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160306意識レベル

作)みいたん

意識レベルがJCSで三桁となると、現場に緊張感が走る。傷病者の情報が少ない状況下では、緊急度の判断は意識レベルに頼るところも大きい。

 ある夜、イベント会場にて60代男性が卒倒し意識が無いという通報があった。

 現場へ到着すると、傷病者の周りは黒山の人だかりである。傷病者の元へ駆け寄ると、横には妻らしき人が傷病者の手を握り今にも泣きそうな顔つきでいた。たまたま看護師と名乗る人が居合わせており、倒れた直後の情報を聴取。卒倒時から意識が無く、ショック体位をとらせていたらしい。

 現場はイベントの騒音もあり騒然とした感じで、接触し大きな声で傷病者を呼びかけるが反応は無い。意識レベルはJCSで三桁である。痛み刺激を加えると顔をしかめる。JCSは200である。

 しかし、顔のしかめ方に若干違和感がある。もう一度大きな声で呼びかけるがやはり反応は無い。痛み刺激を加えると、顔をしかめるのに変わりも無い。

 現場が騒然としていることもあり、そのまますぐに車内に収容することとした。

 車内に収容し、改めて傷病者に呼びかけをすると、うっすらと目を開けた。「○○さん、分かりますか?」と問うと、小さく頷くのが分かった。「傷病者意識有り!落ち着いて観察して!」と隊員に周知。奥さんも一安心したようである。

 傷病者の観察をしつつ尋ねると、意識を失って倒れたのは事実らしい。すぐに気が付いたものの、周りの人の多さと騒ぎ具合に驚いて目を開けることが出来なくなったそうだ。さらに看護師と名乗る人物が現れ、あれこれとやってくれていたので、何も言い出せず意識が無い振りをするのが精いっぱいだったようだ。

 幸い異常所見も無く、一時的な脳虚血によるものと推察され、痛み刺激を加えたことを謝りつつ近医に搬送となった。

 このような「意識の無い振り」をする症例には、たまに遭遇するのではないだろうか。

 多くの場合、すぐに正気に戻ったものの、先の傷病者のように周りが騒いでいて言うに言い出せなかったということがほとんどである。無理に痛み刺激を我慢しようとすると表情に思わず出るしかめ方は、本当に意識が無い場合とは異なり判別は割と容易であったりする。大抵の場合、車内に収容したりその場から隔離すると、目を開けたりするのでこちら側も緊張から解放され安心出来る。

 先日、車内でも「意識が戻らず意識状態が悪いまま」の傷病者を家族同伴の下に搬送することになったが、どうも表情に違和感がある。病院側に意識状態を伝えるが、「演技していると思われる」なんて傷病者や家族の前で言えるわけもなく、そのまま搬送することになったが、当然病院側も意識状態の悪い患者を受け入れる体制を整えていて緊張が走っている。

 処置室に入り家族と離れた途端、「実は・・・」となって面食らったことがあった。

 医師も呆れ顔であったが、救急隊としては正確に情報を伝えることが出来なかったので冷や汗ものである。「これは仕方ないよ」と慰められたが、処置室のスタッフに平謝りであった。


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16.3.6/1:38 PM