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151109町内会長さん

作)みいたん

 高齢の70代夫婦、所謂ブラックと呼ばれる家庭で、夫婦かわるがわる毎月必ずといって良い程頻繁に救急要請があった。頭が痛いので検査が出来る病院へ連れていって欲しい、旦那が風邪をひいたので病院へ連れて行って欲しい等と、利用方法も悪質と呼べる分類に入るものであった。どんなに悪質な頻回利用者であっても、通報があれば出動しないわけにはいかない。子供がいるはずだが、全く付き合いが無く疎遠らしく、病院選定に苦慮することもしばしばであった。

 そのため、当人たちを交え役場の担当部局と協議を重ね、今後は意識が無い等の緊急を要する場合以外は、まず役場の担当者に連絡を取り、担当者が自宅を訪問し必要があると認められた場合のみ救急車を出動させるという了解を得ることが出来た。

 どうなることかと思っていたが、その後は一切救急要請が直接来ることは無くなった。夫婦のうち旦那さんは介護認定を受け、介護サービスを利用して通院しているという情報も得、もう以前のように頻繁に要請は来ないであろうと、我々一同胸をなで下ろしていた。

 何か月経過しただろうか、ある日その夫婦の住む町内の町内会長さんから、その家の旦那が具合悪いようだと救急要請があった。通報では妻から救急車を呼びたいのだがどうしたらいいだろうかと電話で相談を受け、自分は家に行って様子を確認していないのだが、具合悪いことは事実らしいので救急車を出動させて欲しいとのことだ。

 案の定傷病者宅へ行くと、以前の悪質頻回利用時と変わらぬ状態である。現場活動中、町内会長さんが息を切らして駆けつけてきた。まずはたいしたことが無くて一安心と妻に話しかけていたが、私達の脳裏を不安なものがよぎった。

 その不安は見事に的中する。役場に電話しても救急車で病院へ連れて行ってもらえないからであろう。今度はその町内会長さんを通じて、通報が頻繁に来るようになったのである。

 その頻度はいつの間にか以前と変わらない程になった。

 町内会長さんも回数を重ねるたびに申し訳なさそうに通報をしてくるが、救急車を呼んでほしいとの頼みを断って、もし何かあっても困るのでどうしようもないと苦慮しているようである。再度、当人たちと役場の担当者と協議したが、自分達の思う通り救急車が来るからであろう、町内会長さんへの相談電話は無くならないようであった。

 当初は町内会長さんに気を使っていたのか、日中だけの要請であったが、回を重ねるごとに以前と変わらず深夜早朝を問わないようになってきた。初めの頃は心配そうに傷病者宅を訪れてきた町内会長さんも、現場出発するまで傷病者宅を訪れることが無くなってきた。

 町内会長さんも頼まれると断れない、私達も要請があれば出動せざるを得ない。

 しまいには夫婦の通院や入院にも振り回されていると伝え聞き、何とも言えない気持ちになった。


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15.11.9/11:51 AM