挨拶を交わしていたそうだが当日は姿を見かけていないとのことで、前日の夜台所で炊事中に倒れたらしかった。

 現場へ臨場した救急隊として、事件性の有無なども判断するために室内も観察する。居間のテーブルの上にはクリスマスプレゼントらしき包箱が置かれており、クリスマスを感じさせるものだった。

 警察官が到着して引継中に、男性の娘と幼稚園に通う孫が駆けつけてきた。

 聞けば前日の夜に、「明日プレゼントを持っていくから楽しみに待っていてね」と孫に電話をしていたという。それから就寝までの僅かな間に、倒れたものと推察された。

 「じじ今日プレゼントくれるって昨日約束したよね」と言った孫の言葉に、男性の娘は泣き崩れ、我々もかける言葉が見つからなかった。

 男性は年金のみの生活で、暮らしぶりは楽ではなかったそうだが、孫の誕生日とクリスマスのプレゼントは何よりも楽しみにしていたと聞いた。前日、孫に電話をして喜ぶ顔を想像しながらクリスマスという今日の日を誰よりも楽しみにしていたであろう。近所の人にも孫の話は自分の子供のことのようによくしていたそうだ。

 まだ「人の死」というものが理解出来る年齢ではないお孫さんに、「きっとこれがプレゼントだと思うよ」と居間のテーブルの上を見せてあげると無邪気に喜んでおり、その姿を見た娘さんは嗚咽が激しくなり、我々も言葉に詰まってしまった。

 「プレゼントを喜んでくれて、きっとおじいちゃんも喜んでくれているよ」

 そうお孫さんに言葉をかけるのが精いっぱいであった。

 この子が大きくなった時に、祖父から貰った最後のクリスマスプレゼントが、哀しい思い出になれなければいいなと感じた。


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14.8.9/4:52 PM