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151109搬送先で受診拒否?

作)みいたん

 搬送先についてわがままな希望を強く訴える傷病者は数多く目にするが、先日ついにまさかの受診拒否を目の当たりにした。

 頻回利用者で、元々搬送先は「あそこがいい」や「あそこは嫌だ」とわがままが多かった70代の女性。ある日の夜、膝が痛くて動けないという本人通報での出動であった。

 傷病者宅へ到着すると、両膝の強い痛みを激しく訴えておりまともに会話が成立しない程であり、我々の問いかけにはほとんど応じてもらえなかった。バイタルサインに顕著な異常はなく、膝にも外傷などは認めらない。「またいつもの病院に行きたい病気かな」等と考えていた。

 膝に痛みがあるということで、整形対応な病院を探すことにした。病院を探し始めると先程まで全く私たちの問いかけに答えようとしなかった傷病者は、「○○病院がいい」等と言い始めた。いつも搬送先の選定には頭を悩ませてしまうので、まずは希望通りにとその病院から選定することとしたが、他患者対応中であり受入出来ないという。そのことを丁寧に傷病者に伝えるが、「いつも○○先生に診てもらっている。」となかなか納得してもらえない。

 それでもなんとか納得してもらった後、いくつかの病院に照会をして整形対応可能と近隣の二次機関がみつかった。そのことを傷病者に伝えたが、その病院では嫌だと言う。観察した結果と近隣の医療機関の受入状況を伝え、しぶしぶ納得して頂いた後に現場出発となった。

 搬送中は特に痛みなどは訴えず、「何故○○病院は受入れてくれないのだ。」等と不満をぶつけられた。

 病院へ到着、処置室に入って医師に引継を行い、小声でわがままな頻回利用者であり、今回も病院選定に苦慮したことを申し添えた。引継もそろそろ終了とホッとしたのも束の間、なんと傷病者が、「やっぱりここの病院は嫌だ。」と大声で騒ぎ始めたのだ。処置室の一同は皆驚きである。バイタルを測定していた看護師もオロオロしている。

 幸い救急隊に理解のある医師であったため、整形外科病院の受入状況や、救急隊が病院選定に苦慮することを丁寧に傷病者に説明してくれた。看護師も私たちが丁寧に診ますからと説得してくれた。もちろん我々も病院に迷惑をかけることが出来ないので、冷や汗をかきながら傷病者の説得にあたった。しかし「嫌だ」の一点張りである。

 驚いたことに、膝が痛くて動けないはずの傷病者が、自分で診察台から起き上がり歩いて処置室を出て行ってしまった。これには一同絶句して唖然としてしまったが、後を追いかけると外来待合室の長椅子に腰を掛け、今度はそこから動こうとしない。そこで診察をしますと言っても拒否する始末である。

 30分以上説得を続けていたが埒が明かない。

 医師は「これ以上救急隊の方がいても仕方ないと思いますので、あとは我々が説得しますので帰ってもいいですよ。」と声を掛けてくれた。

 病院滞在が長引くことに苦慮していた私たちは、医師に深々と頭を下げ、看護師に再度宜しくお願いしますと声を掛け引き揚げることにした。

 どうしても気になり、翌朝一番で病院に電話し、その後の顛末を聞くことにした。

 その傷病者はその後一時間近くの説得にも応じず、タクシーを呼んで帰宅したという。

 電話の向こうでは看護師が「帰宅してから再度要請はありませんでしたか?結局病院では何も診ていないし処置もしていないので、気になっていたのです。」と言うが、要請は無かった。そのことを伝えると、看護師も失笑しているのが分かった。

 一体何だったのか、狐につままれたような気分となった。


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15.11.9/11:41 AM