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170821市民の期待はどこにある?

作)ウルトラマン

問1、「市民が消防に期待していることは何ですか?」法律の講習会に来ている私は、問題とにらめっこしている。「市民が期待していることか・・・。」消防法の第一条は、先輩からうんざりするほど聞かされてきたぞ。そう、国民の身体を守る。生命を守る、そして財産を守る。だからつまり、この問題のベストアンサーとしては、「事故とか起こったらちゃんと私達を守ってよね。」となるでしょ・・・。私は何の迷いもなく、問1に対してこのように書いた。読者諸兄はどのような解答を書くだろうか。

 ある日後輩が私にぼやいた。「救急指令、鳴らないっすね。」「そうだね。しばらく聞いてないね。」私の勤める消防署はあまり指令音が鳴らない。ざっくり言えば暇だ。この原稿を書いている私はもちろん消防職員で、救急救命士で、救急隊長。ちなみに先週は1回も救急出動していない。職場で一番ストレスになることは何か調べた研究者がいるが、それは「自分の仕事が与えられないこと。」だそうだ。人間関係とかじゃないのか・・・。救急救命士は、診療の補助として救急救命処置を業とするものを言うのだが、その業がないのではストレスが溜まるのも納得だ。そういえばこの後輩は、ちょっと勤務態度が悪いと上司から指摘を受けている。なんとかこいつのやる気を出させないと。

「救命出来たらどんな気持ちになるんですかね。」後輩は言う。「傷病者からはもちろん家族からも感謝されますよね。手紙なんてもらったら宝物ですよ絶対。でもその症例がないんですからねー。」まずい。このままでは確実に腐った隊員になってしまう。私は彼に宿題を与えることにした。

「じゃあ宿題をだそう。テーマは、“この地域はなぜ救急出動が少ないか。"心肺停止症例なんて特に少ないね。」後輩は答える。「高齢者世帯が多いから、みんな外に出歩かないからじゃないでしょうか。」
「その答えなら心肺停止症例が少ない理由にはならないね。理由を調べてみなよ。」

 後輩は、報告書データベースや過去の消防統計を調べだした。要は、地域医療提供体制が強化され24時間いつでも往診に対応するようになったために、救急車を呼ぶ事態が減少したためなのだが、救急出動のデータベースを見てもその答えは載っていない。答えが分かるのは果たしていつになるのだろう。

法律の講師は言う。市民の視点から消防を見ると、「有事の際に助けて」は当たり前だけど、本当に臨むのは「救急車を呼ぶ事態にならないこと」なんだと。  

彼は今も苦戦して調べ続けているが、すごく楽しそうだ。もしかして研究者向きなのかな?市民の目線で見るとこの地域が日本の最先端を走っていることを知ったら、彼はどんな顔をするだろう。どうやら彼のやる気スイッチを上手に押すことが出来たみたいだ。


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17.8.21/7:49 AM