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151109便秘

作)みいたん

 腹痛を訴える傷病者を搬送し、結果として便秘であったという経験は、誰しも少なからず経験していると思う。

 そのような傷病者は圧倒的に女性が多く、また高齢でもあるのだが、恥ずかしさもあるのか便通について正確に答えてもらえないと、その可能性について医師に申し送ることも出来ず、腹痛を主訴とする場合緊急度の判断に苦慮することも多いと思う。

 ある日の交代直後、60代の女性から便秘で苦しいとの通報があった。

 極度の便秘から腹痛を発症したという通報はあるが、便秘を主訴とする通報は稀である。しかも、どう考えても緊急性は無い。しかし、要請された以上出動しないわけにもいかない。

 釈然としない気持ちのまま現場へ到着。家に入りトイレの前に座り込んでいた傷病者に接触した。

 顔面は蒼白で冷や汗をかいており、見た目はショック状態である。主訴は腹痛ではなく、腹部の苦しさを激しく訴えている。お腹が苦しいなんて、食べ過ぎくらいしか考えることが出来ない。バイタルを測定したが異常は無い。見た目からイレウスの可能性も排除できないと腹部を聴診したが異音も無い。並行して発症の経緯を聴取したが、最後の便通は一昨日ということで、便秘が原因とは考えられなかった。

 触診をした時である。触れるか触れないか程度で、異常に苦しさを訴えた。痛みを強く訴えるわけでもなく、苦しいから触らないで欲しいとまで訴える。どうも胆石や尿道結石でもないようだ。しかし、便通が無いのはわずか2日程である。

 この苦しさの訴えは何だろう?もしかしたら、とてつもない疾患の可能性があるのだろうか?隊員の間にも不安の色が浮かんだ。

 その時、傍らに転がっていた市販の浣腸薬の箱が目に留まった。

 聴取すると、昨日便通が無く、今朝も便意はあるものの便通が無かった為に市販の浣腸薬を使ったと言う。その浣腸薬の箱を手に取ると空であった。普段から便秘がちなので常備してあったとのことだ。

 驚いたのは、今朝ひと箱全部使ったと聞いたことである。浣腸薬一つがどれほどのものなのかは分からないが、10個入りを全部使えば、どう考えても使い過ぎであろう。腹部が痛いというより苦しいのも当然と隊員一同呆れてしまった。

 病院へ行きましょうかと傷病者に尋ねた時である。

 「貴方たちが今便を出してくれれば、病院へは行かなくてもいい。」と言う。

 冗談ではない!そんな趣味も無い!

 慌てて病院へ事情を詳しく話して収容依頼。電話の向こうでは看護師も苦笑いしているのが伝わってきた。

 傷病者も搬送に同意してくれ、無事病院へ収容することとなったが、危うく傷病者宅で大便まみれになる活動であったかと思い返すと、傷病者以上に冷や汗が流れ出た。


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15.11.9/11:45 AM